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平成22年第3回定例会

高齢者は未来を開く!

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〈質問通告〉

高齢者は未来を切り開く!地域ケアの構築を目指して!

  • 地域ケア構築について区長に基本的な考え方を問う。仮称「連携型千代田区地域ケア構想」を策定し広く区民に 示してはどうか

  • 医師会との連携・協力は必須だが、今後どう行っていくのか。

  • 生活圏域としての地域が設定され、区としては麹町と神田を設定したわけだが、それぞれの地域において地域ケア構築に際し、何ができていて何が不足しているのか。またその不足を補うための方策は何か。

  • 知症対策について

 

〈質問と答弁の全文〉

 平成22年第3回定例会にあたり公明党議員団を代表して質問を行います。
 先日、8月の30日、31日、9月1日にかけて生活福祉委員会で視察に行ってまいりました。視察の目的は、委員会として当面の重要課題となっている

  1. 介護従事者の待遇改善(京都市)

  2. あるべきミュウジアム機能(京都市)

  3. 地域包括ケアシステムの構築(尾道市)

  4. 地域スポーツクラブについて(神戸市)

の4点について先進自治体を訪問し調査することにあります。委員会では課題ごと事前に質問事項を整理し視察に臨みました。かなりハードな日程になりましたが、担当者との質疑応答や直接現場を見ながら説明を受けることができました。結果、委員全員が多くのことを学ぶことができ、貴重な成果を持ち帰ることができたとても有意義な委員会視察となりました。
 質問は、「地域包括ケアシステムの構築」について尾道市を訪問して得た成果をもとに、今後千代田区において地域ケア体制をどう確立していくのかを問うものです。
 最初におことわりしておきますが、今回の視察における担当者の説明や質疑応答のテープ起こしは残念ながら間にあいませんでした。よって、当日いただいた資料と私の記憶により今回の質問は作成しております。できるだけ私の独断や思い込みは避けたいと思いましたので、尾道市医師会長の片山壽氏の著書「父の背中の地域医療」(現物を提示)これは購入しました。公立みつぎ総合病院の医師であり事業管理者の山口昇氏の書かれた「尾道市御調町における地域包括ケアシステム」(現物を提示)こちらは当日配布された資料ですが、質問作成の参考にさせていただきました。二冊のとても良い資料を得ることができたと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、地域包括ケアシステムということでは、尾道市医師会が中心となっての尾道方式は全国でも大変有名であります。区としても「地域ケア体制の確立」を重要課題として位置付けている中、このタイミングで委員会として先進自治体としての尾道市を調査訪問できたことは大変意義があったとことと思います。また実際期待した以上の成果を得ることができました。改めて地域包括ケアシステム構築の必要性や連携の在り方など学ぶことができました。
 当日、尾道市よりいただいた資料に、月刊介護保険2009年5月号に掲載された片山壽氏のインタビュー記事がありました。タイトルは「地域医療中心の連携で“新・地域ケア”を構築」となっています。そこには地域ケアについて片山氏が述べていますのでまず引用させていただきます。なお、「新・地域ケア」も「地域包括ケアシステム」も同じ意味であり、特に使い分けはありません。
 「地域包括ケアシステムとは、多職種が利用者本位のもと、フェイス・トゥ・フェイスでつながって、利用者を支えるものです。私は診療所で度々15分間、ケアカンファレンス(ケア会議)を行っていますが、患者や家族、ケアマネジャー、主治医チームさらに医療関連職種や地域ボランティア、民生委員などの方々が利用者本人をサポートするために集まる。これが地域包括ケアシステムです。
 尾道市では家族機能をサポートすることが地域包括ケアシステムという理念で取り組んでいます。(中略)地域の医療者と介護の担当者がケアカンファレンスの場で連携しながら利用者に向き合っています。(中略)現場の連携を重ねる中で“新・地域ケア”に到達しました。そのシステムはケアマネジメントをルールとして主治医機能や急性期医療、地域福祉、介護保険サービスなどさまざまな資源が集まり要介護者などを支えていくものです。」と。つまり、地域包括ケアシステムとは、利用者(患者)も含めて本人にかかわる医療と介護、福祉、地域ボランティアの人たちがケアカンファレンスという会議に集まりフェイス・トゥ・フェイスで目的も情報も共有し連携しながら利用者の地域(在宅も施設も含む地域)での生活を支えていくものであります。
 公立みつぎ総合病院も訪問しました。当日の説明は副院長の沖田医師が行ってくれました。山口昇氏が地域包括ケアシステムを考えるにいたったきっかけや「寝たきりゼロ作戦」また施設でのケアから在宅でのケアへは連携が大事で「医療の出前」や「シームレスなサービス提供」、「ハード、ソフト両方必要でパッケージとして提供されること」、(さらには「経管栄養や吸引を誰が行うのか」)などその説明は強く印象に残りました。また紹介ビデオも見させていただきましたが目から鱗が落ちる状態で皆本当に感動いたしました。バスで病院に着いたときは林立する施設群は壮観で圧倒されましたが、説明やビデオを見てそこでたずさわっている医師や介護者一人一人の持っている理念・考え方、そして施設と在宅との連携の在り方にむしろ感動させられました。社会保障の本場スエーデンから視察に来られている映像もありましたがまさに納得です。
 私たちも全ての施設を見学させていただき、説明も受けましたが、終の住み家としての特養ホームから在宅へ戻った人も140人いますとの説明にはびっくりしました。緩和ケアの6室でしたが部屋も見させていただきましたがここからも在宅へ戻られた方がいますと。本当に全ての施設に在宅ケア支援機能がついており連携がとれるようになっていることにはさすがだなと思いました。先ほどの冊子の中でこのことについて山口氏は以下のように述べられています。
 「緩和ケア病棟と在宅緩和ケアとの連携、回復期リハビリ病棟と在宅リハビリとの連携、介護保険施設と在宅ケアとの連携がある。これらの連携は、『点』から『線』へ、『線』から『面』へという地域連携へ向かうことが求められており、そのためには行政、専門職のみではなく地域住民をも含めたネットワークが必要であり、地域ぐるみの包括ケアシステムが必要である」と。さらに、「地域包括ケアシステムの成果と課題」として「御調町では病院と行政が一体となり、それに老健施設、特養、訪問看護ステーション、ケアハウス、グループホーム等の諸施設、さらにこれに住民が加わっての地域包括ケアシステム(ネットワーク)をつくり上げ、在宅ケアをはじめ保健・医療・福祉の連携・統合を図ってきた。(中略)システムのハードが病院をはじめとするこれらの保健医療福祉の総合施設群であり、ソフトが寝たきりゼロ作戦、在宅ケア、健康づくり、住民参加等である。地域包括ケアシステムの構築により保健・医療・福祉の連携が『点』から『線』へ拡がったことで、住民にとっては元気なときの健康づくりからターミナルケアまで、必要なときに必要なサービスを必要なだけ受けることが可能となった。今後は更に、種々の制度に基づく公的サービスと住民参加によるインフォーマルなサービスとが重層的に住民を取り巻くような地域づくり・まちづくりを目指した、システムの『線』から『面』への広がりが期待される」と。以上の考え方は、システムの農村型、都市型に関係なく今後の地域ケアの考え方としてとても重要なことだと思います。
 尾道市の高齢化がいくら全国よりも進んでいたにせよ、介護保険制度ができる以前の1990年当初よりまったく偶然だそうですが、片山氏、山口氏の二人は、利用者(患者)の生活を支えるという本当に熱い思いがあったればこそ、地域包括ケアシステムを構想しえたのだと思います。
 国は二人の取り組みに比べだいぶ遅れました。2000年に介護保険制度のスタート、そして2005年の医療制度改革において初めて「地域包括ケアシステム」という概念の導入とそれに伴う生活圏域としての「地域の設定」、また「医療連携の在り方の見直し」を行ったのです。この「医療連携の在り方の見直し」については若干の説明が必要です。旧来の一次医療(かかりつけ医による医療)、二次医療(入院治療が主)、三次医療(専門的かつ高度治療)という階層型の連携いわゆる病診連携から患者の病期に着目し、地域にある医療機関、介護サービス提供者、行政などそれぞれの有する機能を最大限に発揮しながら、一人の患者に関与していくという地域完結のネットワーク型医療連携への転換を意図したものです。
 地域包括ケアシステムは理念や考え方に統一的なものはあっても具体的な連携方法やあり方に全国画一的なものがあるわけでありません。医療と介護、福祉や保健、地域ボランティアなどの連携のあり方には、むしろ地域の特性に合わせたものの方が良いからです。例えば、在宅主治医機能とケアカンファレンスに特徴のあった尾道方式(都市型)、施設ケアと在宅ケアの連携に特徴のあるみつぎ方式(農村型)、第一回定例会で紹介させていただきました和光市は包括支援センターとコミュニティケア会議にその特徴がありましたが行政主導型のシステムといえます。形だけの連携になることなく、あくまで利用者(患者)本位の地域の特性を活かしたシームレスな地域連携を目指して構築されるべきであると考えます。
 地域包括ケアシステム構築の必要性、また連携の在り方について尾道市を訪問しての成果を踏まえ述べさせていただきました。高齢者人口がピークを迎える2025年を目指して、私たち千代田区も今こそ千代田区ならではの特性を活かした地域包括ケアシステムを構想すべきではないでしょうか。
 そこで、区長に改めて地域ケア構築について基本的な考え方をお伺いいたします。また区として目指すべき地域ケアの在り方を、医師会や病院と事前に協議した上で仮称「連携型千代田区地域ケア構想」として広く区民に示してはどうでしょうか。ご所見をお伺いします。併せてご答弁下さい。

 次に、医師会との連携・協力についてであります。
 尾道市への調査を通して改めて医師会の果たしている役割とその重要性を理解いたしました。病院や医師会の協力なくして地域ケアの構築はできません。医療連携の在り方が転換されたことは既に述べました。区として病院や医師会と事前に十分協議し、細かい点は別としても最低限向かうべき方向性は一致させておく必要があります。
 尾道市の場合は、今日までの成果でしょう、開業医(かかりつけ医)のほとんどが在宅主治医となっていますので問題はありませんが、千代田区の場合、在宅主治医としての役割を担う在宅療養支援診療所の法律ができて4年を経過するもその数はわずか13か所にとどまっています。つまり、尾道市のように開業医(かかりつけ医)イコール在宅主治医とはならない中で地域ネットワーク型医療連携をどう行っていくのかという課題があることになります。よって、あんしんセンターは往診が必要な高齢者には区外の先生に頼らざるを得ないのが現状となっています。この度の改定基本計画によりますと、千代田区の21年1月現在ですが、要介護認定者で医療処置が必要な方のうち、在宅で療養されている方の割合はなんと95%、177人となっています。
 現在、区は「在宅医療・介護連携推進協議会」を平成21年度に設置し議論を行ってきています。協議会のメンバーは学識経験者、医師会、病院、各種介護事業者の代表、区職員で構成され、設置目的は事務事業概要によりますと「医療と介護の連携方策及び関連事業の在り方を検討するため」となっています。さらに会議に関係して同じく21年度より「高齢者在宅医療と介護の連携プロジェクト」を立ち上げ、具体的なモデル事業を行い検証・分析することとなっています。さらに、今年3月には本庁舎区民ホールにおいて「千代田区在宅療養を支えるビジョン~医療と介護の連携~」と題しシンポジウムが開催されました。講師としては明和病院の先生で、神田医師会の水山和幸(みずやまかずゆき)先生始め5人の方がスピーチされました。医療連携の在り方や情報共有の方法としての地域連携(クリティカル)パスなどとても有益な内容であったと伺っています。
 そこで、地域ケア体制の構築について、

  1. 今後、医師会や病院とはどのようにして連携・協力を行っていくのか。そして、

  2. かかりつけ医(開業医)と在宅主治医との関係はどうしていくのか。また、

  3. プロジェクトやシンポジウムなども含めて在宅医療・介護連携推進協議会における地域ケア体制の構築について今日までの到達点は何か、また課題としては何が上がっているのかお伺いいたします。併せてご答弁下さい。

 次に、麹町と神田それぞれの生活圏域としての地域における地域ケアについてであります。
 地域包括ケアシステムの概念の導入と合わせて、生活圏域としての地域が設定されたことは述べました。在宅か施設かというそれまでの二元論を超えた生活圏域としての(おおむね中学校区となりますが)「地域」の設定です。この地域において地域内にあるハード、ソフト含めた資源を活かし、地域ケアを構築していくことが法改正の主旨でした。片山氏のいうところの「機能する地域」の実現です。
 区としては、地域としての麹町と神田それぞれにあんしんセンターをその核としてハード、ソフト両面にわたって整備を進めてきました。また高齢者総合サポートセンター構想も発表され、大きく5つの機能を担うこととされています。私はこのサポートセンターは両あんしんセンターを統括し、かつ両地域で地域ケアを行うに不足する機能をハード、ソフト両面からフォローするものと理解しています。みつぎ方式でいえば、5つの在宅ケア支援機能と言ってもよいと思います。
 そこで、サポートセンターの機能も含み、地域としての麹町、神田それぞれにおいて地域ケアを構築するためには現状、ハード・ソフト両面から何ができており、何が不足しているのかお伺いいたします。また不足を補うための方策は何か、改めてお伺いいたします。


 最後に、認知症対策についてであります。
 認知症対策を今後どう行っていのかは緩和ケアとともに大きな政策課題となっています。片山氏は著書の中でも具体的な多くの事例とともに詳しく紹介されていますが、この両方に熱心に取り組まれています。認知症高齢者数の予測推移ですが、まず2002年9月に厚労省高齢者介護研究会が推計したものがあります。当時150万人(65歳以上での人口比では6.3%)、2015年には250万人(7.6%)、2025年には350万人(9.3%)、ピークは2035年の376万人、高齢者人口比で10.7%と予測されました。ただし、この数字は要介護認定に用いる主治医意見書の記載から自立度Ⅱ以上を集計したものです。(補足ですがこの自立度とは認知症自立度判定基準のことでランクはⅠからⅤまでの5段階となっておりちなみにⅤ段階は重篤な身体疾患がみられ専門医療が必要な状態、Ⅱ段階は日常生活に支障をきたす症状だが誰かが注意していれば自立できる状態をいうそうです)よって、介護認定の申請を行っていない軽度認知機能障害の領域を含めた予備群や診断されずに見過ごされている潜在患者を含めるとおよそ2倍のカウントが必要になると片山氏は指摘し、片山氏はさらに「認知症介護研究・研修東京センターの最近の調査によると、2007年10月現在で既に推定260万人の患者数が浮かび上がってきた。とすれば2015年の認知症患者数は500万人を超えるということになり、予備群を加えれば600万人規模とも言われている。つまり、認知症は、高齢者に多発する重大な国民病といえるだろう。(中略)個人の尊厳を失わせ、家族機能に重大な影響を及ぼす認知症への早急な体制整備は、政策的にも現場にも喫緊の課題である」と、警告しています。
 千代田区における認知症高齢者の数は、改定基本計画によりますと平成20年度980人(こちらは認知症自立度判定基準Ⅰ以上)であり、65歳以上人口比では10.9%となっています。 要介護認定者のうち占める割合は54.6%であり実に半数以上の方が認知症というのが実態で、既に驚くべき数字になっています。
 認知症の特徴としては、記憶障害や見当識障害(時間や場所など周囲を正しく認識できない)が進行していく一方で、喜びや悲しみ、思いやり、自尊心(プライド)といった感情機能は認知症が相当進行した段階であってもしっかり保たれているということがあります。周囲の状況を正しく認識できないがゆえに、認知症高齢者は強い不安やストレスを感じやすくなっています。生活環境への配慮や周囲で接する人の応対は慎重でなければならないとする理由がここにあります。
 認知症対策は家族だけではできません。認知症という病こそ医療と介護、また暮らしている地域の人たちの連携が必要となっています。区としても医師会を始め保健所、あんしんセンター、神田・麹町の各ジロールそして地域と連携しながら対策を講じていく必要があると思います。
 認知症対策としては、

  1. 正しい知識の普及と啓発、そして

  2. チェックシートを利用した早期発見と専門医への受診、また、

  3. チェックシートを活用した的確なアセスメント(評価・観察)と包括的なケアプランの作成

などが考えられます。
 そこで、現在区では以上の点についてどのように行っているのか。また今後に向けてはどのような対策を準備されているのかお伺いいたします。

 以上、「高齢者は未来を切り開く!」と題し、地域ケアの構築を目指して4点の質問を行いました。
 最後になってしましたが、この「高齢者は未来を切り開く」との言葉は、ロバート・バトラーの著書「プロダクティブ・エイジング」のサ ブタイトルですが、片山氏がいたく感銘し、新・地域ケア2007の標語にされた言葉です。ロバート・バトラー博士は実は今年の7月に亡くなられました。享年83歳でした。ロバート・バトラー博士は「老年学の父」「パイオニア」と呼ばれ、米国だけでなく世界中の人々の高齢者に対する意識改革に多大な影響を与えてきました。「20世紀に人類の寿命は30年延びた。この事実を陰鬱、悲運と受けとめるのではなく、祝福、理解、称賛すべきだろう。」として、高齢者を「お荷物」「役に立たない」「老いぼれ」とする偏見をなくすこと、高齢者を若者と同じくらい生産力があり、社会への積極的な参加が可能で、柔軟な思考を持ち、そして愉快な人たちであることを繰り返し訴えていました。
 私もバトラー博士のこのような主張に大いに同感し、今回の質問の題とさせていただきました。
 区長並びに関係理事者の前向きな答弁を期待し質問を終わります。
 ありがとうございました。

〈区長答弁〉

 大串議員の地域ケア構築に関するご質問にお答えいたします。

 地域の包括ケアシステムというのは、私なりの認識としては、2つの観点からとらえなければならないと思います。1つは、保健・医療・介護・福祉の連携システムであり、もう一つは、施設ケアと在宅ケアとの連携システムだと思います。
 ところで、都市化・業務化が進んでおり、定住人口と夜間人口の差が大きいこの千代田区というところで、この問題をどうとらえていくかということになろうかと思います。我々は、そうした意味で、「地域包括ケアシステム」という言葉が一般化する以前に、実は、この問題を考えていかなきゃならないということで、平成14年度末に、「千代田区で安心して暮らし続けることの実現を目指して」ということで、具体的には平成15年度千代田区在宅ケアの在り方検討会を行い、平成16年度介護保険制度見直しに伴う施設検討会において、学識経験者、医療関係者、介護施設関係者、あるいはケアマネジャーとか訪問看護師等、在宅関連者からなる検討会を設置し、さまざまな提言をいただいてきたわけでございます。この2つの検討会で、千代田区における高齢者の状況を多面的に検討をし、あるべき姿を論議する中で、都心千代田の地域包括ケアを確立するための切り札として最も象徴的だったのが、(仮称)高齢者サポートセンターの必要性ということを明快に、この考え方の中で申し上げております。
 高齢者総合サポートセンターは、壮大で、また、どこにもないモデルでありますが、実現に向けて、取り組みの時間がかかってきたわけでございます。しかし、平成19年度には、高齢者総合サポートセンターの整備調査検討会を設置し、基本的なコンセプトをまとめて、昨年12月に基本構想を確定したという、そういう経過があります。
 そして、一方では、これを実証的に検証するために、平成21年度からは在宅医療と介護の連携プロジェクトも立ち上げて、現在、千代田区の地域包括ケア確立に向けてのさまざまな作業をしているわけでございます。
 大串議員からもご質問、ご指摘がありましたように、強調しておきたいことは、保健・医療・介護・福祉の連携及び施設介護と在宅介護の連携という、2つの連携を図るというのが本来の地域包括システムでありまして、ある面では、どこにもモデルがない、あるいは地域のさまざまな状況をとらえてつくっていくということになろうかと思います。モデルがないゆえに、各地域でさまざまな模索が続いておりまして、尾道市の例、あるいは、あと有名なのが長野県の佐久総合病院の在宅医療。そのように、医療と介護の連携という言葉は簡単でございますが、その中身の実践というのは非常に苦労するものであります。
 ところで、一般的に医療機関というのは、病気を治すというのが目的でありまして、生活を支えるという視点は、なかなか医療機関としては持っていません。もちろん、ドクターの中には、そういう観点でさまざまにやる場合もあります。したがって、病気になって入院した患者を治療し、退院できる状態にするというのが、病院の大きな役割だろうと思います。そして、その患者が病院を退院した後、患者でなくなった一人の人間が地域で、家庭で、どのような生活をするかは、病院・医療機関の問題ではないことになるだろうと思います。
 しかし、患者やその家族の立場からは、退院後の生活を支えるサポートが必要だというふうに思います。医療機関や医師の中にも、こうした人の生活を支えるという観点から、総合的な視点で医療というものを考えるべきだということで、さまざまな取り組みをしているのが、全国でいろんな事例があります。その1つの例が、私は、尾道市の例であろうと思います。
 それが尾道市の医師会であったり、みつぎ公立病院であったり、あるいは在宅医療で有名な長野県の佐久総合病院であろうと思います。この地域包括ケアが確立している地域では、患者を治すというだけではなく、その人の生活まで考えるという信念を持って、医師や医療機関が中心となって、福祉や保健関係者や民生委員や地域住民を巻き込む形で医療のアウトリーチが実践されているのが、地域包括ケアだと言えるだろうと思います。
 ところで、千代田区の状況を勘案しますと、千代田区の医療機関は、高度先進医療を提供する大病院、そして、主として昼間人口を対象にした診療所が大多数でありまして、約5万人弱と言われている定住人口のための在宅診療を実施する医療機関は、お話しのとおり少ないわけでございます。これは、医療の経営という観点から見れば、在宅診療・在宅療養は、効率性が高いとは言えませんので、千代田区というところで医療を展開する場合は、どうしても昼間人口や高度医療の提供に重点を置いているわけでございます。
 このような中で地域医療・在宅医療に目を向けてもらうようにするためには、かなり、経営という観点から見ると、非常に厳しい診療機関があるわけでございます。これは、もう少し広げてみるならば、ご承知のとおり、福祉に関します訪問看護ステーションですとか、千代田区内の介護に関するサービスステーション、あるいはケアマネージをする事業所が物すごく少ない。これはあくまでも住民ということをとらえてみますと、なかなか地価の高いところでこうしたことを立地するのが非常に難しいという、こういう現実があります。医療も、そういう意味では、そういう考え方が主として行われているということを考えますと、我々としては、しかしこの問題についてはどうしても医療機関が前へ出てきていただかなきゃならないので、今、具体的なモデルを検証しながら、医療機関のご協力、ここがキーポイントになろうかと思います。
 その1つのセンター的なものを、まず高齢者サポートセンターでつくりながら、一方では、地域に包括ケアシステム、それは診療所を中心としたものをつくっていくという意味では、今まださまざまな試行を繰り返しているという状況でございますが、必ずこれは将来の高齢者の問題から必要であるということを考えて、我々は積極的、かつ、関係機関とのさまざまな協議と連携を、これからも進めてまいりたいと思います。時間をいただきたいと思います。

 なお、詳細については、関係理事者をもってご答弁をいたさせます。

〈保健福祉部長答弁〉

 大串議員の地域ケア構築、認知症対策に関するご質問にお答えいたします。

 まず、医師会との連携協力についてですが、現在、医療と介護の連携プロジェクトを立ち上げ、医師会や歯科医師会、薬剤師会、介護事業者、高齢者、あんしんセンターなどのメンバーで構成する在宅医療・介護連携推進協議会を設置し、検討しているところでございます。

 次に、推進協議会の今日までの到達点と課題についてのご質問ですが、現在、情報共有のためのフォーマットの作成や医療介護連携のためのマニュアルづくりを行っております。今後は、医療機関と介護事業関係者が直接意見交換のできる場として、在宅療養支援ネットワーク体制の整備を行っていく予定でございます。

 次に、かかりつけ医と在宅主治医の関係についてお答えいたします。
 かかりつけ医と在宅療養支援診療所の在宅主治医が異なる場合には、両者の連携をどのように図っていくかということが重要です。今後、推進会議の中で、かかりつけ医と在宅療養支援診療所との連携のあり方について検討していきたいと思っております。

 次に、地域ケア構築に際し、地域ごとの充足・不足の現状と不足を補う方策についてですが、麹町・神田地域には、高齢者あんしんセンターがそれぞれ配置されており、さらにバランスに配慮して、施設等の整備を進めてきております。全区的には、在宅療養支援診療所と訪問リハビリに重点を置いた訪問看護ステーション及びリハビリ施設が不足しておりますので、高齢者総合サポートセンターに整備してまいりたいというふうに考えております。今後の地域ケア構築につきましては、第5次介護保険事業計画や保健福祉総合計画の策定の中で検討してまいりたいと考えております。

 最後に、認知症対策に関するご質問にお答えいたします。
 まず、正しい知識の普及ですが、区では、高齢者あんしんセンターで、認知症をテーマに家族介護者教室を行ったり、普及啓発事業として、「認知症サポーター養成講座」を行っております。現在、約300名の区民の方が認知症サポーターとなっており、今後も普及を図ってまいりたいと考えております。 次に、チェックシートを利用した早期発見と専門医への受診、アセスメントと包括的なケアプランの作成についてのご質問ですが、東京都では、認知症サポート医や認知症に対応できるかかりつけ医を養成しております。認知症高齢者を早期に発見して、専門医への受診につなげるよう、それらの医師や医療機関を公表し、情報公開を行っております。早期発見のためのチェックシートについては、各種ありますけれども、主に長谷川式スケールなどを用いて、医師が診断を行い、専門医につなげているところでございます。また、認知症専門医等が認知症高齢者の心身の状態・生活様式・家族状況に合わせたケアプランアドバイスを行い、ケアマネジャーが包括的なプランを作成しております。なお、平成21年度から、高齢者あんしんセンターに配置した看護師による在宅医療福祉・認知症相談を行っており、今後もあんしんセンターを中心に、保健所や地域の医療機関と連携しながら相談・ケアを充実するなど、認知症対策を推進してまいります。

〈再質問〉

 自席より再質問をさせていただきます。

 この地域包括ケアシステムの構築については、第1回定例会でも、和光市の例を挙げて質問させていただきました。そのときの質問でも、区として考える地域ケアのあり方、要するに千代田区型の地域ケアというのはどういうものなんだというのを、構想として広く区民に発表したほうがいいと。これは、そういったものがあって、区は介護保険の保険者でもありますし、福祉の責任者でもある。それと、医療のほうでは、病院と医師会がありますので、病院・医師会ともよく話し合って、千代田区型の地域ケアというのはどういうものなのかというのは、やはり私は、構想として広く区民に発表すべきだと思います。それがあって初めて、みんなが同じ方向に向いて、そのためにはどうしましょうという議論が、そこでスタートできる。ほんの一部の人だけが地域ケアのことをわかっていて、携わっていて、どこかでやっている。これでは、僕は、いつまでたっても千代田区型の地域ケアというのはできない。むしろ、そういった中で、千代田区の課題はこれとこれとこれがあります、これがなくては地域ケアはできないんですというところまでみんなが理解すれば、それについていろんな知恵を出してくれる。例えば、研修会、シンポジウム、そういったものを重ねる中で、千代田区型の地域ケア、またはそういう形ができてくるのではないかと思います。ですから、何か難しいからということで、そういう協議会、平成14年から今日までいろんな会議でやっているということですけど、いまだに、僕は、そういったものは出ていないと思います。確かに高齢者総合サポートセンター基本構想はありますが、これはあくまでも建物に対する構想、要するに機能の説明、機能のあり方であります。千代田区のもともと目指す地域ケアはこういうのがありますというのがあって初めて、じゃあ、その施設としてはどれが必要、それで、在宅をケアするための支援センターはこういうのが必要だというふうになります。それがない中で、先に施設をつくって、施設に機能を入れて、それから千代田区型の地域ケアというのはこうですと言われると、何か僕は順番が逆のような気がしてならないんです。ぜひ、その点も再度答弁していただきたいと思います。

 その他のことは、また総括もありますので、そちらに回したいと思います。よろしくお願いします。

〈区長答弁〉

 再質問にお答えします。

 私どもは、そういう大串先生が疑問に思っているようなことには対応していないつもりでございます。さまざまな議論は、当然、施設をつくるときには、どういう内容と、どういう役割を、どういう機能を持つかという中から積み上がっているのでありまして、初めに施設ありきということではない。しかも、地域包括ケアをやるためのセンター的な機能としてこういうものを持ちたいということ。ただ、この場合に、具体的には、お医者さんがどうしても前へ出てくるということが必要なので、今、モデル事業についてさまざまに連携のあり方の検証をしているということでございます。いずれこうしたことの答えが出た場合には、大串先生がおっしゃるような考え方をきちっと示したいと思います。決して施設ありきという形で我々のほうはやってきているのではない。これは、ぜひ、理解をしていただきたいと思います。

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