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令和4年第3回定例会

1.SDGs未来都市ちよだを目指して
2.新たな教育ビジョンについて

本会議質問3.jpg

「就学前プログラム」を提示して

〈質問通告〉

1. SDGs未来都市ちよだを目指して!
・世界は地球の限界を意識し、その危機を乗越えるべく「持続可能な開発目標」SDGsを掲げ取り組んでいる。もはや一国だけで解決できず世界各国の連帯が必要であり、また自治体や企業、そして市民社会をあげての取り組みが求められている。SDGsはそのための指針であり目標である。そこで、SDGsについての基本的な考え方を問う。また、区の政策全般にSDGsを反映することを提案する。所見は。
・SDGsを区の政策に生かすための具体策について 国が推進している「SDGs未来都市」選定に向けて、「SDGs未来都市計画」また「自治体SDGsモデル事業」の策定そしてSDGs推進へ庁内体制を整備するなどし、区として手を挙げることを提案する。所見は。

2. 新たな教育ビジョンについて
・現「共育ビジョン」の果たしてきた成果についての評価は。また、課題として残されたものは何か。
・新たな教育大綱についてその位置づけと内容の特徴は。
・新たな教育ビジョンについて、「共育」の理念は引き継がれるのか。また、目標とした「子どもの健やかに育つ権利の実現」は引き継がれるのか。そして新たな教育ビジョンの特徴とは何か。
・保育・教育の質についての考え方は。また、その質の向上への取り組みを問う。
・障がいのある子どもに対する適切な教育支援について

〈質問と答弁の全文〉

 令和4年第4回定例会にあたり、公明党議員団を代表して質問を行います。
 質問は大きくは2点です。一点は「SDGs未来都市ちよだ」を目指して、SDGsの重要性を確認し、SDGsを区の政策全般に反映していくことを提案します。二点目は、現在策定中の教育大綱また教育ビジョンについてその理念と目標を問い、子ども施策及び教育の更なる充実につなげていくことにあります。
 最初は「SDGs未来都市ちよだ」を目指しての質問です。
 まず、SDGsの意義について確認しておきたいと思います。

SDGs.png

(1SDGsロゴを表示)皆さんもご存知の通りSDGs、SUSTAINBLE DEVELOPMENT GOLS は「持続可能な開発目標」と訳され、誰一人取り残さない持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目指すものです。特に、持続可能すなわち「地球の限界を超えない範囲で」ということが重要となっています。そしてそのことを実現するために2030年を目標年として17の目標と169のターゲットを定めたものです。(スクリーン1を閉じて2を表示)

エコロジカルフットプリント.png

 これはエコロジカルフットプリントと言われ、人間の活動が地球環境にかけている負荷の大きさを表すものです。単位は「地球を何個分消費している」と表現されます。例えば、人類が使った資源を再生産し、また廃棄物を浄化するなどするための総量を面積に換算したもとなります。つまり、地球環境にかけた負荷を元に戻すのに必要な総量を地球の面積にして表したものということになるでしょう。負荷をかける要因としてはCO2を始めとする温室効果ガスの排出や、森林の伐採などによる資源の利用、魚を過剰に捕獲するなどであるとしています。このエコロジカルフットプリントと対極の概念にバイオキャパシティーがあります。バイオキャパシティーとは図でいうと真ん中の赤い線ですが生物生産力とも呼ばれており自然が光合成によって提供してくれる生態系サービスとされます。つまり、地球自らの環境再生力と言ってもいいものです。
 図からもわかる通り、「人間の社会・経済活動による消費や環境負荷が地球一個分を超えたのは1970年であり、この50年間におけるバイオキャパシティーは27%増加したけれども、エコロジカルフットプリントは50年間で190%増加しており(差し引き)「地球1.69個分」の持続不(可)能な人類社会」(「SDGs 危機の時代の羅針盤」P.109より)となっています。(2を閉じる)すでに地球の限界を超えている状態が50年以上も続いているということになります。ちなみに国別のエコロジカルフットプリントも公表されており日本は地球2.9個分消費しているとされ、世界で5番目に多く地球に負荷をかけているとされています。
 私たち人類は地球1.69個分もの大量の資源を消費しながらいったい何を得たのでしょうか。逆に、環境、経済、社会に危機的状況を自ら作り出してしまったのではないでしょうか。例えば、環境面からは地球の温暖化しかり、生物多様性の喪失しかり、新たな感染症の発生もそうでしょう。社会・経済面からは貧困や格差の拡大、飢餓の拡大もそうでしょう。飢餓によって世界では2018年現在ですが年間1500万人以上が亡くなっており、その内の70%が子どもたちであると言われています。環境面、経済面、社会面の各事象が相互に影響し合い複合的な危機を招いているともいえます。
 このような現状に対して2015年、国連において150か国以上の加盟国首脳が参加して全会一致にてSDGs持続可能な開発目標を採択しました。この採択にいたる淵源はあの1992年のリオサミットにおいて、当時12歳でしたが日系4世のカナダ人、セヴァン・スズキさんの意見発表にあります。集まった世界の指導者を前に「どうやって直すかわからないものを、壊し続けるのはもうやめてください」と、地球環境の保全を訴えたのです。SDGsはいわば世界が全会一致をもって彼女の訴えを守ることを約束した証と言えるのではないでしょうか。
 日本は採択された2015年以降、国として積極的にSDGs実現のために取り組んできました。SDGs推進本部の設置、SDGs実施指針の策定、ジャパンSDGsアワードの創設、自治体にその取組を促す「SDGs未来都市の選定」などであります。
 企業も同様であります。「SDGs Compass」という行動指針を定め、「地球一個分の経済・社会」の実現へ企業の変革を目指しています。今までの「ものやサービスが売れれば良い」という利益に特化した考え方だけではなく、原料の調達から生産、流通、消費、廃棄にいたるまでSDGsの観点を導入しようとするものです。いわば、企業経営のあり方そのものを変革しようとするものです。先日、「地球のサスティナブル」をテーマとした朝日教育会議の内容が新聞に掲載されていましたが、パネラーとして参加された花王の澤田会長の言葉が印象的でした。「企業価値はこれまでは売上利益などの財務がメインでしたがこれからは違う。環境とか社会とか、私は『未来の財務』と呼びますがそれを合わせて企業価値と捉えるべきでしょう」と。
 国のSDGs推進円卓会議メンバーの稲葉雅紀(いなばまさき)氏また広報外交担当日本政府代表の南 博(みなみひろし)氏は書籍「SDGs危機の時代の羅針盤」の中で、こう述べています。「もはや他の選択肢はない。やめることも、後戻りすることもできない。SDGsという羅針盤を手に、地球一個分の人類社会の実現、将来世代の可能性を摘まない社会、経済、環境の実現を目指して足取りを加速化させていくより他には将来世代はおろか、数年後を生きる現役世代の未来もおぼつかないのである」(「SDGs 危機の時代の羅針盤」P.31より)と。その通りであります。自治体も例外ではありません。危機の時代の羅針盤ともいえるSDGsを是非とも区政全般に反映すべきであります。
 少し長くなりましたが大事なことでありますのでSDGsの意義について述べさせていただきました。
 そこで、区としてSDGsの意義についてどう認識されているのかお伺いいたします。また区の政策全般にSDGsを反映することを提案いたします。ご所見をお伺いいたします。
 次に、SDGsを区政に反映するための具体策についてであります。
 国は自治体にSDGsの取組みを促す「SDGs未来都市」及び「自治体SDGsモデル事業」の選定を行っています。2018年度からスタートし2024年度までに「SDGs未来都市」として210都市の選定を目指すとされています。今年度新たに30都市が選定され累計154都市となりました。23区では、これまで豊島区、墨田区、江戸川区が選定されており、今年は板橋区、足立区が選定されました。いずれも持続可能なまちづくりとして地域の特性を活かした提案しています。例えば、豊島区では「消滅可能都市からの脱却~持続して発展できる「国際アートカルチャー都市」への挑戦~」をテーマとしました。板橋区では「絵本がつなぐ『モノづくり』と『文化』のまちの実現~子育てのしやすさが定住を生む教育環境都市~」、江戸川区は「海抜ゼロメートルのまち江戸川区が目指す『SDGs=共生社会』先進都市~」などであります。
 今年度選定の総評では、「SDGsの理念を踏まえ持続可能なまちづくりを行っているか否か、地域の実力が改めて問われる時代を迎えている。『SDGs未来都市』の先進的な取組みの波及が日本全国の地方創生の実現に寄与していくことを期待している」と、述べています。
 千代田区としてもこのことに手を挙げることの意義は大きいものがあると思います。これまで経済成長を優先するあまり都市への過度の集中がありその影響を最も受けた象徴が千代田区といってもいいでしょう。であるがこそ、今度は、千代田区からSDGsの目指す持続可能な地球一個分の経済・社会実現へ積極的に挑戦し、全国にその取組を発信すべきではないでしょうか。その手段、方法が未来都市の選定であります。全国に大いにインパクトを与えることは間違いありません。勿論、選定されることだけが目的ではありません。挑戦し取り組むことが大事であります。例として申し上げましたように持続可能なまちづくりへの取組が区民の暮らし向上へ確実につながるからであります。
 千代田区には他の自治体がうらやむほどの歴史と文化があります。本の街神保町もあります。皇居を中心とする水と緑の環境もあります。そしてこれまで築いてきた子育てしやすいまちでもあります。他にもあるでしょう。千代田区らしい提案は十分可能であります。
 そこで、「SDGs未来都市」選定に向けて、2030年を目指しての「SDGs未来都市計画」また「自治体SDGsモデル事業」を策定すること、そして庁内推進体制を整備し手をあげることを提案したします。ご所見をお伺いいたします。
 次に、教育ビジョンの策定についてであります。
 平成22年に千代田区共育マスタープランを策定し、子育てと教育についての理念と目標を定めました。そのことは平成28年策定の現共育ビジョンにも引き継がれました。
 まず理念ですが、共に育つ共育を掲げました。「共育とはすべての者が様々な違いや垣根を乗り越えて、お互いを理解し、認め合い、そして尊重し合う『共育』の理念のもと、家庭・学校・園・地域等がともに一体となって子どもを育て、また、自らも育っていくこと」と定義し、さらにビジョンでは「こうした共育の理念に基づく関係」の大切さについても述べます。「保護者と子どもが深い信頼で結ばれていることが不可欠です。そのためには(中略)子どもに自分の考えを押し付けるのではなく、子どもの声をしっかりと聴き、常に『子どもの最善の利益』を考えながら子どもを育てていかねばならない」と。つまり共育には子どもとの関係性が大事であり、それは子どもからの声、サインを大人はしっかりと受け止め応えてあげるという受容的で応答的な関係であり、その関係性の中で子どもは育つとしたのです。この「共育に基づく大人と子どもとの関係性」を明確に示したことは現ビジョンの大きな特徴でもあります。
 今でこそ共育は当たり前となりましたが平成22年当時、「教育とは共に育つ共育である」としたことは画期的でした。子どもと大人がある意味対等な立場に立ち、お互いの人格を尊重し合い認め合うという関係は子どもを主体とする新たな子ども観でもあったからです。
 次に目標ですが、マスタープランでは子どもには「人間としての尊厳」と「健やかに育つ権利」があることを宣言しその権利の実現を目指すとしました。この目標についても共育ビジョンにそのまま引き継がれました。
 ちなみに国の方はどうかといいますと、ようやくではありますが平成28年の児童福祉法を改正し、第一条の理念のところに「すべての児童は児童の権利に関する条約の精神にのっとり(中略)その心身の健やかな成長及び発達を等しく保障される権利を有する」と明確にしました。理念の部分を改正したということは、子どもの幸せのため大人社会のあり方をも見直し、国をあげて子ども中心の社会を築く決意の表れであったのではないでしょうか。歴史的な大改正となりました。
 現「共育ビジョン」の理念と目標について確認させていただきました。
 このことを踏まえて、現在策定中の新たな教育ビジョンについて5点質問します。
 一点目は、共育マスタープランまた現共育ビジョンに基づく子育て・教育行政は12年以上になるわけですが、示されました理念と目標が今日まで果たしてきた成果についてどう評価されているのか、また残された課題とは何かお伺いします。
 二点目は、区長が入る総合教育会議にて策定中の教育大綱についてです。
 区長は選挙公約の一つに「子育てしやすさ日本一に」を掲げられ見事当選されました。子育てしやすさ日本一、私も大賛成であります。大いにそのための道筋を大綱として示してもらいたいと思います。そこで、新たな教育大綱の位置づけと内容の特徴について区長にお伺いいたします。
 三点目は、新たな教育ビジョンにおいて、(ともいくの)共育の理念は引き継がれるのか、また目標とした「子どもの尊厳」また「子どもの健やかに育つ権利」の実現は引き継がれるのか、そして新たな教育ビジョンの特徴とは何か、こちらは教育長にお伺いしたいと思います。
 四点目は、保育・教育の質についてであります。
 保育・教育の質については大人と子どもとの関係性であり、このことは共育ビジョンにも書かれたことは述べました。若干重なりますがもう少し述べますと、保育・教育の質という時、規制と周囲との関わりの2種類があります。施設の広さや職員の配置基準などが規制の質にあたります。子どもと周りの職員や保護者とのかかわり、関係性がもう一つの質であります。どうかかわるのか、また関係性とはどういうことかですが、新潟大学准教授の世取山洋介氏が述べていますが「①子どもの主体性を尊重し、②子どもがその欲求を満たしもらえる大人との受容的で応答的な人間関係を保障し、③そのような関係を通して成長発達できること」であります。
 そこで、新たな教育ビジョンにおいてこの保育・教育の質についてはどのように記述されるのか。また、ビジョンの内容ではありませんが(現物を提示)この子どもとのかかわり方を育ちの年齢の四半期ごと詳しく説明し、活動例も示したものに就学前プログラムがあります。大変良くできています。ただ保育士や幼稚園教諭向けに書かれており保護者や一般の人が読むにはやや専門的であります。現在この就学前プログラムは改訂作業中であるとのことです。是非、その際、合わせて保護者や子どもとかかわるすべての人向けにわかりやすい冊子も作成してはどうでしょうか。子どもにとって必要なかかわり方があっても知らなくてはかかわることはできません。名称も例えば「なるほどちよだのほいく・きょういく」など工夫して作成することを提案します。合わせてご答弁ください。
 五点目に、障害のある子どもに対する教育支援についてです。(スクリーン3通級指導人数を表示)

通級指導.png

 この7月に文科省は通常学級に在籍しながら一部の授業を別室で学ぶ「通級指導」の調査結果を発表しました。令和2年における全国の小中高生のうち、通級指導を受けている児童・生徒は過去最高の164,693人になったとのことでした。文科省は「発達障害と診断される子どもが増えていることや、通級指導の存在が知られるようになったことが背景にある」としていました。(3を閉じる)
 発達障害の子どもが増えていることは千代田区でも同様であります。今年度、通級による指導、いわゆる特別支援教室ですが小学生で179人、中学生、中等教育学校生は42人で合わせて221人と過去最高となっています。また通級指導学級は19人であります。さくらキッズの登録者数が令和3年度で426人であることからすると発達障害のある(小中学校性の)児童・生徒数はもっと多いと思います。
 通級による指導とは大きくは二つあり、一つは「知的発達に遅れがなく発達障害等の障害がある児童・生徒のうち、通常の学級におおいて概ね学習することができ、一部障害に応じた特別な指導を(別室にて)行う」(事務事業概要p.325)特別支援教室があります。情緒障害、自閉症、学習障害(LD)、注意欠陥多動性障害(ADHD)などの障害を持つ児童・生徒を対象としすべての小学校・中学・中等教育学校にあり、担当の教員が巡回して指導を行うものです。もう一つは言語障害の児童を対象とした通級指導学級が千代田小学校にあります。
 そしてこれら通級による指導を補完すべく障害のある子どもへ適切な支援ができるよう心理学・医学等の専門家による巡回アドバイザーの派遣。また、通級による指導や在籍学級における指導・支援するための講師や特別支援教育専門員などの配置などを行っています。そして、一人ひとりの障害の状況に応じたケアプランの作成、通称「はばたきプラン」の作成があります。ちなみにこの「はばたきプラン」は区独自の事業であり、令和元年度から開始され利用申請者数は令和3年度で127名、利用述べ人数は584人となっています。大事な事業であります。
 そこで、障害のある児童・生徒へのこれらの事業を評価した上で、今日の発達障害の児童・生徒数の増加と一人ひとりの障害の状況が異なるゆえの難しさもある中、今後、どのようにして適切な教育支援につなげていくのかお伺いいたします。
 乳幼児期の療育については平成29年第4回定例会にて取り上げさせていただきました。昭和女子大学教授の石井正子氏の述べる「(障害のある子どもはその)障害を補おうとする能力の発達が著しいということです。だから障害があっても幸せに生きていけるということです。またそのことを多くの方に知ってもらいたい」との言葉を引用して乳幼児期の療育の大切さとかかわり方の大切さについて述べさせていただきました。このかかわり方(の大切さ)は乳幼児期に限らず小学生になってもまた中学生になってもさらに18歳までも変わらないものと考えます。石井氏の述べるような障害があっても幸せに生きていけるような(「可塑性に富み、障害を保障」する)支援とかかわり方が必要であります。合わせてご所見をお伺いいたします。
 以上、SDGs未来都市ちよだを目指して!また新たな教育ビジョンについて質問させていただきました。区長、教育長、関係理事者の前向きな答弁を期待して公明党議員団の代表質問を終わります。
 ありがとうございました。

〈区長答弁〉

 大串議員のSDGsに関する御質問にお答えいたします。
 SDGsは、議員御案内のとおり、持続可能で多様性と包摂性のある社会をつくることを目指した国際的な目標であり、人の営みが地球の持続可能性を超えない、そうした社会への転換を促すものであると認識しております。
 今日の地球には様々な問題が山積みとなっており、しかも複雑に絡み合っています。SDGsは複数の問題に関連する目標を示しておりますが、住民の福祉の増進を目指す基礎的自治体の行政運営にも、多くの点で共通するものがあると認識しております。例えば、本区が推し進める地球温暖化対策は、地域特性に応じた創意工夫により、温室効果ガスの排出量削減だけではなく、産業振興、防災面の向上、健康増進など、区域の抱える様々な課題の解決に資することが大きく期待できます。
 また、未来の社会を担う世代の教育の充実は、貧困問題、平和の維持、環境改善など、将来のあらゆる分野の問題解決にもつながるものです。自治体の取組の多くはSDGsと同様、複数のゴールを持つものであり、本区の政策全般の目指す方向性についても多くがSDGsと軌を一にしております。したがいまして、各種の政策推進に際しましては、議員御指摘のSDGsの意義も踏まえながら展開してまいります。
 なお、詳細及びその他の事項につきましては、関係理事者から答弁いたします。

〈子ども部長答弁〉

 大串議員の教育ビジョンの策定に関する御質問にお答えいたします。
 まず、現「共育ビジョン」の成果と課題についてでございますが、成果といたしましては、議員御指摘のとおり、共育マスタープラン策定当初は画期的であった「共育」という言葉とその理念が家庭・学校・園・地域等に浸透してきており、当たり前のように意識されるようになりました。また、本区の子育て世帯を含む世帯数は、この10年間で約40%増加しており、これは保護者や教員、地域住民などが連携し、子供が安全に安心して過ごせる地域づくりを進めてきたことなど、共育の理念の下で0歳から18歳までを見通した次世代育成及び教育振興施策を様々に推進してきたことによるものと認識しております。
 残された課題といたしましては、昨今の都市化や核家族化による世帯構造の変化、地縁が希薄になるなどの地域社会の変化に伴い、子育ての不安や悩みの相談相手がいないことや、子供への心理的・身体的虐待、ヤングケアラーなど、子供を取り巻く深刻な状況への対応が挙げられます。そのため、子供の健やかな成長を地域・社会全体でより一層、後押ししていくため、子供の最善の利益を第一に考え、誰一人取り残さず、将来にわたって幸福な生活を送ることができる「子どもの権利」を実現するためのさらなる取組が必要であると考えます。
 次に、新たな教育大綱の位置づけと特徴についてですが、教育大綱とは、教育及び文化の振興に関する総合的な施策について、その目標や施策の根本となる方針を定めるもので、区長が主催する総合教育会議において、教育委員と協議し、区長が策定するものとされています。
 新たな教育大綱の特徴といたしましては、これまで以上に「子どもの権利擁護」に関する区の姿勢を強く示すとともに、共育の理念も継承してまいります。また、子育てに関する多様なニーズへの対応や子供たちのこころのケアなど、子育てや学びのセーフティネットを充実させることで、子育てしやすさ日本一のまちを築くとしています。
 次に、新たな教育ビジョンの特徴と「共育」の理念等の引継ぎについてですが、ビジョンでは、新たな教育大綱に示すものについて、その取組の方向性を示すこととしており、特徴としては、大綱と同様のものとなります。
 新たな教育ビジョンでは、教えを受けて自分自身で心を育てる、言わば本来の「教育」に記載を変更いたしますが、家庭と学校・園、地域が一体となって「子供たちを共に育て、また、自らも育っていく」という考え方はしっかりと継承してまいります。また、「子どもの尊厳や健やかに育つ権利」の実現につきましても継承することとし、児童の権利に関する条約及びこども基本法の精神にのっとり、子供を中心に据えた施策の展開をお示ししてまいります。
 次に、教育ビジョンにおいての保育・教育の質の記述についてですが、議員御指摘の規制の面では、これまで待機児童ゼロを継続するための保育の量の確保に向けた取組から、就学前の保育・教育の向上や発達障害児の特別支援に資する環境づくり等に取り組むことを明記する予定です。また、子供と周りの職員や保護者との関わりの面では、幼児期の保育・教育は主に家庭と園で行われることに鑑み、連続性をもって一人一人の育ちを促していくことを明記していく予定です。
 このことは、現在、改定作業中の就学前プログラムにおいても詳細にお示しする予定であり、保育者や教育者と保護者との情報共有を図る観点から、この名称を工夫するとともに、より分かりやすい内容とイラストなどを多く活用した概要版を作成し、職員のみならず、保護者にも配付する予定でございます。

〈教育担当部長答弁〉

 大串議員の障害のある子供に対する適切な教育支援についての御質問にお答えいたします。
 まず、発達障害の児童・生徒が増える中での今後の充実についてですが、議員御指摘のとおり、区内の学校・園において障害に対する支援を利用している幼児・児童・生徒は増加しており、今後も必要な支援を不足なく受けることができるよう学校・園内の体制を整えていく必要があると認識しております。
 特別支援教室やことばの教室、特別支援学級には、年度当初の対象となる児童・生徒数に応じ、都から正規教員が配置されますが、年度途中に人数増がある場合には、区の判断で独自に講師を各学校に2名から3名程度配置しております。また、通常の学級に在籍する幼児・児童・生徒の中にも支援の必要な子供たちがおり、区独自の講師は、このような子供たちにも対応できる体制を整えています。
 一方、学校・園では特別支援教育に関する委員会等を中心とし、教職員の専門性の向上、指導・支援の充実を図っております。その成果として、通級による指導を終了し、通常の学級における支援のみに移行した子供が令和2年度には17名、令和3年度には31名と増加しており、このことは、通常の学級における支援が充実してきていることと捉えております。今後も教職員の研修の充実はもとより、専門性のある講師、専門員を配置するなど、子供の増加、状態の多様化にも対応できるよう適切に対応してまいります。
 次に、障害があっても幸せに生きていける教育支援についてですが、区では、障害等により支援が必要な子供及び保護者と共に教職員が教育支援シートを作成し、年度ごとに細かな指導・支援を行うことができるよう計画を立てております。教育支援シートを作成するに当たっては、それぞれの子供や保護者の学校生活への期待や成長への願いに基づき、子供の得意なことや頑張っていることなどを共有しております。この教育支援シートを活用することで、子供のよさを生かした支援を継続して行い、学校・家庭での支援が子供のよりよい行動の習慣化につながるよう、教職員向けの説明資料に明記するなどし、周知しているところです。
 今後も、子供たちの多様なニーズに対応し、一人一人の特性、個々のよさを伸ばすため、「個別最適な学び」や「協働的な学び」を実現してまいります。

〈政策経営部長答弁〉

 大串議員のSDGsに関する御質問に、区長答弁を補足してお答えいたします。
 SDGsは、住民の福祉の増進を目指す自治体の行政運営に通じるものであると考えてございます。
 このため、地方創生の手段としてのSDGs未来都市や自治体SDGsモデル事業等の取組にかかわらず、本区の主体的な取組を展開する中で、議員御指摘のSDGsの意義や区政との関連性を意識して積極的な取組を進めてまいりたいと考えてございます。なお、区民の暮らしの向上につなげるために、SDGsの目指す変革を千代田区から全国へ発することの意義やその波及効果に関する議員の御指摘につきましては、区としても共感するところでございますので、頂戴した御提案の趣旨も踏まえまして、今後の取組を進めてまいります。


 

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