真心の伝わる政治を!
大串 ひろやす
〈質問通告〉
■信頼と支え合いの社会を目指して!
◆平成22年度予算(今年度)より「地域コミュニティを強化しながら、希望と明るい展望が持てる千代田区を目指す」という区の大きな方針が示され、新たにコミュニティ担当課も設置された。そこで、
-
区として、地域コミュニティ振興のための指針を策定してはどうか。
-
平成23年度予算においても、地域の支え合いと連帯の構築を最優先にし、体系的、計画的に取り組むべきと考えるがどうか。
-
具体策として、①ビブリオバトルの開催を提案、②救急医療情報キットを活用した災害対策(要援護者避難支援情報の作成)を提案する。
〈質問と答弁の全文〉
平成23年第1回定例会にあたり公明党議員団を代表して質問を行います。
さらなる「信頼と支え合い(連帯)の地域社会」を目指して、行政のなすべきことは何かについて、23年度予算(案)を中心に質問するものです。
昨年の12月9日の朝日新聞夕刊のコラム「窓」は「孤独の群像」というタイトルで書かれていました。
「東日本国際大学で社会福祉を教える菅野道生さんから、興味深い報告書を送っていただいた。東京都葛飾区のひとり暮らしの高齢者千人の生活実態と、当事者の意識を調べたものだ。『近所の人にゴミ出しや家事の手伝いを頼むことに抵抗を感じますか』との質問に、半数以上が『やや』『非常に感じる』と答えた。その理由に81%が『人に迷惑をかけたくないから』を挙げた。ハッとさせられたのは、困っている人ほど手をさしのべられることに後ろ向きだった、という調査結果だ。健康状態を自分で『弱い』と感じる人ほど、また、経済状況について『苦しい』と答えた人ほど、近所の人からの支援には抵抗感があるという割合が高かった。『自立』支援を建前にした福祉制度からこぼれ落ちる人々を、地域のつながりで支えようというのが、最近の政策の流れだ。だが、団地で交流サロンを開いても出てこない、民生委員が訪ねても『困っていません』という住人にどう接したらよいか。現場で活動する人たちが直面する課題だと菅野さんは指摘する。誰にも気づかれない、誰も助けられない死、虐待、引きこもり。様々な孤立の根には、『他人に迷惑をかけたくない』『迷惑をかけてはいけない』という、かつて美徳とされた社会規範が横たわっているのではないか。この国の、交わらぬまま凍りつくような群像が浮かび上がる。」と、いう内容です。
「交わらぬまま凍りつくような群像」という文言は印象に残ります。しかし、ちょっと待てよ、別の見方もできるとも思いました。それは順番が逆なのではということです。行政の福祉制度でこぼれおちた人を地域で支えようというのではなく、まずは地域の共同体で支えるのであって、どうしても地域で支えきれない人をセーフティネットとしての行政が救うのではないかと。また「迷惑をかけたくない」という社会規範が問題なのではなく、誰か一人でもいい、その人とつながっていて相談ができるような支え合いの地域また共同体がないことが問題ではなにかと。いずれにしても「交わらぬまま凍りつくような群像」という社会にならぬよう皆で考え行動していかねばなりません。
公明党は昨年の12月、「『孤立』から『支え合い』の社会を目指して」と題した「新しい福祉社会ビジョン」(中間取りまとめ)を発表いたしました。(現物を提示)これは、国民に税の論議を求めるのであれば、社会保障のあるべき姿をまずは論議するのが道理であり、党としての考え方を広く国民に示したものであります。ソーシャルインクルージョン、いわゆる社会的包摂を全体の基本にしていることや社会保障と雇用を一体のものとした生活保障という視点を取り入れるなど、あくまで国民の目線から旧来の社会構造を大胆に見直すことを提案しています。このビジョンをたたき台に社会のあり方と「社会保障及び税」をセットにした見直しへの国民的な議論が進むことを期待するものです。
さて、区の平成22年度予算編成では、今年度ですが、その目標を「地域のコミュニティを強化しながら、希望と明るい展望が持てる千代田区を目指すことを目標としています」と明言されています。また組織的にはコミュニティ担当課を新たに設置しました。敢えて「地域のコミュニティを強化しながら」とされたことに意味があると思います。このことは地域や共同体の空洞化という問題に「信頼と支えあいの地域社会」を築いていくとの区の決意を表明したものであり、また単年度で終わるということではなく本年度をスタートとし、今後も区の施策を展開する上での変わらぬ方針であると私は理解しましたが、よろしいでしょうか。質問というより確認となりますが、この点、区長に、「地域のコミュニティを強化しながら希望と明るい展望の持てる千代田区を目指す」と明言された真意は何か、お伺いいたします。
最初の質問は、地域コミュニティ振興のための指針策定と担当課の役割についてであります。
先にお断りしておきますが、引用など「共同体」と「地域コミュニティ」という文言が出てきますが、特に使い分けはなく同じ意味ですのでよろしくお願いします。
今の日本社会は、先ほどのコラムもそうですが、「孤立社会」または「無縁社会」とも表現され、地域の空洞化や共同体の空洞化が大きな課題となっています。
今、最も注目されている首都大学東京教授で社会学者の宮台真司氏はこの共同体の空洞化について昨年の11月、「現場からの医療改革推進会議」における講演で以下のように述べています。
「日本では共同体を全部、行政組織で置き換える。例えば明治5年、学生改革以降の小学校の学区がそうですよね。要は村人たちは村人であって国民じゃないんですね。国民として再編するために、学区、町内会、自治会、隣組、こうした中間集団を統治の手足として使うことによって各人を把握しコントロールすることをやってきた。もう一つ、置き換えの動きがある。日本では大正後期以降大企業を中心に順次、とりわけ戦後は労働組合運動で、ある程度小さな企業も含めて、企業が共同体となっていくわけです。(本来あった)共同体がなくなって、行政組織の擬似共同体が残る。共同体がなくなって企業組織という擬似共同体が残る。しかし、両方ともシチュエーションが変わると藻屑と消えるんですね。しかもこういう伝統があるので、共同体が国家の抵抗拠点となる、ある種のエートス(行動規範)という構えが全くないんです」と。きわめて重要な指摘であります。
ややもすると、今も意識せずに町会などの共同体を行政組織の一部であるかのような、結果としての「置き換え」になっていないか、行政も町会もお互い注意が必要です。逆の場合もいえます。それは地域の行政への過度な依存です。これもコミュニティの形成や共同体の自立にはつながらないということです。
これらのことを考えると「地域のコミュニティを強化しながら」というときに、まずは共同体と行政の関係はどうあるべきかを明確にしておいた方がよいと思います。宮台氏は、さらに、「ヨーロッパとアメリカには、一見形は違うんだけれども機能的には同じ、同様な(イクイバレント)システムがあります。それは簡単に言うと自分達にできることは自分達でやる、それがどうしても難しい場合に行政を呼び出す。しかし、できるだけ低いレイヤー(層)(lower layer)から呼び出すんだよということです。欧州の場合それを補完性の原則というふうに言います。補完性、難しい言葉ですね。要は、行政は社会の補完物に過ぎない。主は社会で、つまりメインは社会でサブは行政だよということで」す、と述べられています。また、「共同体としての自己決定が重要である」ことも述べられました。つまり、自分達にできることは自分達で行うという住民自治の原則、そしてどうしても難しいときは身近な行政から呼び出すという補完性の原則をいっています。補完性の原則とは住民に身近な区がまず優先され都、そして国へという政府間の優先順位の原則であると理解していましたが、それはせまい意味での補完性の原則でした。本来の意味は、行政の前に地域社会があり、その社会(共同体)が主であり、区と都と国という行政はそれを補完する立場にあるから補完性の原則なのだということです。
以上の共同体と行政との関係のあり方や原則を「指針」として策定し、「地域コミュニティの強化」または「共同体の自立」へ向けて一緒になって考え行動していくことが必要ではないかと思います。いわゆるコミュニティ振興のための指針の策定です。
引用が多くなって恐縮ですが、八戸大学教授の前山総一郎氏は、この指針について、功述べています。「今後の地域コミュニティの姿(地域の将来像)、意見形成の仕組み、そして行政との関係の在り様はどのようにあるべきかを定めるものである」と。具体的な項目については以下のように提案しています。
1.はじめに
(1)指針策定の背景と目的
(2)用語の意味
2.地域コミュニティ振興の意義と必要性
(1)住民主体のまちづくり
(2)行政依存からの脱却
(3)地域と行政との協働
3.地域活動の推進
(1)住民の役割
(2)町会
(3)市の役割と地域との関係の見直し
(4)市民活動団体との連携
4.地域力の向上をめざして
(1)地域情報の共有
(2)意識改革「地域は自らの手で作る」
(3)まちづくりの担い手の育成
5.コミュニティ自治の推進
(1)新たな地域コミュニティ自治組織の創設へ
(2)コーディネーターの設置と育成
6.地域コミュニティの振興に向けて
(1)地域コミュニティ計画の策定
(2)将来の展望
(3)地域コミュニティ担当窓口の一本化
(「コミュニティ自治の理論と実践」前山総一郎著P.260より)
以上のような項目となっています。宮台氏のいう住民自治と補完性の原則もきちんと入っています。
千代田区らしい、千代田区ならではの振興指針策定に向けて、あくまで区民と行政が一緒になって知恵を出し合い作業することが重要です。
区長は、今回の招集挨拶では「住民自治」という言葉を5回も使って述べられました。「住民自治」の実現に向けての並々ならぬ決意の表れであると思います。そこで、区長に仮称ですが「千代田区地域コミュニティ振興指針」の策定についてご所見をお伺いします。
今年度より新たに「コミュニティ担当課」が設置されたわけですが、きわめて重要なセクションであると認識しています。これまでもコミュニティ担当は区民生活部の区民商工課(今の区民生活課)が担っていましたが、あえて今年度専門の担当課を新設したことにはそれなりの役割を期待してのものだと思います。コミュニティといったときにその概念はあまりにも広く、担当課の役割を明確にしないと返って混乱を招いてしまいます。そこで、担当課を設置した目的、担当課の役割とは何か、お伺いいたします。
次に、平成23年度予算案の中での「地域の支え合いと連帯の構築」に関わる事業についてであります。
今回から、新年度の予算について案の段階から広く区民に示されるようになりました。区のホームページは勿論、区政情報コーナー、図書館そして各出張所のカウンターでも閲覧ができるようになりました。このことにより私たち議会も区民から幅広い意見をいただき予算審議に望むことができます。大変よいことだと思いましたので最初にご紹介させていただきました。
平成23年度予算案について、二つの視点から質問させていただきます。
一つ目は、昨年の第4回定例会で質問させていただきましたが、共育マスタープランに示されました方針に書かれていたものです。それは、共に育つ「共育」という理念の実現に地域の様々な主体が取り組むことがすなわち地域の連帯や地域社会の共同性の回復にもつながるという視点です。
このような視点は、区の防災対策基本条例の理念「協助」にもいえると思います。「協助」とは、すなわち災害時に千代田区に住み働くすべての人々が相互に助け合い、支え合うことを意味します。そして自助、協助、公助が補完し合い連携するということが条例の理念となっています。この理念の実現に、日ごろの訓練や避難所運営に地域の様々な主体が参加することによって地域の連帯は築かれていくと思います。また、文化芸術基本条例に関しての「文化権」についても同じことがいえそうです。さらに福祉の分野でも千代田区型の「地域包括ケア」も発表されればおそらく同じことが言えると思います。いずれも千代田区らしい千代田区だからこその理念であり、もっといえば地域の理念といってもよいと思います。
町会を核とした地域を構成する様々な主体、NPOやボランティア団体、大学、企業などが、今申し上げた千代田区らしい理念の実現に取り組むことによって地域の支え合いや連帯の構築に、また「地域のコミュニティ強化」につながるものと思います。
この視点から、平成23年度の事業について地域のコミュニティ強化につながる事業を体系的に捉え、計画的に推進してはどうでしょうか。
あと一つの視点は、実際に地域において直接「支え合いの活動」をされている町会の福祉部を始めボランティア団体やNPO団体の皆様から出てくる「現場からの視点」です。
現場で活動しているからこそ、その必要性がわかります。行政としてはすぐ現場へ急行し、どうすればその要望を叶えることができるのかを検討し、応えてあげねばなりません。例えば、配食ボランティアの団体から調理室の調理台が古くて使えないという「現場からの要望」があればすぐ現場に行き確認をします。同じようの事例が他の地域でもないのか総点検をし必要な予算を計上するということになります。優先順位の一番にするのもそれが高齢者の見守りなど地域の自発的な支え合い活動だからです。
以上、二つの視点から述べさせていただきました。「地域コミュニティを強化しながら」の2年目になるわけです。「支え合いと連帯の構築」に関し、この二つの視点から、区の事業を体系的に捉え、計画的に推進してはどうでしょうか。ご所見をお伺いいたします。
次に、コミュニティ強化のための具体策についてであります。
おそらく具体策としての第一と第二は、「地域コミュニティ会議の設置」と「地域コミュニティ計画の策定」だろうと思います。地域の様々な主体が参加でき、共同体としての自己決定ができる会議体を設けること、社会が主で行政が補完する立場である以上、地域として目指すべき展望計画としての「地域コミュニティ計画」があった方がわかりやすいということです。この二つそれぞれ、平成20年の第二回、同じく第3回定例会にて、答弁はともかく提案させていただいております。繰り返しとなりますので今回は省略させていただきます。
今回、具体策としては①読書活動の推進と②救急医療情報キットを活用した災害対策の2点であります。
最初に、読書活動の推進についてです。
最近のメディアの発達には目をみはるものがあります。機器の発達と情報量の増大というハード、ソフト合わせた急速な進展です。そのことによるプラス面も勿論ありますが、負の部分も考えていかねばなりません。
「『無縁』とはコミュニケーション不全ということでもあります。『無縁社会』とはコミュニケーションの最強、最良の武器であった言葉が十全に働かず、機能不全に陥った社会にほかなりません。その背景には厳しい経済状況や核家族化など多くの問題が潜んでいますが、そこに、情報化社会の急速な進展があることも否定できません。いわゆる情報化の負の側面ですが、情報量の増大とは裏腹の言葉の空洞化」(SGI提言より)や活字文化の空洞化を招いているということです。商業主義のマスメディア、視聴率偏重のテレビ番組など子どもや若者への影響を考えると深刻なものがあります。
若者の活字離れに警鐘を鳴らしているのは東京都副知事の猪瀬氏です。猪瀬氏が音頭をとって都で進めているものに「言葉の力、再生プロジェクト」があります。昨年の4月よりスタートしました。猪瀬氏は「活字を読まないことによって、自分の周囲のことしか関心がもてなくなってしまう。本を読むことは、他人とのコミュニケーションのはじまりなのだ。今の若者は、ツイッターやブログなどの表現活動に参加するのはいいが、仲間内のコミュニケーションに終始するあまり、その閉鎖的な情報だけで満足してそれ以上の知識を求めようとしない」(潮2011年3月号より)と述べています。プロジェクトでは「誰もが本を読める環境の整備」として「ブックスタート」の推進や「ブックリボン運動」(家庭で不要になった本を集め児童養護施設などに寄贈する運動)、また新たな読書推進の試行ということで「ビブリオバトル(知的書評合戦)」を取り上げています。きわめて共感のもてるプロジェクトだと思います。
私も、情報化の負の側面から子どもや若者を守る唯一の手段として、読書活動の推進とメディアリテラシー教育が必要であると考えています。ブックスタートは平成14年の第4回定例会にて提案し、翌年、「ハローブック」として開始、平成20年今のブックスタートとして実施されるようになりました。この読み聞かせですが、子どもの「心の脳」といわれる脳幹を包む辺縁系を刺激することで極めて有益であると証明されています。
さて、新たな読書推進策としての「ビブリオバトル」というゲームとは、どいうものかということですが、人数は5人くらいがよいそうです。各人が好きな本を持ち寄り5分以内で自分の言葉でその本の面白さを紹介し、その後、2分から3分のディスカッションを行います。全員が好きな本のアピールを終えた後、どの本が一番読みたいかを参加者が投票によって決めチャンピオンを決めるゲームです。猪瀬氏も「本を用いて人と人をつなげ、しかもいい本に出合える。またプレゼン能力もつきます」と絶賛します。まさに一石三鳥くらいのすぐれものといえます。タイマーさえあればどこでも子どもから大人まで誰でも参加でき開催できます。図書館の読書振興センター主催で行ってもよいし、小学校で行っても、地域が行ってもよいと思います。区として大会を企画しても面白いと思います。(今、もし私がビブリオに参加したとすれば、小室直樹氏の「憲法原論」を絶対の推奨としてアピールしたいと思います)
子どもがビブリオバトルに参加しその結果をお母さん、お父さんに「この本を紹介したんだ」と報告すれば、きっとびっくりされるでしょう。
本の街神田を擁する千代田区として、新たな読書推進策としてこの「ビブリオバトル」を積極的に取り上げてはどうでしょうか。ご所見をお伺いいたします。
具体策としての2点目は、救急医療情報キットを活用した災害対策についてであります。
今年度からスタートした救急医療情報キットは先月末までに約870人の方々が希望され配布を受けられたそうです。そして二人の高齢者の方がこのキットのおかげで的確な措置とスピーディな搬送ができたとも聞きました。キットのおかげで大事にいたらなかったこと誠に嬉しいニュースであります。
このプライバシーも守れていざというときに役に立つ救急医療情報キットですが、いざ災害時にも威力を発揮することはいうまでもありません。要援護者の非難支援情報をキットの中に入れておくのです。
記載内容は、例えば
-
避難所
-
氏名、住所、電話、生年月日
-
緊急連絡先
-
住居建物の構造
-
特記事項(肢体不自由な状況、認知症の有無、必要な支援など)
-
緊急通報システムの(あり・なし)
-
避難支援者
など記載します。
いざ災害時に、駆けつけてきてくれた人(避難支援者)にただちに知ってもらいたい自分の情報を記載しキットの中にいれておきます。不安からプライバシーを外に出したがらない高齢者が多いのも事実です。キットなら大丈夫です。いざという時だけ自分の知ってもらいたい情報を伝えることができるからです。
救急医療情報キットを手段として、顔と顔を合わせながら介護保険のケアプランのように災害時のいわば個人プランを作成しキットの中に入れていく。この積み重ねが地域の支え合いに、また高齢者の見守りにつながっていくことと思います。まさに支え合いのバトンです。キットに何かいい愛称をつければさらに普及すること間違いなしです。
要援護者の避難支援情報を作成しキットに入れる等のキットを活用した災害対策を考えてはどうでしょうか。ご所見をお伺いします。
以上、信頼と支え合い(連帯)の地域社会を目指して3点質問を行いました。
区長ならびに関係理事者の前向きな答弁を期待し代表質問を終わります。
ありがとうございました。
〈区長答弁〉
大串議員の地域コミュニティ振興指針に関するご質問にお答えいたします。
まず、コミュニティについて申し上げますと、「コミュニティ」を定義するのはなかなか難しいものがあります。というのも、その概念は人によって受けとめが多様であるからであります。私なりに理解しているところを申し上げますと、一般に言われているコミュニティは、地域性と空間性、そしてそれを支える共同体意識であろうと思います。すなわち、共同体意識とは、そこにともに生き、ともに生活するという考え方だろうと思います。そして、一人ひとりの共同体意識が、あるいはコミュニティが、あるときは政策提案型、あるときには地域の課題解決などとして、さまざまな行動をとるものと思っております。例えば、課題解決型という点で具体に申し上げますと、例えば防犯パトロールですとか、美化活動ですとか、互助、お互いに支え、助け合う、あるいは親睦、こうしたことが共同体意識の中身になるんだろうと思います。そしてもう一つ肝要なことは、コミュニティは主体性・自主性を伴うものであり、まさに自治の原点であるとも考えております。
そこで、改めて、都心千代田にふさわしいコミュニティというものの考え方を、庁内で論議をしてまとめてまいりたいと思っております。
また、22年度予算編成において示しました「地域のコミュニティを強化しながら、希望と明るい展望を持てる千代田をめざす」という考え方は、本年度の予算でも同様の考え方を、各施策の中に入れているわけでございます。
なお、詳細及び他の事項については、関係理事者をもってご答弁をいたさせます。
〈区民生活部長答弁〉
大串議員の地域コミュニティに関するご質問、それからビブリオバトル開催の推奨についてお答え申し上げます。
まず、担当課設置の目的でございますが、コミュニティの推進という視点から、これまで行ってきた町会等への支援事業を初め、千代田学、NPO・ボランティアによる提案制度など、関連施策を一元的に所管することを目的に設置したものであります。具体的には、千代田学などの提案やマンション施策など、全庁にまたがる事業の推進において、関係各課との連絡調整を行い、円滑な事業執行を図る役割を担っております。
次に、地域の支え合いと連帯の構築の視点で、平成23年度予算を体系的にとらえ直してはどうかというご提案でございますが、ご指摘のとおり、地域では、子どもや高齢者の見守りを初め、さまざまな活動が行われております。区では、これまで出張所を中心に、地域活動への支援を通じて、地域の支え合いと連帯を推進してまいりました。こうした地域活動は、地域の特性や住民のニーズを踏まえ、地域自らの意思で計画し、実行するものであると考えます。区の支援方法も、行政の補完ではなく、地域における多様な活動に対し、柔軟に対応していくことが重要であると認識しております。
ご提案の施策の体系化・計画的な推進については、コミュニティの概念をまとめる中で、まず前提となりますので、それをまとめる中で、コミュニティの視点に基づく事業の体系化についても、あわせて議論をしてまいります。
次に、ビブリオバトルの開催の推奨についてお答えいたします。
ビブリオバトルは、聴衆が勝敗を決めるというゲーム感覚を取り入れた新しいスタイルの書評合戦であり、関西の大学を中心に広まり、最近メディアでも取り上げられていることを認識しております。限られた時間の中で、自らが推薦する本の魅力を、自らの言葉で伝える手法は、コミュニケーション能力の育成につながるものと考えております。読書活動を通じたコミュニケーション能力の育成については、区としてもその重要性を十分認識しており、図書館を中心にさまざまな事業を取り組んでまいりますので、今後もその事業を展開する中で、育成方法について検討してまいります。
〈環境安全部長答弁〉
大串議員のご質問のうち、救急医療情報キットを利用した災害対策についてのご質問にお答えいたします。
災害時要援護者対策については、区のみの対応には限界があり、地域の皆様のご協力が不可欠であります。このため、高齢者や障害者の方に、災害時要援護者名簿への登録をお願いし、区や消防などの行政機関だけでなく、町会長や民生委員等の方々とともに情報を共有し、平時から地域で見守りつつ、災害に備えているところでございます。
しかしながら、個人情報の取り扱いを伴うことから、名簿への登録をためらう方も少なくないのが現状でございます。ご提案のあった救急医療情報キットの災害時の利活用については、こうした個人情報取り扱いへの懸念を払拭し、潜在的に援護を希望する方々の掘り起こしに資するものと考えます。また、あらかじめ「避難支援者」を指定できる場合には、災害時にもだれかとつながっているといった安心感が生まれ、キットを介して新たなコミュニティが芽生える機会が創出されるものと思われます。さらに、災害時には地域外からの多数のボランティアを受け入れることが想定されますが、外部の方でも、個々の身体的な状況や避難所などがその場で把握でき、スムーズに要援護者への対応ができるなどのメリットも考えられます。ご指摘の点を踏まえ、福祉担当部署と緊密に連携をとりつつ、よりきめ細やかな災害時要援護者への支援に向けて、検討を進めてまいります。
〈再質問〉
13番大串ひろやすです。自席から再質問させていただきます。
まず、施策の体系的に、また計画的に取り組むという点なんですけども、今の答弁だと、庁内でまず「コミュニティ」の概念を整理してからということなんですけども、そんなに、僕、難しく考えてもらうと、ちょっとあれなんで、もっとラフに考えていただいて、そのコミュニティの強化しながらということなんですから、やってもらいたいんですよ。それがまとまらないと体系的には取り組めませんというんではなくて、例えば、私申し上げましたけれども、共育――ともにはぐくむ共育という理念に取り組む事業がこれなんだ、それから防災で言えば、その共助にかかわるこれはこうなんだということで、そういった地域の連帯につながる、そういった事業を体系化して進めたほうがよろしい。そういったものを区が示すことによって、それを見た区民の方、または町会、企業、ボランティアの方々は、それに参加してきますので、その中でそういった連帯ができるということでありますので、そういう体系の仕方はどうかと思います。
それから、コミュニティ担当課の役割なんですけれども、現在7名の方が担当課としていらっしゃるということなんですけれども、これこそ役割をきちんとしてあげないと、何のためのコミュニティ担当課なのかということになりますので、今までやっていた、そこの区民商工課、旧区民商工課でも、今、部長が言われた町会への補助、支援、それからNPO・ボランティア、政策提案制度まで含めて、それをやっていたんですよ。やっていたんだけれども、新たに課を設けて、そこに7名という人員までスタッフを置いたわけですよね。だから、その役割は何ですかと僕は――今までの課から変わったわけですから、それはきちんと示してあげたほうがよろしい。
僕の考えは、地域と行政とのまさにパイプ役であります。ですから、地域を代表する各出張所にそれぞれ担当者もいるかもしれませんけども、それと行政とのパイプ役を果たして、地域の皆様が自主的にそういう活動できるように、そのパイプ役を果たして――なかなか、連帯だ、支え合いだ、さあ、なんて言っても、なかなか地域はできませんので、その何かきっかけとなるものを、陰ながらというか、サポートしながら、そういう役割を果たしてあげるというのがいいかと思うんですよ。
その2点、よろしくお願いします。
〈区民生活部長答弁〉
大串議員の再質問にお答え申し上げます。
先ほど区長の答弁でも、まず、「コミュニティ」の概念について庁内でも整理をしてみたいというふうなことを申し上げました。コミュニティに関しては、それぞれお考えというのは千差万別なんだろうと。しかしながら、行政として、千代田区として、そのコミュニティという施策を推進していくには、庁内で、千代田区におけるコミュニティの概念というのはこういうものだと。そして、その行政で行う事業も、コミュニティというのはこういう施策の範囲の中だろうと、ある一定の守備範囲を決めてかからないと、なかなかその施策をまとめるにも、なかなかそこら辺が迷いが出るというふうな観点から、決して概念を、すべてを終了してから計画の議論に入るというわけじゃなくて、並行してはやっていくことは、もちろん当然のことでございますので、その辺についてはご理解いただきたいと思います。ただ、一定の行政としての役割は、ある程度、千代田区におけるコミュニティというのはこういうふうな概念だというふうなことは、ある程度整理をした上で進めてまいりたいというふうに思っております。
それから、担当の役割でございます。これは、大串議員ご指摘のとおり、地元と行政のパイプ役であることは、もう間違いございません。そのために、自主的な支援活動に、行政がさまざまな情報を提供し、自ら活動できるための支援を、経費だけではなくて、情報としても提供していくことが我々の役割だと思います。議員ご指摘の担当課の役割というのについては、改めて我々のほうも認識し、よりその考えを深めてまいりたいと考えます。