真心の伝わる政治を!
大串 ひろやす
平成26年第4回定例会
基本計画の策定にあたって
〈質問通告〉
基本計画の策定にあたって
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改定基本計画は区民にどのようなメッセージを伝え、どのような社会を共に築こうとするのか。
10年が経過した文化芸術基本条例について
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条例に謳われた「すべての人々の文化芸術を創造し、享受する権利を尊重する」とした理念はどこまで実現できたのか。また今後の具体策は。
オープンデータやICTを活用したコミュニティの形成について、スマホの普及とアプリの開発は急速に進みオープンデータやICTの利活用による情報の共有と区民の参画はより可能となった。そこで、
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オープンデータまたICT利活用のための方針を策定してはどうか
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千代田区版レポの実証実験を行うことを提案する。所見は。
〈質問と答弁の全文〉
平成26年第4回定例会に当たり、公明党議員団を代表して質問を行います。
最初に、基本計画の策定についてであります。計画が区民に問いかけ、メッセージとするところの「基本的な考え方」について質問いたします。
平成19年第4回定例会でも紹介させていただきましたが、計画のメッセージ性ということでは、昭和53年に策定されました千代田区で初めての総合計画の冒頭に書かれました「基本的な考え方」であります。遠山影光氏が区長のときです。区民に向けての問いかけとメッセージが伝わってくるすばらしい内容です。再度ご紹介させていただきます。
「経済的な繁栄を優先してきた社会は、物質的な豊かさを助長したが、反面環境の破壊や人口流動に伴う地域社会での人と人とのつながりの欠如など反福祉的要素を引き起こし、健全な区民生活の基盤が揺り動かされた。こうした状況は、都市部において、いわゆる都市化現象として首都東京たる千代田区に集中的にあらわれ、政治の中枢管理機能、大企業の経営管理機能の過度な集中、夜間人口の減少、生活環境の悪化など、さまざまなゆがみなどが表面化してきている。この事実を直視したとき、今こそ、区民に最も身近な自治体たる区は何をなすべきかを真剣に考え、区民に明らかにしていく使命を担っている。したがって、区は区民を主体とし、区民一人ひとりの自覚と行動を基礎とし、心と心のふれ合いのある新しい連帯感に裏打ちされた地域社会をつくり出すことこそ必要である。
こうした視点に立つと、今こそ、区民生活の真の豊かさとは何かを、区民生活の根本に立ち戻って探求することが何よりも求められている。この区民の生活の真の豊かさを、区民の多様な欲求が実現された状態として認識するならば、これこそ広い意味での福祉と言えよう。
このような状態の実現を図るためには、区と区民が、ともすれば、与える側とそれを受ける側という一方通行的な関係になりがちであったものを、両者が理解、協力し、相互に与えられる関係をつくり出さねばならない。そうなってこそ、今日の自治体に求められている究極的な使命が果たせるものと考える。換言するならば、区民の生活の真の豊かさとは、区と区民が一体となった区民福祉の向上である」と。
35年以上も前に書かれた文章ですが、非常にメッセージ性があり、向かうべき方向性が明確に述べられています。このような「基本的な考え方」を広く区民に表明した総合計画を策定されたことに改めて敬意を表します。
当時と現在では、社会状況は一層その深刻さを増しています。貧困と格差の問題、少子高齢化の進捗、地域の共同体やコミュニティの希薄化、高齢者の孤独死と子どもへの虐待、そして東日本大震災は依存する社会の脆弱さを浮き彫りにしました。このようなときのこのたびの基本計画改定であります。
私は、平成21年第1回定例会にて、作家、村上龍氏の「希望の再興へビジョンを描け」を紹介し、夢と希望が持てる社会へのビジョンとして「希望の構想」を示してはと提案させていただきました。
石川区長は、区長選挙後の初の議会、昨年の第1回定例会招集挨拶で、今後の区政運営の基本方針を述べられました。「現代社会は、次第に人間関係が希薄になり、身近な地域や家庭のつながりが失われつつあります。包容力のある地域社会の実現であり、このような地域社会を「豊かな地域社会」であると考えております。地域での支援のあり方として、「自助」・「公助」・「共助」があります。その中でも現代社会において特に「共助」が弱く薄くなり、人と人との心のつながりが失われてきていると実感しております。また、多くの人々は、地域が必要とするサービスは最大限行政が提供してくれるものという見方がいまだに強く残っています。しかし、真に地域が必要とするサービスを展開するためには、地域の皆様自身が、その地域に合ったやり方を考え、お互いに知恵を出し、助け合いながら進めていく「共助」の精神が不可欠であります。そして、行政は、「共助」の実現を側面から支援し、施策に結びつけていく必要があります。
地域社会とは、そのような「共助」の基盤づくりの上に施策を発展・充実させていくものであり、地域に最も身近な自治体である区にとって、多くの人々の参画と協働が重要な課題になってまいります」と述べられました。
「豊かな地域社会」の実現を目標として掲げ、そのためには地域コミュニティの形成と区民の参画と協働が必要であるとしました。このことは、東日本大震災の教訓にも通ずるものであり、私も賛成です。このたびの基本計画策定を、千代田区「希望の構想」とも言えるような計画としたいものであります。
そこで、改めて区長にお伺いします。
基本計画策定に当たって、区民の皆様に何を問いかけ、どのようなメッセージを送り、そして、どのような社会をともに築こうとするのか、お伺いいたします。
次に、10年が経過した文化芸術基本条例についてであります。
平成16年3月に文化芸術基本条例は策定されましたので、今年で10年が経過しました。このような文化芸術に関する条例を策定している区市町村は、現在、全国でわずか56区市町村であります。国においては、平成13年に文化芸術振興基本法が制定されました。基本理念として、「文化芸術を創造し、享受することが人々の生まれながらの権利である」と国民に文化権の存在を明示し、文化芸術活動を行う人の自主性と創造性を尊重することがうたわれました。
区の文化芸術基本条例の基本理念も同様に、「全ての人々の文化芸術を創造し、享受する権利を尊重する」とし、また、「一人ひとりの自主的かつ創造的な活動の輪がつながり」と、区民の文化権の尊重と文化芸術活動に当たっては、区民の自主性と創造性を尊重することがうたわれました。さらに条例では、この基本理念にのっとり、区の実施する全ての施策に文化芸術の視点を取り入れることも入りました。区民にとって、まことに誇るべきすぐれた基本条例であると思います。
さて、10年が経過した現在、今日までの成果と課題を将来のために一度整理してみる必要があります。掲げられた理念はどこまで実現できたのか。特に、子どもの「文化芸術を創造し、享受する権利を尊重する」との理念の実現に向けて、どう取り組み、どのような成果を残せたのかであります。この点、第2次の文化芸術プランでは、子どもに関係する文化芸術事業について、「育てる」の項に事業名が列挙されております。
教育委員会が行っているアーティスト・イン・スクール、これは有楽町国際フォーラムで毎年行われているラ・フォル・ジュルネと連携し、音楽家の方が小学校を訪問してのワークショップ、また、ラ・フォル・ジュルネの公開リハーサルに子どもたちも参加しています。大変好評とのことです。
区が行っているアーティスト・イン・レジデンス、今年は電機大学跡地に全長50メートルの巨大バッタの展示。政策設営段階から参加が可能なアートプロジェクトが行われました。
また、文化芸術子ども支援事業、アートスクエア事業などであります。
ほかにも、各文化芸術団体の行っている自主事業、また、図書館や生涯学習館などの行っている事業もあるかもしれません。子どもの本来持っている無限の可能性を開いていくため、文化芸術に触れ、体験し、発表できる場や機会を全ての子どもたちに保障していくことは、私たち大人の責任であります。文化権の尊重です。
場や機会の提供ということでは、周知の問題があります。子どもに関係するさまざまなすばらしい事業があっても、子どもたちが知らなくては参加することはできません。毎年各児童館や学校、アーツ3331やホール、生涯学習館、または広場などで、さまざまな子どものための教室、また展示や発表会などが行われていることと思います。しかし、一つ一つがばらばらに周知されている現状では限界があります。
そこで提案があります。それは、それぞれの事業を1つのプログラムとして位置づけ、全体を通して1つの事業としてはどうかということです。コンセプトは、区全体が巨大な児童館。根拠は、文化芸術基本条例の理念。目的は、子どもの持っている無限の可能性を開いていくための機会の提供です。そして、それぞれの事業はプログラムとして位置づけていきます。このように1つの大きな事業とすれば、参加する皆が理念と目的を共有でき、周知の問題はおのずから解消することができます。
また、場所については、できるだけ地域の児童館で行うようにしてはどうでしょうか。中学生はともかく、小学生などは、自分もやってみたい、見てみたいという事業があったとしても、会場が遠くてはなかなか参加できません。できるだけ身近な児童館で行えるよう工夫してはどうでしょうか。将来的に児童館での実施が定着すれば、各児童館をネットワークで結び、それぞれの模様をどこの児童館でもテレビを通して見ることができ、また、アーティストや講師の方に質問もすることも可能となります。アーティストや講師については、条例の理念に基づくプログラムであることに賛同し協力していただける芸術家や専門家の方に有償のボランティアでお願いできればとも思います。
1つの大きな事業とすることにより、各実施主体同士の連携と工夫も図れます。区を初め、教育委員会、児童家庭支援センター、アーツ3331、各文化芸術団体、図書館や生涯学習館などが一堂に会し、子どもの文化権を保障するため、事業の内容も含め、場や機会の提供について話し合う会議を持ってはどうでしょうか。その上で、各実施主体は年間の予定を組むようにしてはどうでしょうか。
以上、子どもの文化権の尊重のための具体策として、場や機会の提供について提案させていただきました。
これまでの10年間を通して、「全ての区民に文化芸術を創造し、享受する権利を尊重する」とうたわれた理念はどこまで実現できたのか。特に、子どものそれはどうだったのか、お伺いいたします。あわせて、提案した事業の周知方法と児童館での開催、そして実施主体が一堂に会した会議の開催について、ご所見をお伺いいたします。
次に、オープンデータやICTを活用したコミュニティの形成についてであります。
スマートフォンの普及には驚くものがあります。持っていない人を探すほうが難しくなっています。また、同時に、アプリケーションソフト、通称アプリの開発も急速に進んでおり、ちなみにアプリの王様はコミュニケーションアプリであるLINEであります。利用者は世界で5億人だそうです。スマホとアプリが相乗的に作用し合い、普及と開発をまた促進するという状況にあります。
さて、千葉市に視察に行ってまいりました。千葉市の行っている「ちばレポ」の視察に行ったんですけど、そのときいただいた資料の1ページを拡大したんですけれども、ここの表ですよね。要するに、ICTの利用率は急速に上がっているけれども、地域のつながりは下がってきている。このICTを利用して地域のつながりを回復できないか、その可能性がICTにはあると、そういう資料でございます。
このICTを利用して地域のつながりの再生やコミュニティの形成につなげていけないのかというのが千葉市の試みであります。つなげていくことができるという「大いなる可能性」にかけた社会実験とも言えます。「ちばレポ」の本格運用は本年9月よりスタートとなりました。この可能性にかけた試みに私も賛成です。オープンデータの推進については、先日の決算総括質疑にて取り上げさせていただきました。「オープンデータ」とは、国や自治体などの公的機関が保有する公共データを、誰もが編集・加工等をしやすい形式で公開し、住民や企業が新たな資源として活用するものです。ただ公開しているだけではオープンデータとはなりません。機械判読、つまりコンピュータプログラムが自動的にデータを編集・加工など再利用できることに適した形式で、営利目的も含めた2次利用が可能な利用ルールで公開する必要があります。
スマホの普及とアプリの開発、そしてオープンデータの推進が、偶然なのか必然なのか、時を同じくして起きています。しかし、まだそれだけでは、ただ便利になった、効率がよくなったという段階であります。それでも大きな前進なのですが、目指すべき「大いなる可能性」の実現のためには、もう1つ必要です。それがオープンガバメントという考え方です。これは、2009年1月、オバマ大統領が就任直後の演説で、「透明性の原則(政府情報の公開)」、「参加の原則(政策決定への国民の参加)」、「協働の原則」の3原則を発表しました。この3原則がオープンガバメントの考え方であります。このオープンガバメントという考え方も、現在広く認識されてきております。同じような言葉で、ガバメント2.0や、イギリスのキャメロン首相の「大きな社会」なども基本的には同じ考え方です。
オープンガバメントという大きな原則、方針があって、オープンデータという仕組み、方法ができて、公共に資するアプリもより多く開発されていくことになります。そしてスマホの普及は、誰もがそれらのアプリを利用して行政への参加、社会への参加を可能とします。オープンデータからアプリの開発の段階では、アイデアソンと言うそうですが、地域の住民が困っていることや課題を出し合います。また、その解決策の具体化、アプリ試作品を作成するためのハッカソンと言うそうですが、それも開催されます。また、多くの住民や企業の参加を促すため、アプリコンテストやアプリ作成のための講習会なども必要となります。
自治体のオープンデータを利用したアプリの例としては、「コミュニティバスや福祉バスの運行状況や現在位置を地図上で確認できるアプリ」、女子高生の発案から生まれた「公立図書館の自習席の空き状況を確認できるアプリ」、ごみの分別方法や出す日などがわかるアプリ、「ごみなし」、数字で「5373」と書きますけどね。あ、「ごみなし」だから、「5374」。スマホのカメラが映し出す画像に関連した防災情報が重ね合わせて表示される防災アプリなど、身近なものがたくさんあります。
また、アメリカで注目されているものに、カリフォルニア州の消防署が始めた救命救急ネットワーク「パルスポイント」があります。心臓発作で倒れた人がいますという情報が、近くにいる登録された人に発信されます。救急隊員が来るまでの間、心肺蘇生法やAEDなどで処置をしてもらおうというものです。全米100の地域で使われ、5万人の市民が登録されているそうです。このアプリを開発したリチャード・プライス氏は、「より多くの市民が参加するようになれば、よりよい行政を実現できると思います。政府や自治体だけでは問題解決はできません。私たちは、市民の力を引き出す仕組みをつくろうとしているのです」と。
「ちばレポ」、正式には千葉市民協働レポートと言いますが――これが千葉市民協働レポートのスマホのトップページ。「レポートする」、「レポートを見る」、「マイページ」、「マイレポ」があります。千葉市民でなくても登録できるということで。担当課長は、「行政依存体質からの脱却が必要であり、行政が何でもやる時代は終わり、これからは市民によって支えられるまちへと変わっていかねばなりません」と述べます。私も同感です。ちばレポ導入に至ったきっかけは何ですかと聞くと、「アメリカで住民の困りごとや要望、例えば道路の破損やごみの不法投棄、壁への落書きなどがあれば、スマホで写真を撮り送信するという「北米311」というアプリがあり、それを参考にしました」と。このアプリが特に威力を発揮したのは、2012年の大型ハリケーンが襲ったときだそうです。
ちばレポも仕組みは同じです。スマホから送られてきた情報は、地図に落とされ、写真でその状況がわかるようになります。また、どのように解決したかということも写真で見ることができます。役所と住民、皆が情報を共有できます。
これは、ホームページを開きますと、皆さんが送ってくれた、そういった困った情報などが一目でわかります。それぞれクリックして開きますと、写真が表示されて、どういう状況か。また、行政が対応中のところ、それから解決したところ、それぞれ色で区分けされておりまして、解決した状況も、きちんと写真で対比できるようになっているということです。
課長は、「今後、レポーターとあわせてサポーターの募集も行っていき、協力してくれる市民のネットワークをつくっていきます。地域の課題解決のツールとして、また市民参加のツールとしていきたい。そしてコミュニティの形成のツールともなります」と話されていました。実際、ちばレポには、「ちばレポ基本理念」と「ちばレポのミッション」がきちんと書かれていて、感激いたしました。
短い視察でしたが、多くのことを学ぶことができました。スマホの普及とアプリの開発、そしてオープンデータの推進、オープンガバメントが同時に振興していること、そして私たちは今その大きなチャンスを目の前にしていることを知ることができました。そして、そのチャンスを生かしていくことができるのは、それぞれの自治体と住民の力量にかかっているのではと思いました。
これらのことを考えると、区として、今後これらの3つを体系的に位置づけて計画的に進めていくことが必要です。そこで、オープンデータの推進とICTの利活用のための方針を明確にし、また、具体的なルールの策定と推進計画の策定を提案いたします。ご所見をお伺いいたします。
日本人の特徴として、災害のときだけでなく、日常においても何らかの形で地域社会に貢献したい、人の役に立ちたいという人はたくさんいます。ただ、そのきっかけがない、方法がわからないということだと思います。町会に入っていない人はなおさらのことではないでしょうか。「協働レポート」はそのきっかけとなり、方法となります。
そこで、千代田区民協働レポート、いわゆる千代田レポの実証実験を行うことを提案いたします。あわせてご所見をお伺いいたします。
以上、3項目質問させていただきました。前向きで明快なる答弁を期待して、公明党議員団の代表質問を終わります。(拍手)
〈区長答弁〉
大串議員のご質問のうち、基本計画策定の基本的な考え方について、私から答弁をいたします。
35年以上も前に策定された本区の最初の長期総合計画の基本構想では、区民の生活の真の豊かさとは何かを問いかけながら、その実現のために、区の努力だけではなく、区と区民の相互理解と協力が重要であることを強く強調しております。このことは、まさに「豊かな地域社会の実現」と、その前提となる「参画と協働」の視点という、今日的な課題にもつながると思います。
当時、私は企画課長としてこの策定にかかわった者として、改めて読み直し、懐かしく思うと同時に、いつの時代でも共通する基礎的自治体としての役割、視点を再確認し、身の引き締まる思いであります。
今回の基本計画におきましては、「豊かな地域社会の実現」を目指し、今日の社会背景や千代田区における新たな課題を踏まえて、その解決に向けた方向性を素案では示していると思います。例えば、自治体の基本要件である人口については、夜間人口の減少が最重要課題であった35年前とは異なり、今後10年間は人口が増え続け、10年後の人口は約6万5,000人と推計される状況であります。また、この人口の85%以上がマンション等の集合住宅に居住しており、住まい方、コミュニティの形成が全く異なってきておりまして、それを踏まえて、コミュニティのあり方、防災や福祉施策の推進などを、これまでに例のない困難な課題がございます。
さらに、エネルギーや食糧供給を地方に依存する本区の立地条件を踏まえれば、今後、地方との連携や共生は、区政運営に欠かすことができない重要な視点でもあり、以前にも増して重視すべきこととして基本計画で明確に位置づけをしております。
これらを踏まえた今回の基本計画におきましては、区民に伝えるメッセージを一言で表現するならば、「みらいに向けた着実な一歩」であると考えます。これは、ご指摘の「希望の構想」にも通ずるものと思いますが、10年後の千代田区が今よりもよくなっているよう、「みらい」に向けて着実に取り組んでいく中身になっていると思います。
そうした思いを込めて、今回の基本計画の名称は仮称ですが、正式名称を「ちよだみらいプロジェクト」にしたいと思います。副題としまして、「千代田区基本計画2015」を今考えております。今後、パブリックコメントを初めとする区民等からのご意見や区議会における論議を踏まえて、素案を修正し、計画を取りまとめていくことが、この計画の推進に当たって、区民との協働の視点という原点に立ち返って取り組んでまいりたいと思います。
なお、その他の事項については、関係理事者をもって答弁をいたさせます。
〈政策推進担当部長答弁〉
大串議員の「オープンデータやICTを活用したコミュニティ形成について」のご質問にお答えいたします。
まず、オープンデータ推進とICT利活用の方針の明確化と具体的なルールの策定についてでございます。
区は、平成14年度に「千代田区情報化指針」を策定し、情報化推進に取り組んでまいりました。その後、千代田区の情報化を取り巻く環境は大きく変化してまいりました。特に、通信技術の高度化に伴い、情報を処理するIT(インフォメーション・テクノロジー)から、ネットワークによる新たなコミュニケーション形態として、画像や動画などさまざまな情報を双方向に通信できるICT(インフォメーション・コミュニケーション・テクノロジー)へと飛躍的に変化してまいりました。また、本年3月、総務省は、自治体を取り巻くICT環境の変化を踏まえ、「電子自治体の取り組みを加速するための10の指針」を公表しました。その中で、「オープンデータの推進」が1つの柱として掲げられております。これらを受け、現在、「千代田区情報化指針」の見直しを行っているところであり、その中でオープンデータの推進及びICT利活用のための方針やルールなどを明確にすることも含め、検討をしてまいります。
また、具体的な取り組みとして、公式ホームページの一部を試行としてオープンデータ化し、区民や企業・団体による2次利用を原則可能にするとともに、機械判読に適した形で公開ができないか、運用ルールも含めて、現在、検討をしているところであります。
次に、「ちばレポ」の千代田区版、「千代田区民協働レポート」の実証事業の提案についてお答えいたします。
区におきましても、「ちばレポ」などICTを活用した「地域のつながりの再生」、それから「コミュニティの形成」の可能性は、十分認識をしているところであります。一方で、「透明性」「参加」「協働」といった「オープンガバメント」の原則が十分浸透しないまま、こうしたツールを活用すれば、行政への「お任せ体質」を助長することにもなりかねません。
また、千代田区は、千葉市とは都市の規模・機能が異なり、昼夜間人口格差が約17倍という地域特性を有しており、これらを踏まえた検討も必要であります。いずれにいたしましても、議員ご指摘のとおり、「地域に貢献したい」という思いを持ちながら、地域との接点がなかった人々に、参加のきっかけをつくることは大変重要なことであると認識しております。千代田区の地域特性も考慮に入れながら、こうしたシステムが、コミュニティへの参加を促し、地域の課題解決を促進するものとして有効かどうか、費用面も含め、活用の可能性を研究をしてまいります。
〈区民生活部長答弁〉
大串議員の文化芸術基本条例に関するご質問にお答えいたします。
初めに、理念の実現状況についてであります。ご指摘のとおり、条例では、「全ての人々の文化芸術を創造し、享受する権利を尊重する」ことを基本理念として定めております。区では、条例に基づき、この文化芸術振興のための理念や施策を、総合的かつ計画的に推進するために、第一次及び第二次文化芸術プランを策定いたしました。プランでは、条例に定める「保存し伝える」「創る」そして「育てる」の3つの重点目標のもとに8つのプロジェクトを盛り込んで事業を推進してまいりました。「保存し伝える」では、(仮称)日比谷図書館・文化ミュージアムなどに、「創る」では文化芸術の秋フェスティバルやシーズンコンサートなどに、「育てる」ではアーティスト・イン・レジデンスやエイブルアートなどにそれぞれ取り組んでまいりました。これら重点プロジェクトを推進することにより、子どもからお年寄りまで多くの皆様に文化芸術に親しむ機会を提供することができたものと考えております。
特に、次代を担う子どもたちに対しましては、幅広く文化芸術を鑑賞し、将来の文化芸術の担い手となっていただけるよう、この重点目標「育てる」におきまして、各種事業を展開してまいりました。具体的には、アーティスト・イン・スクールや、ちよだアートスクエアプロジェクトにより創設いたしましたアーツ千代田3331における子ども向けの文化芸術活動、千代田芸術祭における区立小学校児童の作品展示などにより、子どもたちが文化芸術に親しめる場を充実させてまいりました。
次に、子ども向け文化芸術活動の一体的案内、そして、各実施団体が一堂に会しての協議についてであります。
今年度は、第二次文化芸術プランの最終年度に当たりますことから、これまでの成果を踏まえ、今後の取り組みを一層着実なものとしていくため、現在、第三次のプラン策定に向け、有識者・文化芸術関係者・区民代表などによる検討会議を立ち上げ、検討を行っているところであります。検討会議におきましても、文化芸術振興に当たっては、人材の育成や情報発信、推進体制が重要との意見をいただいております。第三次文化芸術プランの中で、「情報発信と交流」を重要な施策として位置づけ、区内の関係機関の連携強化が図れるよう努めてまいります。
次に、子ども向け文化芸術活動をできる限り地域の身近な児童館で行うことについてであります。
文化芸術振興の観点からの児童館自主事業の充実、そして、他の実施主体における児童館へのアウトリーチ事業の充実を図る中で、お尋ねの趣旨を実現してまいりたいと存じます。