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平成16年第4回定例会

​財政白書のその後

〈質問通告〉

財政白書のその後

  • 白書の原点と理念はなにかをまず確認し、

  • 「強い財政を目指す」とされた白書の目標はどもまで達成 できたのか

  • 白書で提案された多くの改革の方途はどこまで実現できたのか

  • 正味資産の意味するところはなにかを改めて確認し、

  • バランスシートと行政コスト計算書から分かることは何か

  • 区として目指すべき、将来のバランスシートの姿は
     

現状での課題と今後の具体策について

  • 行政評価制度について

  • (仮)施設白書を作成しては

  • 成果報告書を作成すべき

  • 改定財政白書の作成



〈質問と答弁の全文〉

 平成16年第4回定例会にあたり公明党議員団の一員として一般質問をさせていただきます。
 さて、最近皆様も気づかれたと思いますが、図書館に行政資料専門の棚が用意されました。また私の地元の出張所に行きましたら同じく区政情報コーナーとしてのラックが用意されていました。そこには基本計画を始め、区民の生活に密着するいきいき百科などの福祉に関係するもの、また都市計画マスタープランなどのまちづくりに関するものなどの各種計画、そして税に関する予算の概要や主要施策の成果などが整理されて並んでいます。本庁舎区政情報ルームや区のホームページでの情報提供とは別にこのように地域の身近なところで誰もがいつでも必要な資料や情報が得られることは大変重要なことであると思います。このコーナーを主権者であり納税者でもある区民の皆さんにもっとアピールすべきと思いましたので最初に紹介させていただきました。欲を言えば「福祉」、「まちづくり」、「税の使い道」など分野ごとインデックスをつけていただくこと、また「新着資料」、「現在検討中、ご意見を募集しています」などの表示も入れていただければなお親切であると思います。

 さて、私は平成13年8月に発行されました千代田区財政白書について、まる3年が経過したわけですが、今日までの取組みとその成果を中心に質問をさせていただきます。
 白書のなかの白書と言えば経済白書ですが、その最初となった白書は昭和22年、戦後の2年ですが、現在は内閣府に統合されました経済企画庁の前身である経済安定本部が作成した「経済実相報告書」であります。中心的に作成したのは当時総合調整副委員長であった都留重人氏であることから別名「都留白書」とも言われ、今も白書の原点とされています。第二次大戦後、空前の経済危機に際し日本経済の実状を政府と国民が一緒に考え解決の道を探るために、都留氏独特のわかりやすい比喩を織り交ぜながら極めて平易な言葉で書かれました。昭和39年から41年まで3冊の経済白書を自らも書かれた日本経済研究センター会長の金森久雄氏は、こう述べられています。「ついに今日までこの都留白書を超える白書は出なかった」と絶賛し、「当時の日本は、政府は国民のためを思って政治をやっているのだから、国民は政府を信頼してついていけばよいと言う考え方である。経済(都留)白書は、こうした古い考え方を転換して、経済の実情を統計を用い細かく国民に知らせ、なぜ緊急に対策をとることが必要かを詳しく説いている。経済政策の民主化のための、客観的な資料公開の原則に先鞭をつけたのが、この(第一次経済)白書である」と。
 この都留白書の原点と理念ですが、それは金森氏が指摘されたように、1点目として、政府が国民に、わかりやすい表現でありのままに国の実態を報告したこと、2点目には、発行の直前である6月に国が発表した緊急経済対策を素直なメッセージとしてまた提案としてその必要性を国民に説明したことにあったのではないでしょうか。以後、白書の原点と理念と言えば、わかりやすい表現を用いてありのままに現状を伝えること、そして素直なメッセージ性と提案を行うこと、この2点が必要であるとされています。
 その視点で、千代田区財政白書の原点と理念は何だったのか、今一度確認しておきたいと思います。あくまで自治体の財政白書でありますので、主権者であり納税者でもある区民の皆さんに対してのものとなりますが、ありのままを伝えなくてはならないものは何か、また素直なメッセージとして提案しなくてはならないものは何だったのか。私は最初、民間の会計手法であるバランスシートや行政コスト計算書を用いて区の財政状況を説明し、区民の皆さんに今後の財政運営について多くの提案がされたものと思っていました。もちろん財政状況を正しく認識することも重要ではありますが、むしろ、それらバランスシートや行政コスト計算書をはじめとする会計情報を手段として用い、区民の負担と事業の成果をありのままに伝え、説明することにあったのではないか。そして自治法の第2条で謳われた 「最小の経費で最大の効果を挙げる」という精神を白書では「区民の負担を最小に、事業の成果を最大にすること」とあらわし、今後の財政運営について 「強い財政を目指す」としながら多くの改革の方途を素直なメッセージとして提案したのではないか。そこに千代田区財政白書の原点と理念があったと考えます。この「区民の負担」また「事業の成果」という文言は白書に度々出てきます。例えば「区民の負担」という言葉は実に13箇所も出てきます。さらに白書では「区民の負担と事業の成果を説明すること」の意義について、「区民の皆さんの行政への参加を促し」、また「住民自治の側面からもこれからまさに重要である」、そして「区民が負担との関係を判断しつつ、自主的に選択しうる仕組みが自己決定・自己責任の前提となります」と強調しています。きわめてメッセージ性に富んだ、また多くの画期的な提案がなされた白書であると改めて感心した次第です。
 そこで質問ですが、この白書でのメッセージと言ってもいいと思います多くの改革の方途としての提案はいったいどこまで実現できたのかということであります。白書の中ではその提案の表現こそ「します」、「必要であります」、「検討します」、「提案」と異なっていますが、私の計算ですが合計15に及んでいます。その提案された代表的なものに、PDCAサイクルの確立、組織のあり方の見直し、また事業に関して人件費や維持管理費等を含めて事業のコストと成果、そして区民負担を明確にしていくこと、これはいわゆる「成果報告書」にあたりますがその作成、そして経常収支比率などの財政指標を内容とする財政運営方針(ガイドライン)の策定などであります。これらは「強い財政を目指し」、「区民の負担を最小に、事業の成果を最大にする」こととされた白書の目標を実現するためには是非とも実現が望まれるものばかりです。白書が作成されて直ぐの定例会で、私はこのような白書ができたことを評価した上でこれらについて導入、策定の優先順位とスケジュールを問いました。
 そこで、まる3年が経過した現在、どこまでそれらは実現できたのか。また、実現されていないものは何か、その場合今後のスケジュールも合わせてお伺いします。

 次に、バランスシートと行政コスト計算書についてであります。
 白書では区民の負担と事業の成果についてありのままを説明する方法として民間の会計手法が用いられたことは既に述べました。自治体の会計になぜ企業会計を取り入れなければならないのかという点について「取り入れなければならないのは、手法ではなく、会計責任を果たすという会計の機能です」とは公認会計士の吉田寛氏の言葉です。企業会計の場合、経営者は株主に対して会計責任を負い、説明責任があるという関係が明確であります。同じように自治体では選挙によって効率的な税金の使い道を委ねられた首長は主権者であり納税者である区民に対して会計責任を負い、説明責任が発生します。旧来の官庁会計では予算をいくら使ったかということはわかりますが、肝心な区民・納税者の負担や事業の成果がわからず説明責任を果たせません。白書では総務省方式にてバランスシートを作成しましたが、資産と負債の差額である正味資産について、「正味資産とは、既に収入として受け入れてきた財源分が計上されているもので、いわば現在までに区民が負担してきた部分と言い換えられます」と説明されています。さらに行政コスト計算書の方の収入と費用との差額である「純余剰」について「(プラスの場合)それは次世代のための正味資産(一般財源)の増加である」と説明されています。(マイナスの場合は将来の税金)。ちなみに東京都では総務省方式ではなく独自に「機能するバランスシート」を作成していますが、正味資産についての説明は「行政と住民の責任累計」であるとされました。いずれにしてもこれらの会計情報は財政運営の責任者である首長が主権者であり納税者である区民の皆さんに、その負担と成果を説明する際に是非とも必要だということであります。
 これまで平成12年度末のものから平成15年度末まで合計4年間のバランスシートと行政コスト計算書が作成されてきましたが、改めて正味資産とは何を意味するのかを明確にした上で、経年的にみてバランスシートと行政コスト計算書からわかることは何か。そして区として目指す理想のバランスシートはどのようなものになるのか、お伺いいたします。

 次に、現状での課題と今後の具体策でありますが、最初に行政評価制度についてお伺いします。
 「施策の実施と見直しのルール確立」の項に、「『予算消化』の言葉に象徴される、予算は使いきるのが良いという悪しき慣習から脱し、最小の経費で最大の効果をあげるよう、施策全般にわたって、PDCAサイクルを構築します」とし、さらに「予算編成、決算の各段階で、従来にもまして施策、事務事業の目標・手法と実績・成果を問い直し、今後にいかします」とその評価制度確立の意義について述べています。そして区の計画の方もそれと連動できるように策定されました。平成14年3月に策定されました基本構想・基本計画には計画の特徴として行政評価制度についての説明がなされています。そこには、「区民に『施策の目標』を明確に提示し、区民に対する説明責任の徹底、事業の継続的な改善や見直し、費用に対する大きな効果を目指す行政評価制度と連携した新たな視点による基本計画を策定する」と述べられています。その基本計画を受けて実施計画である推進プログラムと体系上なっています。つまり基本計画から実施計画にいたるまで行政評価制度に対応する計画作りになっていると私は理解しています。区としては昨年度より事務事業評価とバランススコアカードを利用した行政評価制度を本格実施し、まもなくその評価結果も公表されると聞いています。事務事業評価の対象は推進プログラムの全ての事業であります。基本計画から実施計画まで達成度合いや施策や事業の成果など区民の皆さんに報告・説明ができるということになります。
 そこで事務事業評価は今後とも推進プログラム事業全てを行い、基本計画の達成状況も合わせて区民の知るところとなるのかお伺いします。またその際、バランススコアカードの果たす役割は何かも合わせてお伺いします。

 次に今後の具体策でありますが私は3つの提案をしたいと思います。
 最初に(仮称)施設白書の作成についてであります。現在、新たな課題として指定管理者制度の導入がありますが、先の定例会の三常任連合審査会にてパワーポイントを使いわかりやすい説明がありました。また改定行革大綱(案)の中での説明に、「民間開放には民営化、指定管理者制度の導入、そして民間委託(いわゆる業務委託)があるが、区が直接行うかも含めて検討する際、質の高いサービスが提供され、かつ経費・業務の効率化が図られることが重要である」と、またそれらを判断するために「行政と民間事業者の間でサービスの質と経費を比較する市場化テストいわゆる官民競争入札を検討します。また民間開放した業務や施設については定期的にその効果を測定し、評価し、見直しを行い改善していきます」とあります。そしてその検討対象となる施設は岩本町ほほえみプラザなどをはじめ19の施設と9つの業務があげられています。施設ということでは、あらたな施設整備の計画も推進プログラムの改定(案)に示されました。
 そこで提案ですが、区民、議会、行政が施設の民間開放を含む施設のあり方について、議論するための素材・情報として、施設を中心とする事業の成果と利用者負担や区民の負担そして施設の維持管理費などのコストをわかりやすくまとめた(仮称)施設白書なるものを作成してはどうでしょうか。ご所見をお伺いいたします。

 次に成果報告書の作成についてであります。
 白書の中でその重要性や必要性がうったえられていることはすでに述べました。区ではこの白書の提案に沿う形で地方自治法に毎年作成が義務付けられている「主要施策の成果」について工夫が加えられてきたと私は理解しています。今年作成された「平成15年度主要施策の成果」ではコストの内訳として新たに人件費も示されるようになりました。しかし、区民の負担までは示されていません。逆に平成12年度分から公表しています全事務事業のコスト一覧の方には経費の内訳とともに財源の内訳も示され結果、区民の負担もわかるようになっています。しかしこちらの方には今度は事業の成果の記述がありません。
 白書で繰り返し述べられた事業の成果と区民の負担がわかるような報告書として成果報告書の作成を提案します。ご所見をお伺いします。

 最後に改定財政白書の作成についてであります。
 現在、行革大綱や推進プログラムについて3年をめどとされた見直しが行われていますが財政白書の改定は行われていません。白書では繰り返しになりますが、会計情報を用いて区民の負担と事業の成果を説明しようとしたこと、またその重要性と必要性が何度も主張されました。これらは今までの自治体の財務報告のあり方を一変させたのではないかと私は考えています。さらに、白書の原点と理念である、現状をありのままに伝え説明し、素直なメッセージ性ある提案を行うということが、地方自治のあり方が問われ、住民の関心も高まってきている現在、再び求められているのではないかと思います。そこで、財政白書は継続的に更新・作成されるべきと考えますがいかがでしょうか。ご所見をお伺いいたします。

 以上、財政白書のその後と題し、3つの質問と3つの提案をさせていただきました。

 結びに、都留白書が「客観的な資料公開の原則に先鞭をつけた」とされますが、私なりにそれを象徴していると思われる部分を紹介させていただきます。総論(総説)の最初の部分となります。
「政府はこの際、拙速の努力により、集めうるかぎりの資料や統計を基礎として、わが国経済の現状を国民につたえ、国民といっしょに問題を考えかつ解決してゆきたいと思う。そのためには、国民一人ひとりが、国の経済をあたかも自分の家の家計を考えるかのように、つかんでおく必要がある。不幸にしてわが国統計の発達は非常にたちおくれていて満足な診断書をかきあげるとはむずかしい。しかしいたずらに十全の統計ができあがるのを待つよりは、与えられた制約のなかで万全を期して、実態の把握に資するほうが、このさいは大切なのではなかろうか」
 以上です。まさに書き手の熱意が伝わってくる気がします。

 区長並びに関係理事者の明快なる答弁を期待し私の質問を終わります。
 ありがとうございました。


〈区長答弁〉

 大串議員のご質問にお答えいたします。
 私が区長に就任をした当時、区の財政状況は、区が毎年必ず収入される財源の大部分が毎年必ず支出をされる職員の人件費や施設の維持管理費にほとんど消費されるという実態がございました。このままそうした状況が続くならば、区の財政は、硬直化が進み、区民の皆様に対する新しい施策や施策のレベルアップを行うということは大変厳しいというふうに、私は就任当時、概括的にそうしたことを認識したわけでございます。何といいましても、区民の皆さんに質の高い行政サービスを継続的かつ安定的に提供していくためには、何といっても強い財政、すなわち強い懐具合を持たなければいけないということが不可欠であるというふうに考えたわけです。そのために平成13年8月にお話のような財政白書というのを公表したわけでございます。
 白書というのは、ご指摘のように現状を正しく認識し、そしてその中から問題点は何なのか、そしてかつ解決するための道筋を提起するというのが白書の持っている性格だろうと思います。そのために13年8月の白書は、何といいましても、区の財政の弾力化ということをきちんとやらないといけないという、その意味付けから、通常言われております経常的に入る収入に対して経常的に支出をする経常収支比率をどうするかという課題と方向、あるいはそうしたことを実現するための幾つかのガイドラインというものを、白書の中で解決する道筋としてお示しをしたわけでございます。白書に提起されたことを具現化するために、ご案内のように「行財政構造改革大綱」をつくりますとともに、平成15年3月に「行財政改革に関する基本条例」というものを制定したわけです。通常言われている「行財政改革に関する基本条例」は、あちらこちらの自治体でできておりますが、ほとんどがプログラム規定でございます。しかし、私の方の提案し、議会でご議決をした基本条例は、いわゆる財政の弾力化のための目標値として経常収支比率を85%、それから白書でも提起がありました、何といっても人件費が重たい、そのために人件費の比率というのを25%程度という2つの枠組みの数値目標を条例の中に入れまして、そして区議会でのご議論をいただいてご議決をいただいたわけでございます。これはまさに条例によって可決をいただいたことは、区民との私は約束事であるということを区議会もご判断されたのだというふうに考えまして、そのための具体策として個々にいろいろな取り組みを行ってまいりまして、ご案内のとおり平成15年度の決算において、条例制定後初めて経常収支比率、あるいは人件費比率の2つの財政指標が同時に達成できたわけでございます。これもひとえに区議会の皆様方のいろいろな観点からのお力添えのたまものだろうと思っております。
 なぜ私がこうしたことにこだわるかと申しますと、地方分権という時代は、自らが地域のことは決め、そして実施をするという、こういう時代でございます。人間に例えるのがいいかどうかはわかりませんけれども、例えば親と子、国対地方は親と子という認識はないですけれども、親と子の関係で見ますと、子どもが自立をするというのは、やはり精神的、経済的、社会的自立でございます。そのためにやはり自らが稼ぎ、そして使い方を自らがきちんと決める、足りなかったらお金をちょうだいよという、そういう考え方は私は自立ではないと思っています。これもやはり地方自治体というものをとらえてみたときに、まさに自分のところの懐ぐあいを、ときには倹約をし、そして真に必要なところで使うという、こういうことがきちんとできない自治体は、地方分権、あるいは地方主権ということを言う資格がないというふうにも思っておりまして、そうしたことの思いもありまして、こうした財政白書、あるいはガイドライン等を作成させていただいたわけでございます。
 もちろん、白書が十分であるとは思っておりません。何といいましても、区の状況をつまびらかにするということは、わかりやすく、そして読みやすく、そうしたことが必要でございます。まだまだそういう意味では十分ではないと思います。特に区民の参加等をより進めるためには、行政の中身をわかりやすく、つまびらかに出すことであります。それは教えてやるというスタイルではなくて、理解をしてもらうようなつくり方をしなければいけないと思っております。そういう意味では、当時、13年度につくった財政白書も、まだまだ私は不十分な点があるということは基本的に認識をしているところであります。
 こうした状況の中で、平成17年度の予算編成につきまして現在鋭意取り組んでいるわけでありますが「第二次推進プログラム、あるいは「第二次行財政構造改革大綱」と、」いうものも、そうした一連の流れの中での作業として、それを予算に反映していきたいわけでございますが、改めて「平成17年度を初年度とする5カ年の財政計画 」すなわち新たな中期財政計画も編成過程の中で策定をしてまいりたいと思います。
 いずれにいたしましても、三位一体の分権改革の中でも、必ず出てくるのは、地方もきちんと自立するためには、財政というものをきちんとしなければだめですよということはもう常に出てまいります。交付税の改革等を見ましても、余分にお金が いっているんではないかということがもう必ず議論にでます。あるいは、今日のいろいろな世論調査を見ましても、分権には賛成だけれども、本当に地方公共団体がしっかりと信頼できる行財政運営をするかとなると、国民の中では半分に議論が分かれています。その1つは、しっかりと財政運営ができるかどうかということが国民の地方への信頼の判断の要素にもなっているだろうと思います。これは過去に多くの自治体が財政再建という団体になって大変な苦労をした、こういうことが歴史の中ではもう事実としてあるわけでございまして、そういう状況になりますと、今まで積み上げた行政サービスは全部カットされるというような悲惨な状況になる、そうしたときに都道府県も、国政も助けてくれることはないです。そのことをやはり私たちはきちんと認識をして、これからも切り詰めるところは切り詰め、そして本当に真に必要なところに経費を充当するということを自らがやっていくということが対住民との信頼をより一層強めることになるんだろうと思っております。
 いずれにいたしましても、幾つかのご指摘については真摯に受けとめさせていただきたいというふうに思います。
 なお、詳細については、関係理事者をもって答弁をいたさせます。

〈政策経営部長答弁〉

 大串議員のご質問にお答えいたします。
 まず1点目の正味資産の意味についてですが、営利活動を目的としない地方公共団体では、株式会社の資本に当たる概念はありません。そのため資本等の名称を避け、正味資産の呼称が用いられたもので、バランスシートの借方に計上されている資産のうち、ご指摘のとおり、現在まで区民が負担してきた部分、詳細に申し上げれば、既に区民から支払われた税金や国や都からの補助金を財源として取得している金額を指すものであります。
 2点目の経年的に見てバランスシートと行政コスト計算書からわかることについてですが、まずバランスシートについては、流動資産から有形固定資産への資産の移動と負債比率の低下が大きな特長となっています。この理由は、区では現在、中期財政計画に基づき、新たな記載を起こさず、基金を活用して施設整備の財源に充当しているためであります。また、行政コスト計算書については、人件費などの人に係るコストが低下傾向にあることであります。この理由は、行革大綱に基づく新規採用の抑制をはじめとする総人件費の削減に取り組んだ成果であります。
 3点目の区として目指す理想のバランスシートについてですが、地方公共団体のバランスシートについては、その評価方法等が未確立であり、現時点では理想形というものをお示しできかねるのが実情であります。一例を挙げれば、バランスシートの負債の部には借入金等の状況が示されます。民間企業であれば無借金経営は優良企業の代名詞のように言われますが、地方公共団体においては、世代間の負担の公平という観点から議論のあるところであります。
 いずれにいたしましても、バランスシートは行政活動の結果であり、区のサービスや負債、区民負担はどのようになるのかを示すものであります。バランスシートの作成、公表に継続的に取り組むことで、税負担と行政サービスとの関係を明らかにし、区民による施策の選択に資してまいりたいというふうに考えております。
 4点目の主要施策の成果についての所見についてですが、平成14年度決算から主要施策の成果の報告書の内容を大幅に見直しさせていただきました。この結果、1事業1ページに事業概要や実績を整理するとともに、事業のコストや進捗度などを併記することで、税金がどのように使われたかをよりわかりやすくお示しすることができたものと考えております。今後ともご指摘の点を踏まえ必要な見直しを進め、区の事務事業の成果をよりわかりやすく区民の皆様にお示しできるようにしてまいりたいというふうに考えております。
 5点目の財政白書改定版の作成についてですが、現在、国において「国庫補助・負担金の削減」と「国から地方への税源移譲「地方交付税改革」を同時に行う三位一体の改」、革が検討されております。これにより平成17年度と18年度の2カ年で3兆円の国庫補助・負担金の削減と住民税のフラット化による国税から地方税への税源移譲を目指すこととされております。しかしながら、これにより本区においては、税源移譲どころか減収となることが懸念される状況ともなっております。また、現在、平成12年度に実施された都区制度改革の総仕上げとして、平成18年度からの都区間の財源配分等の見直しが進められているところでもあります。したがって、財政白書の改定に当たりましても、こうした動向を十分に見極めながら鋭意取り組んでまいりたいというふうに考えております。

〈政策担当部長答弁〉

 大串議員のご質問のうち、推進プログラム事業の事務事業評価の実施とバランススコアカードの果たす役割及び(仮称)施設白書の作成についてお答えいたします。
 まず推進プログラム事業の事務事業評価につきましては、今年度行いましたように、改定の際に実施し、改定に反映させていくことを考えてございます。なお、事業成果の状況につきましては、毎年公表できるよう検討してまいります。
 また、バランススコアカードは、各事業部が1年間に取り組む重点目標を明らかにし、組織目標の共有化を図ることなどにより目標達成を着実に進めていくための手法でございます。したがいまして、バランススコアカードの重点目標は、必ずしも推進プログラム事業とは限りませんが、重なる場合には促進目標の側面からも当該推進プログラム事業を推進していくことになります。
 次に、ご提案いただきました(仮称)施設白書につきましては、施設を中心として事業の成果と区民や利用者のコストなどをわかりやすくまとめるという内容でございますので、現在作成しております「事務事業概要」や「事務事業コスト一覧」なども活用しながら、わかりやすくまとめるよう工夫をしてまいります。

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