top of page

平成13年第2回定例会

​区の文化政策について

〈質問通告〉

区の文化政策について

  • 「教育と文化のま千代田区宣言」に対する区長の所見と文化に対する理念、基本方針は

  • 文化担当部局の新設を

  • 支援のあり方

  • 文化振興条例等制定すべきでは

  • 文化庁新規事業に対する区の取り組みについて

  • 図書館政策について



〈質問と答弁の全文〉

 平成13年度第2回定例会に当たり、公明党区議団の一員として一般質問させていただきます。
 質問に先立ち、6月8日に国立大阪教育大学附属池田小学校で起きた事件は大変に痛ましく、被害に遭われた児童の皆さん、またその父母の皆様の気持ちを考えたとき想像を絶するものがあります。今回、ここに亡くなられた方々のご冥福を心からお祈り申し上げるとともに、被害に遭われた児童の皆さん、教職員の皆様方に対して心からお見舞いを申し上げます。
 このたび私は文化政策について調査しようと、事務局を通して2つの自治体に“1つは図書館ですが”行くことができました。また、区内外の芸術文化の団体、サークルの方々にも数多くお会いできました。その1件1件すべてが大変参考になり勉強になりました。特に障害者の方々に絵画を通して表現する楽しさを教えている団体の方が、「健康な人以上に感性が豊かなんですよ。表現がすばらしい。また表現することに何よりも本人が喜んでいること、それが一番です」。そう話されていたのが強く印象に残っています。これらの調査を参考にし、文化政策について質問させていただきます。

 私ども公明党は、結党以来、人間主義を掲げながら、平和、教育、文化を中心の国民のための政治を推進してまいりました。今月14日には芸術文化振興基本法案を保守党と共同提出しましたが、総合的な芸術文化振興のために政党が提出したのは今回が初めてということです。この法案の基本理念は、芸術文化活動の自主性尊重、国民の幅広い参加、多様な芸術文化の保護と発展、芸術文化活動水準の向上を掲げています。そして国と地方公共団体がそのための施策を立案し、実行する責務を明確にしています。
 今まで文化についての基本法はありませんでした。文化政策ほど各自治体によって格差が出てくるものはありません。文化の重要性は国連の毎年定める国際年にあらわれています。昨年のミレニアム年を「平和と文化のための国際年」と定め、今年2001年から2010年を「平和の文化と世界の子どもたちのための非暴力の国際10年」と設定されました。これは冷戦が終結した1989年からの10年間で紛争や分離独立など劇的な変化を経験した国家は50に及び、紛争による死者は400万人に上ると言われています。特に近年は紛争における民間人の犠牲者の割合は9割に達し、その半数が何と子どもたちであるとのことです。この現状に対し国連は、「平和の文化と子どもたちのための非暴力のための国際10年」と定めたのです。
 ミサイルによる防衛論議が盛んですが、国連では文化による平和を、また非暴力による平和を呼びかけています。文化について真剣に考えるときが、まさに今であると思います。文化とは何か広辞苑を開いてみると、「人間の生活様式全般」とあります。また、自治体文化行政には市民一人一人が文化的存在であるという理念があるそうです。つまり、文化とは人間そのものを指し、文化の創造とは人間の内なる創造性の発露ということになります。今、国連を始め社会で文化の重要性が叫ばれているのも理解できます。
 さて、千代田区では2つの宣言があります。1つは、59年3月に発表されました「教育と文化のまち千代田区宣言」、そして平成7年3月には「国際平和都市千代田区宣言」を発表しました。自治体として平和、教育、文化を宣言としてあらわしていることは大いに自慢であり、誇りでもあります。
 そこで、最初に区長に、この5つの理念であらわされています「教育と文化のまち千代田区宣言」に対する所見と区長の文化に対する理念、基本方針をお伺いします。

 さて、現在文化の所管窓口は教育委員会生涯学習課であります。生涯学習は区民の多様な学習需要に応え、人と人とのつながりや学習活動の広がりを視点に置いて、国、都、民間学習機関、企業と連携し、区民の学習活動を支援しています。今後とも生涯学習は高齢化時代の到来と余暇時間の増大と相まって、ますますその重要性は高まるでしょう。しかし、先ほどの例のように、最近の社会の変化とともに、文化は教育だけでなく福祉にもまちづくりにも地域振興にもすべての分野に密接にかかわってきています。急速なグローバル化、IT革命、高齢化の進展は文化政策についても変える要因となっています。そこで文化の創造、発信を自治体として総合的かつ主体的に執行できる新たな文化担当セクションが必要になってきていると思います。区長は、第1回定例会の招集あいさつの中で、「21世紀はまさに変革の時代であり、蔓延する閉塞感から脱却するためには、これまでのシステムや考え方にとらわれていては対応できません。例えば、役所の前例踏襲主義や縦割りによるばらばらなサービスの提供など、これまでのからを脱ぎ捨て、新しいものには挑戦するという気概を持って区政は運営されるべきである」と述べられました。まさにこれからの総合的な文化政策は縦割りでは執行できません。新しい文化担当セクション新設の考えはないのかお伺いします。

 次に支援のあり方であります。
 現在、区では文化に対する予算は全体の何%に当たるのでしょうか。よく比較されるのが直接支援型のフランスと民間の寄附金を活用しての間接支援型のアメリカ、それぞれと比べてどうかという見方です。フランスでは昨年度においてですが、157億フランで、国の予算のうち約1%が充てられています。日本は0.1%ですので、フランスの10分の1でしかありません。また、アメリカとの比較ですが、文化芸術関係の寄附金は1兆1,300億円と日本の215億円の何と52倍に当たります。この寄附金については、特定公益増進法人を通さないと不利になることから、税制上も改革をしないといつまでもアメリカには追いつけません。
 千代田区内には大手企業の本社が数多く存在するのも特徴です。民間による芸術文化団体への支援は個人、企業から特定公益増進法人である企業メセナ協議会に寄附がされ、メセナ協議会がその芸術文化団体へ助成するというものです。メセナとはフランス語で芸術文化の保護支援を意味するそうです。企業メセナ活動は、景気の好不況に関係なく、件数、金額は維持されています。メセナ白書によりますと、上場企業全体で少なくとも1割以上が社会貢献を目的にメセナ活動を行っています。IT化、市場化が物すごいスピードで進み、効率性、生産性が叫ばれる中、こうした文化を通しての社会貢献もわずかであっても年々伸びていることは大変うれしいことであります。その実施しているある企業の広報部で、「知性(カルチャー)と感性(アート)を融合した文化の受発信拠点を目指します」とコメントが出ていました。まことに核心を突いた言葉で、千代田区がそのまま言っても当てはまると思います。
 先日14日の衆院予算委員会において、小泉首相は文化芸術に対する支援の必要性を述べていました。文化芸術振興策を問われた際に、音楽好きの首相らしく「独断が許されるならば」と前置きしましたが、「ワーグナーに見入られたルートウィヒ2世は国家財政を破綻させるくらいのめり込んだ。批判もされたが国民に敬愛されている」。また、19世紀のバイエルン国王を例に「いいものは援助する人がいないと残らない。民間活力の足りないところは国の支援が大事だ。文化芸術は人間生活に大きな影響を与える」と述べられていました。まことに力強い言葉で、これくらいの気概があれば、日本が世界をリードして平和のための文化を発信できると思います。
 効率性、生産性から創造性で価値を判断し、積極的に支援できる千代田区でありたいものです。区からの直接支援、民間と連携しての間接型支援など、行政としての支援領域、方法をお伺いします。

 次に、千代田区の特殊性を踏まえた文化政策について質問します。
 文化という面からは千代田区は他の自治体にはない特殊性、特性があります。昨日の区長のあいさつの中でも述べられましたが、江戸時代以来の歴史的遺産、伝統文化を始め、多くの有形無形の文化資源が存在するということです。これらは文化そのものを創造する源となるだけでなく、新たな文化資源を創出し、産業振興や都市の活力や生活を豊かにする資源となるものです。何といってもこの400年の間日本の中心であったこともあり、教育、文学、国際交流の歴史など、様々な遺産があります。こうした多くの有形無形の遺産に多くの子どもたちが触れることにより、個性、独創性、そして創造性も啓発されることではないでしょうか。そして、これらの区の特性を踏まえたとき、区独自の文化振興条例を制定し、政策としてしっかり文化の創造と発信が行えるようにすべきと考えますが、いかがでしょうか。

 さて、13年度文化庁の予算は、前年度比124%増の909億となりました。その中で最も伸び率が高かったのが地域文化の振興であります。昨年わずか10億だったものが約9倍の88億となったのです。箱もののハードから中身のソフト中心へ大きく方針も変わってきた結果だと思います。8つの事業のうち6つまでが新規事業となっていますが、2つは都道府県事業で4つが区市町村の実施事業となっています。この4つは地域芸術文化活性化事業、また公立文化会館活性化事業、そして学校の文化活動活性化事業、最後にふるさと文化再興事業であります。現在区で考えられている具体的取り組みについてその内容をお伺いします。

 最後に図書館政策についてお伺いします。
 図書館事業に関する法律も、文化同様国にはなく、よって運営はすべて各自治体に任されています。ある市の図書館に訪問したところ、私の図書館に対するイメージは全く変わりました。同じ図書館でも建物の立派さがどうということではなく、そのサービスが自治体ごと200倍から300倍開きがあると聞きました。その話をしてくれた図書館長は、「図書館は本の管理だけをするところではない。本来の役目は市民の誰もが求めれば公平に情報が得られる環境を整備し、地域における情報提供の拠点となることである。その役目をきちんと果たすことは、自己責任を市民に求められる地方分権の時代にあり当然の責務です。できるだけ多くの方々に利用される情報提供拠点となるための政策が必要です」と熱く館長は語ってくれました。私も全く同感であります。情報提供の主たる業務はレファレンス、つまりカウンターでの問い合わせ、参考、調査研究の援助ですが、その方が何を求めてきているのか、そのことに対し的確にアドバイス、相談に乗れることです。情報化の時代になり、住民の図書館に対するニーズは高まっています。昨年の区民世論調査のアンケートによれば、近くにあれば良い区の施設として図書館を挙げている比率があります。平成7年は127%でしたが、昨年には182%まで上昇してきています。区においても、区民を始め通勤者を含む多くの方々への情報提供が十分なされているか、レファレンス中心の各サービスにつき一度総点検し、さらなる機能充実に努めるべきであります。レファレンスの現状と司書の配置も含めた今後の図書館政策をお伺いします。

 以上、図書館を含む文化政策について質問しました。千代田区から人間の創造性の発露たる文化の創造と平和のための文化を世界に発信できるよう、区長並びに教育長、関係理事者の前向きな答弁を期待し、私の質問を終わります。(拍手)


〈区長答弁〉

 大串議員のご質問にお答えいたします。
 まず、「教育と文化のまち千代田区宣言」に対する所見でございます。
 「教育と文化のまち千代田区宣言」は、千代田区は首都東京の中心に位置し、長い歴史と伝統に培われた世界に誇り得る文化的環境と近代教育発祥の地としてのすぐれた教育環境を有しておりまして、このような環境にある千代田区をさらに発展させ、日本の中心にふさわしい地方自治体として築き上げていくために区民の心のよりどころとして、また千代田区政運営の柱として、昭和59年3月15日の区制記念日に宣言されたものというふうに考えております。  また、この宣言は、長期総合計画を補完、充実するものとして位置付けられ、さらにゆとりある創造的な生活を送るための心の糧となり、千代田区に生活する人、働く人、学ぶ人すべての連帯のきずなともなるものとされております。
 宣言から17年を経過した今日でも、宣言に述べられている理念はいささかも色あせておらず、千代田区から発信した時代を超えたメッセージだと認識しております。
 文化に対する理念、基本方針についてでございます。
 宣言文の中でも述べられておりますように、文化とは区民の皆さんがつくるまちそのものであり、生活そのものであります。まちづくりの主人公は区民の皆さんであり、長い歴史と伝統の培われた千代田区の文化がその基盤をなすものであります。お話のように、21世紀は変革の時代というふうに言われております。私は日本の首都東京の顔であり、また自主、自立した自治体として江戸開府400年記念事業を契機に、この400年の千代田区の歴史や文化を顧み、そして常に日本の中心として文化創造の発祥地であるこの千代田区から、21世紀に向けて個性ある文化を創造、発展していくために、この江戸開府400年記念事業を展開してまいりたいというふうに思っております。
 文化担当部局についてでありますが、まさに21世紀は変革と創造の時代という中にあって、一教育部局でこの問題を扱っていくのはいかがかというふうに私自身考えておりまして、むしろもっと全庁的な観点から文化行政を取り扱うべきだということで、これも長期計画、そうした中での大きな課題だというふうに思っております。
 文化振興に関する条例につきましても、まさに日本東京の400年にわたるこの千代田区が文化芸術の発祥の、あるいは発信の中核であったということを考えますと、こうした条例化をも含めて、文化政策全般についてきちっと整理をしていきたいというふうに思っております。
 図書館の関係につきましては、私はこの千代田区には私立の大学、高等学校も含め、多様なそうした施設がありますから、いかにそれを区民の皆様方に使えるようにネットワークを組んでいくか、あるいはこの千代田区には古書店という歴史的伝統のあるそうしたまちもありますから、そういうことを考えますと、図書というものについて、図書館というものについて全体的に開かれたそうしたあり方を、単に区の施設だけではなくて、私は全般的に考えていくべきだろうというふうに思っておりまして、これは教育委員会にぜひそうしたことを検討していただきたいということをしつこいほど申し上げてきております。
 その他の事項につきましては、関係理事者をもって答弁をいたさせます。     

〈教育委員会事務局次長答弁〉

 大串議員の自治体での文化行政のあり方についてのご質問にお答えいたします。
 まず、地域文化の振興に対する具体的支援のあり方についてですが、文化は地域に住み、働き、集う人々が自発的にまたは自立的に担い発展させていくものであると考えております。文化は行政の手で創造していくというよりは、むしろ地域の人々が生活し、活動することによって創造されるものです。そして千代田区は首都として長い歴史と伝統を築き、次世代に残る文化を創造してきました。したがいまして、地域文化育成のために行政は場の提供や情報の収集、提供などを行いながら、区民自身の中から生まれた地域文化の情勢を側面から支援していく役割を果たすべきと考えております。
 次に、文化庁新規事業に対する区の取り組みについてでございますが、当事業は文化庁の重点施策である「芸術文化・伝統文化による地域活性化」のための事業で、地域における文化的な環境の確保と地域に根差した魅力と個性ある多様な文化を振興するために、今年度から新たな事業も加え実施されているものでございます。教育委員会といたしましては、区内の文化団体等にこれらの事業を周知したところですが、今後これらの事業を千代田区の地域特性に合った文化行政に生かしていく方策を検討してまいりたいと考えております。
 次に図書館政策についてのご質問に区長答弁を補足してお答えいたします。
 高度情報化の進展に伴い、利用者が求める情報をリアルタイムで提供するなど、生涯学習の情報発信基地としての役割は今日図書館に求められているものと認識しております。そこで、レファレンスの現状と司書の配置についてでございますが、平成12年度レファレンス業務といたしましては、所蔵検索が年間1,885件、調査研究が年間350件あり、これらについて平成11年度から配置している司書資格を有する専門員と職員が対応しているところでございます。今後とも専門員の効果的な活用、職員の専門性を高めて、単に図書を利用するだけでなくレファレンスの充実に努めてまいりたいと考えております。
 それから、先ほど区長が言いましたように、各大学図書館等の連携についても研究し、それを広めていきたいというふうに思っております。

bottom of page