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平成13年第3回定例会

​1.財政白書について 2.予算編成方針について

〈質問通告〉

財政白書について

  • 何のための「行政経営」か

  • 行政経営を行うためには何が必要か。また、その導入、策定のスケジュールを区民に示すべき

  • アニュアルレポート作成の提案

  • B/S作成は東京都方式にしては

予算編成方針について

  • 予算編成方針の特徴は何か

  • 区民にわかりやすい予算説明書の作成せよ

〈質問と答弁の全文〉

 平成13年第3回定例会に当たり公明党議員団の一員として一般質問させていただきます。

 最初に、二つの代表的な改革の事例を紹介させていただきます。
 一つは、日産自動車社長のカルロス・ゴーン氏のとられた経営です。先日のあるテレビで、ゴーン氏紹介の番組がありました。その中で「君は知っているか。お客様が何を求めているのかを」とのゴーン氏の言葉が私は強く印象に残りました。また、顧客の要望にどれだけ応えられたかという共通の目標を社員との間で持つことをまず行ったそうです。さらに彼は「来年黒字にならなければ、自分も含めて経営陣は辞任する」と言って責任を明確にいたしました。その結果はもう皆様ご存じのとおり、就任した期は経常ベースで16億円の赤字でしたが、翌期2001年3月は何と2,823億円の黒字となったのです。

 もう一つの例は、アメリカ・ニューヨーク市の地下鉄の例です。管轄は州の交通局だそうですが、ニューヨークの地下鉄は危ない、汚い、怖いという80年代を経て、ほとんどお客様が乗らない状態になって廃止という議論すら出るところまでいったそうです。そこから90年代に入り、新しい長官が来てサービス改善運動を始めました。まず実施したことは、現在一体どういう状態なのかということを数字で把握することでした。例えば、旅行に要する時間。それから危険だと思うかどうか。これは犯罪のリスクがあるかないか。今回の白書の中にも出てきますが、バリュー・フォー・ザ・マネーという手法を用いて、運賃とサービスが見合っているかどうか。このほか多くありますが、このような項目を3カ月に1回ずつ調査しました。その結果を一般にも公開し、現場にもフィードバックし、対策や施策に生かしていく。3カ月というのはちょっと忙しいですが、これはニューヨーク市の計画が3カ月ごとになっているためです。もちろん財政状態も3カ月ごとに発表されます。とにかく早い。日本の自治体の場合はそれが普通2年と言われます。今年やっと11年3月期のバランスシートが公表されるといったぐあいです。これはまあ普通一般のですね。それでも発表されるところはまだいい方です。公表についてはこれくらい差があるのも事実です。それはともかく、地下鉄はそういう積み重ねをして着実にお客様の満足度が上がっていったということです。最近では自動車をも追い抜いたそうです。

 二つとも成功した例として有名な例ですが、共通しているのは、徹底して顧客が何を求めているのかをつかみ、評価を行い、それを次の計画に取り入れているということです。

 さて、このたびの財政白書では、ただバランスシート、コスト計算書を発表し、現状の説明に終わるのではなく、これからの財政運営として今挙げた二つの例のようにPDCAサイクルの仕組みをつくるんだと宣言し、そのために必要なものは何かという形で全体が構成され、それらすべてを含めて財政運営の方向性として区民の皆さんに提案するという形になっています。この内容は他の自治体でもこれほど具体的にすべての手法を紹介、提案されているものはないのではないでしょうか。その意味で、私は今回の財政白書を大変評価するものであります。

 区長は第1回定例会招集あいさつで、区政運営の基本方針として5点示されました。この基本方針は企業でいう経営ビジョンに当たるのでしょう。その中で「経営感覚あふれた区政」を挙げ、最小の経費で最大の効果を目指し、民間のノウハウを積極的に取り入れる必要性を訴えられました。今回の白書の冒頭でも、「千代田区を一つの経営体、政策主体とし、この自治体運営に当たってはマネジメント、いわば経営の視点を忘れてはいけない」と述べています。財政白書、予算編成方針を同時に発表し、いよいよ区として行政経営へ大きく進むことになったと私は信じます。

 そこで改めて、財政白書の提案者でもある区長に、何のための行政経営なのか決意も含めてお伺いしたいと思います。

 さて、白書の最大の特徴は、単なる財務諸表の公開にとどまらず、PDCAサイクルの仕組みづくりにまで及んでいることです。これはもう述べました。白書の「これからの財政運営」にこう書かれています。「予算消化の言葉に象徴される予算は使い切るのが良いという悪しき慣習から脱し、最小の経費で最大の効果を上げるよう、施策全般にわたって、計画・立案のPlan、事業執行のDo、検証・評価のCheck、見直しのActionを行うPDCAサイクルを構築します」とあります。先ほどのゴーン氏の行っている経営、またニューヨーク市地下鉄の改善活動のごとく、正に改革のプログラムであります。さらに、そのサイクル確立のために必要なものを、表現こそ「します」「必要であります」「検討します」「提案」とそれぞれ異なっておりますが、私が拾う限り、合計すべてで15に及びます。いずれも重要なものばかりで、またPDCAサイクル構築には欠かせないものばかりです。代表的なものは、中期財政計画の策定は「します」となっています。顧客である区民に満足度の最大化は「必要があります」に、「検討します」には決算不要額の一部を自由裁量で使える制度、また連結決算書の作成などです。「提案」としては、予算執行体制、予算編成手法の改善、会計手法を活用した説明責任の遂行、そして責任を明確にする上からも部門別バランスシートの作成等であります。

 そこで、これらがいずれも重要であればこそ、区民の方々にあらかじめどういうスケジュールで導入、また策定していくのか。あるいは優先順位を示すことは大事でしょう。中には試行期間を経て本格実施となるものがあると思います。これら提案を単なる提案で終わらせないためにも、そのスケジュール、そして優先順位をお伺いします。  

 次に、会計手法を活用した説明責任の遂行について、区も提案している以上、何らかの方法を考えられていると思いますが、私は具体的にはアニュアルレポート、いわば年次報告書を作成することを提案したいと思います。
 現在法令で定められている予算・決算の情報は難しく、住民の関心を引きません。単式簿記のため財政状態の把握が十分にできないことも関心を引かない原因になっていると思います。今後バランスシートもコスト計算書も毎期作成していく以上、どうわかりやすく区民に報告していくのか。区民は顧客でもあり、区政運営に自ら参画するという点からは、経営の大事なパートナーでもあります。そのためには、財務情報も含め情報を関心を持って読まれることが大事です。バランスシートもコスト計算書もそれだけでは単なる道具にしかすぎません。どう活用されるかであります。

 イギリス、アメリカの自治体では、民間企業以上にアニュアルレポートを作成し公表しています。仮にイギリスのアニュアルレポートを参考にすると、1.理解が容易である。2.経済性・効率性及び有効性の評価ができる。3.開示範囲が妥当。4.早期開示。5.情報へのアクセスが容易である、と以上のような利点があります。会計手法を活用した積極的な説明責任の遂行手段としてアニュアルレポートの作成について見解をお伺いします。

 次にもう一つ提案でありますが、財務諸表、特にバランスシート作成のための基準であります。大きく作成基準としては、今回白書でも採用しています自治省方式と日本会計士協会会長の中地先生を中心にまとめられた東京都方式がありますが、それぞれ長所と欠点があります。何のために作成するのかによりそれぞれの威力を発揮します。自治省方式のすぐれている点は、全国の自治体が統一的に計算作成できるので、他の自治体との比較を容易にしていること。また、決算統計から作成することから、過去の年次のものも作成できるということであります。今回白書でバブル崩壊前と今との比較、また他区との比較もされ、千代田区の姿がストック面から初めて明らかにされました。東京都方式は副題として「機能するバランスシート」となっていますが、最大の特徴は自治省方式では不可能であった部門別、事業別バランスシートの作成が可能ということです。逆に自治体ごとに統一的な集計ができないことから、他の自治体との比較やバランスシートを作成していなかった過去と現在との比較は難しくなっています。部門別バランスシートの作成は、その部門ごとの責任の所在を明らかにし、行政評価、PDCAサイクルと連動させるためには重要なものであります。全体と部門の作成基準を統一するためには東京都方式が便利かと思われます。さらに東京都方式は、バランスシート、コスト計算書のほかにキャッシュフロー計算書の計3表を作成することを義務付けています。このキャッシュフロー計算書は、現行の歳入歳出決算書とは大きく異なり、資金収支の状況を明確に表示し把握できるものです。よって、先の部門別バランスシートと併せ評価には欠かせないものです。
 以上の比較から、東京都方式による財務諸表作成も有益であると思いますが、所見をお伺いします。

 次に、同時に発表されました予算編成方針についてお伺いします。
 白書の中でも歳出のところと「これからの財政運営」のところで、予算編成手法の改善として述べられてもいます。今まで多くの自治体では、先のPDCAサイクルでいうところのPlan(予算)とDo(施行)しかなく、単年度で使い切ることがよしとされてきたと言えます。PとDしかなかった悪しき慣習から脱し、サイクルの後半、Check(検証・評価)とAction(見直し)を行い、Plan(予算)へとフィードバックできることが白書でも訴えていたごとく重要であります。ちなみにアメリカ連邦政府では、93年にGPRA法、政府業績成果法という法律ができましたが、これは成果目標と実績、これのギャップを説明してから来年度の予算、計画をつくるというものです。

 今回の予算編成方針の特徴に「予算編成方針(インセンティブ)」とあります。また、冒頭述べました白書には「『予算消化』の言葉に象徴される予算は使い切るのが良いという悪しき慣習から脱しPDCAサイクルを構築します」とあります。
 もう一つ、予算編成について大事なことは、政策目標、課題ごとの予算編成ではないかと思います。それは、現在では施策が複数部にまたがることは珍しくありません。各部を横断する施策については、関連部の連携により予算要求を行うことが重要となってきます。各部の取り組みや職員の仕事に対する考え方も政策目標を課題指向へと変え、予算編成もそうあるべきだと思います。

 そこで、改めて区長に今回の予算編成方針の特徴とは何かお伺いします。

 最後に、区民にわかりやすい予算説明書についてお伺いします。
 積極的な情報提供が重要なことは1年間の報告書としてのアニュアルレポート作成のところでも述べました。予算説明書では、税金を今年度はこう使いますと、区民にわかりやすい言葉で図やグラフを駆使し、できればハンドブック形式にし、皆がいつでもどこへでも持参できるようにしたらどうでしょうか。ふらっと区長室へは、区長も区民も持参し、質問もできるし、説明も受けられる。また、各種懇談会、説明会などでも同様に活用できると思います。  わかりやすい予算説明書といえば、北海道ニセコ町の町民向け予算説明書が有名ですが、3月議会で予算が承認された後作成にかかり、5月には各家庭に無料で配布されるそうです。A4版126ページで、部数は2,500部だそうです。行政用語や専門用語を避けながら、やはり写真やグラフを使ってわかりやすく説明しているのが特徴となっています。例えば、議会提出用の説明書では、「○○駐車場整備事業・事業費幾ら」とされるのが、地図つきで場所を示し、駐車場の利用目的や周辺施設との関連、一帯の整備がどの程度の進捗状況にあるのかなどが説明されます。またニセコ町では、予算説明のほかにQ&A方式で財務状況もバランスシートも含め資料編として加えているそうです。作成したことによる成果としては、

  1. 役場が何をしようとしているのか、住民生活がどう変わるの か、予算を通じて行政と町の姿が見えてきた。まちづくり町民会議などを通じて意見や提案を出す住民が増えてきた。

  2. 縦割りになりがちであった職員間の情報共有が進み、意識改革や総合力の発揮、点検活動の強化につながっている。

  3. 議会での政策論議が活発になった等

がメリットとして挙げられています。先のアニュアルレポートと合わせると、ちょうど半期に1冊、区の最新情報の入った報告書、またはハンドブックが公表されることになります。このわかりやすい予算説明書の作成につき所見をお伺いします。

 以上、財政白書と予算編成方針について質問させていただきました。この白書と予算編成方針が発表された意義は大変大きいと思います。なぜなら、このことにより、区として実質的行政経営へのスタートを切ることになったと私は確信しているからです。  区長並びに関係理事者のわかりやすく前向きな答弁を期待し、私の質問を終わります。(拍手)    

〈区長答弁〉

 行政経営に関します大串議員のご質問にお答えします。
 まず、ご質問の中で、大変広範にわたり行政運営に関するご調査をされ、我々のこれからの区政運営に大変示唆のあるご提言をいただいたということを、私、ご質問を聞いていて十分感じまして、財政白書は正に第一歩でございます。これからどういうふうに区政運営の中で、あるいは区民との関係で、これをステップに行っていくかということを考えますと、ただいまのいろいろなお話はこれから十分に受け止めさせていただき区政運営に生かしていきたいというふうに冒頭申し上げたいと思います。

 そして、私の区政運営は、申すまでもなく経営感覚にあふれる区政ということを申し上げてあります。そうした中で、議員から日産のゴーンのお話がございました。ある面では大変私たち日本人にとってはカルチャーショックと申しますか、大変大胆な経営をやったというふうに思っております。ゴーンのいろいろなお話もありましたが、ゴーンは一方ではこういうことも申しております。特に社員に対して「今日の仕事に安住するな。絶えず明日の仕事を考えろ。変化を恐れるな」と、こういうことも就任の当時に申したそうでございます。正にそうした経営姿勢が1年、2年の間に見る間にさんさんたる日産が今日のような状況になったんだろうと思います。これは、我々一つの組織体においても大変参考にするべきことだろうというふうに思っております。

 申すまでもなく、行政は区民の皆様方の貴重な税金によって賄われている。1円の重みをよく考えて、効果的、効率的な行政サービスをすると。こういうことだろうと思います。これは私は民間の経営も全く同じであろうと思います。そして、区民の目線でということを申し上げました、私は。民間は顧客本位ということだろうと思います。お客様が離れればその組織体はつぶれます。区政も全くそうだろうと。しかし、残念なことに今の仕組みは、区民の方々がサービスの選択ができません。例えば、ここの窓口が対応が悪いからといってほかの区でそうしたサービスを受けることができない。同じサービス業でありながら、そういう状況でございます。だからこそ、より以上に、民間以上に、お客様と申しますか、区民の目線で私を含めて職員が仕事をしていただきたいと。こういうことを就任以来私は申し上げております。これもそのマインドと申しますか、心はやはり民間のサービス業の私は精神をぜひ1,400人弱の職員がそうした気持ちで日々の仕事をしていただきたいということでございまして、議員のお話と私は考え方は同じものだろうというふうに思っております。当然、そうした観点から見ますと、税金の重みということから、やはり質を落とさずコストという、そうしたことを常に一人ひとりの職員が考え、仕事をしていくことも必要だろうと思います。

 今、時代は同じやり方でいいという時代ではない。常に自分たちの行い、あるいはやってきた仕事をもう一遍振り返って考え、そして変えていくと。このことを行わないと、私は組織は滅亡すると思います。これは民間の企業も全く同じ視点で行っているんではないだろうかと思います。これからもご質問の趣旨に対して、一つひとつの仕事についてやはり実際の成果と評価、それをきちっと行うという、いわゆるPDCAシステムというのをきちっと導入するべく準備をしているところでございます。

 あとは関係理事者の方から答弁を申し上げますので、よろしくお願いを申し上げます。    

 

〈企画部長答弁〉
 

 大串議員のご質問にお答えいたします。
 今回の財政白書では、主たる事項として五つの提案及び四つの検討事項を掲げていますが、これらの中には、これから策定される予定の基本計画の検討状況を踏まえる必要がある場合や、実施に移すに当たっては試行期間等を設ける必要がある場合も想定されます。行政評価制度と密接に関係いたしますPDCAサイクルについては、基本計画及び推進プログラムの策定に併せ、平成14年度から導入してまいりたいと考えております。また、年内を目途に財政運営に当たってのガイドラインを策定していきたいと考えております。

 アニュアルレポート、いわゆる年次報告など、財政状況の区民への説明についてでございますが、今回、区の全事業についてのコストを明らかにし、初めて区としてバランスシートを公表したところであります。いわばミクロのコスト情報とマクロのストック情報が相まって、区全体、区財政の透明化、わかりやすい財政に資するものであり、今後ともこれを継続的に行って、さらに精度を高めてまいりたいというふうに考えております。
 このような財政広報の節目といたしましては、財政に関する情報が総合的に集約される予算・決算の時点が適切だと考えておりまして、区民に広く周知される広報千代田や区のホームページなどを通じまして、わかりやすい形で区民の皆様方に適切な財務情報の提供を行ってまいりたいと思っております。

 次にバランスシートの作成方式についてでございますが、ご指摘のように、バランスシートには総務省方式と東京都方式があります。今回、他区とのバランスシートとの比較を行うなどの点から総務省方式を採用しております。今後の課題といたしましては、議員ご指摘の個別の公共施設など、部門バランスシートを作成し、もって区民に対する説明責任をより果たしていくことも検討しております。

 次に、今回の予算編成方針の特徴でございますが、初めて予算編成前に7項目にわたる予算編成の基本的な考え方並びに方向性を明らかにいたしました。従来の予算編成方針は、予算発表時にその当初予算の施設面及び財政面からの基本的考え方を示すものとして公表していたものですが、今回は方針の公表の時期並びに内容の点で大きく異なっているものと考えております。この方針に基づきまして今後予算編成作業を行い、区民福祉を向上する予算としてまいりたいと考えております。

 次に、区民にわかりやすい予算説明書の点でございますが、予算の内容を区民が十分理解していただくことは重要であると考えており、その観点から、これまでも予算説明書に併せ予算概要といった形で資料を作成してまいりました。今回の予算編成方針は、施策の実施状況を反映した中期財政計画を作成することを定めており、これを予算発表時に区民の皆様にお示しするなど活用しながら、予算及び施策の内容がより一層区民にご理解いただけるよう、わかりやすい工夫を凝らしてまいりたいと考えております。

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