真心の伝わる政治を!
大串 ひろやす
平成25年第4回定例会
「教育のための社会」を目指して!

「07年ユニセフ 子どもの幸福度調査」を示して!
〈質問通告〉
「教育のための社会」を目指して!
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教育の目的とは何か
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教育委員会の権限と責任について
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共育マスタープランの改定について
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子ども読書活動推進計画について
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保育供給計画の策定について
〈質問と答弁の全文〉
平成25年第4回定例会にあたり、公明党議員団を代表して質問を行います。
質問の趣旨は、改めて教育の目標を確認し、教育、保育とはいかにあるべきかを問い、また関連する提案も行い、より良い教育行政また保育行政につなげていくことにあります。
ちょっと前になりますが、2008年11月17日の毎日新聞「教育の森」に「幸福度調査1位オランダの提言」という記事がありました。
「『なぜ、モノが豊かな日本で、こんなに多くの子が孤独を感じているのでしょうか』今月11日に青山学院大で開かれた「日蘭共同教育改革シンポジウム」でオランダ在住の教育研究家、リヒテルズ直子さんは、日本の教育研究者ら約300人に問いかけた。壇上のスクリーンに映し出されたデータに参加者はくぎ付けになった。
07年に国連児童基金(ユニセフ)が発表した、経済協力開発機構(OECD)加盟国を対象に実施した子どもの「幸福度」に関する調査結果だ。「自分は孤独だと感じるか」という質問(対象は15歳)に「はい」と答えた割合は、日本が29.8%で回答のあった24か国中トップ。ほぼ3人に1人が感じているということになる。次いで多かったアイスランドでも10.3%。一方オランダは2.9%で最低だった。この調査では、「自己肯定感」にも顕著な差が出ている。「自分は不器用だと思う」と答えた割合も日本が18.1%で最も高かったのに対しオランダは6.9%。40項目の結果からオランダは「幸福度」が総合で1位を獲得した」との記事です。
衝撃的な結果でびっくりします。なぜ、日本の子どもはそんなにも孤独で、またそんなにも自信をなくしてしまったのか。教育改革・教育再生と叫ばれて久しいにも関わらずであります。
一度原点に立ち戻り、改めて教育について考えてみる必要があります。
最初に、教育の目的とは何かについてであります。
教育基本法の、第一条(目的)には「教育は、人格の完成を目指し、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成を期して行われねばならない」とあります。
また区の教育委員会のホームページの、教育目標には
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社会規範を身に付け、社会貢献しようとする人間
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個性を磨き、生涯を通じて学ぶ意欲と創造力を持った人間
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たくましく生きるための健康と体力を自己管理する人間
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豊かな心をもち、国際社会で活躍する人間
の4つが掲げられています。
そして、共育マスタープランには、共に育む共育目標として、「子どもが健やかに育つ権利の実現を目指す」とし、「子どもは生まれながらにして人間としての尊厳を有すると同時に、社会の中で『健やかに育つ権利』を有している。『子どもが健やかに育つ』ことは、自分らしく生きる自立意識(自立性・個性)と他者との共生意識(共同性・社会性)を育むことである。子ども同士がさまざまな場でぶつかりあい協力しあうことで『個性』と『社会性』が共に育つ。また、子どもは、さまざまな経験を通して『学び合い』ながら社会の中で生きていくために必要な能力を発展させ、「社会を構成し社会に参加する」人間として育っていく」とあります。
いずれの目標も大事なことであり必要なことと思います。特に、注目すべきは共育マスタープランにおいて掲げられた共育目標であります。すべての子どもには「人間としての尊厳」と「健やかに育つ権利」があることを宣言し、その権利の実現を目標にしています。そして「健やかに育つ」とは自立性・個性を育むことと共同性・社会性を育むことであると明快であります。
戦後、日本は世界に追い付け追い越せと経済を優先とする中央集権の行政官僚システムを築き走ってまいりました。結果、物質的に豊かな国という成果を残すことができましたが、反面、反省しなくてはならないことも残しました。それは教育を手段として使ったことであります。
教育は手段ではありません。国家のためのものでもありません。あくまで子どもの幸せのための教育であります。このことを前提に、教育とはいかにあるべきかを考えていかねばなりません。
この点、マスタープランに書かれた目標とその方法は大いに注目すべきであると思います。教育関係者のみならず、保護者を始め多くの区民の方々と共有していきたいものです。
その1点目は、「自分らしく生きる自立意識(自立性・個性)」を育むということでした。教育は当然、知識の伝授ばかりではなく学習法を指導し、研究を会得させ自分で考え、自分で得た知識を生かして自ら判断し、行動できるようなるということが重要です。どんな事態に遭遇しようとも、怯まず困難を乗り越えていける力となります。その例としては、3.11大震災のときの「釜石の奇跡」です。釜石の小学校、中学校で群馬大学大学院の片田敏孝教授が実践されていた防災教育 は「想定にとらわれず、主体的に判断し、行動できること」でしたが、まさにこの自立性・個性を育む教育といえるものといえます。
2点目は、「他者との共生意識(共同性・社会性)」を育むということです。
学校生活やクラブ活動また友達との交わりや地域との交流を通して社会への適応力を養うということであります。いわゆる市民性を育むシティズンシップ教育です。麹町中学校では、昨年から生徒たちによる模擬裁判が行われています。社会科の公民の授業として行われているものだそうです。実際にあった事件を例として使い生徒が裁判長や検事、裁判員役を務め、自分なりに考え判断していきます。公開授業となっており、私も見学させていただきましたが大変すばらしい授業でした。自立性・個性と共同性・社会性の両方を育む授業であるといえます。さらに生徒たちの自信にもなっていることと思います。
先ほどの「オランダからの提言」にはオランダの教育についても書かれており、オランダで重視しているのは自立学習と共同学習(シティズンシップ教育)を柱にした個別教育であるというのです。2005年から初等・中等教育で義務付けて並行して行われているそうです。自立性・個性を伸ばす教育と共同性・社会性を伸ばす教育をすでにオランダでは行い、現在子どもの幸福度世界一となっていることは同じ目標を掲げた千代田区としても是非参考にしていきたいものです。
3点目に重要なこととして、これは直接の教育とは違うかもしれませんが、子どもの自尊感情もしくは自己肯定感を育むということであります。この言葉はマスタープランには出てきませんが、「虐待や犯罪から子どもを守る」の項に同じような意味のことが書かれています。
この自尊感情をどうしたら育めるのかということについて、大阪教育大学の園田雅春教授が述べています。
「自尊感情は、教育学の言葉ではなく心理学用語。教育の世界で使うことで、子ども共々集団で高め合うことを目指して生まれた。じゃあ、自尊感情を高めるために何が重要なのか、どうしたら育まれるのか。今(時)の子どもたちは内面で二つのことを求めている。一つは自分ことを家や学校、地域で認めて欲しがっている。二つ目は自分の話を聞いて欲しがっている。承認と表現の二面を求めている。この二面を大事にされると、こんなに自分は大事にされていると感じ、子どもは伸びる。逆に無視され、自分いないように扱われるとどうなるか。抑圧された子どもたちは厳しくつらい状況に」「子どもにとっては『あなたが大事。君が教室にいないと寂しい。なくてはならない』と(認められる)ことで、自尊感情の滴が溜め込まれる」と。
教育の目的は、子どもの幸せにあること。またそのことを前提に教育はいかにあるべきかについて、共育マスタープランにおいて掲げらた目標を中心に①自立性・個性を育む自立学習、②共同性・社会性を育む共同学習(シティズンシップ教育)、③自尊感情を育むことの3点について述べさせていただきました。
(実はOECDの目指している教育も「自立性」と「社会性」にあります。つまり教育の世界基準がそこにあることも述べるつもりでしたが、時間がありませんので省略いたします)
そこで、教育の目的とは何か。またそのために教育はいかにあるべきなのか、区長、教育長にお伺いいたします。
次に、教育委員会の権限と責任についてであります。
この件については、今までもこの教育委員会本来の役割をどうすれば果たせるのかについては質問してまいりました。今までの答弁をまずは確認しておきたいと思います。平成22年第4回定例会において「区長、教育委員会、教育長の関係は、教育委員会は教育に関する基本的な方針を自ら決め、そして教育長はその方針や計画に基づいて事務を執行していくという関係にある。そして区長の総合調整者としてのリーダーシップと合議制の教育委員会合意形成システムがうまくかみ合いそして権限と責任を分担しあいながら、適切な教育政策を目指すことである」との答弁がありました。この答弁をもう少し具体的に述べれば、
「教育委員会が果たすべき役割としては、
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住民、保護者、教育関係者・団体等との話し合いを通じて、地域の教育課題やニーズを掘り起こし集約して教育政策の基本的な大綱や方針をまとめていくこと。
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そうした大綱や方針を踏まえて具体的な事業の企画、立案と執行は教育長に委ねる。
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そして、教育委員会自ら定めた大綱や方針についての評価は第三者によるものとし、その結果を首長、議会、区民に示し地域での教育論議をまた喚起していく
ということになると思います。こうすれば、政治的に中立・公正で住民自治の仕組みとしての教育委員会の役割も果たせ、より子どものための教育行政もできるのではと思います。そこで、改めて教育委員会の権限と責任についてお伺いいたします。
現在、教育委員会としては、各小学校や中学校で委員会を開催する移動教育委員会を行っています。すでに4年になるそうです。そこでは地域の保護者や教育関係者と地域の教育課題について意見交換を行っているそうです。このことは教育委員会の役割の先ほどの前半部分「住民、保護者、教育関係者との話し合いを通じて地域の教育課題やニーズを掘り起こし」に相当するものでとても良いことだと思います。そこで、提案です。後半部分の「集約して教育政策の基本的な大綱や方針をまとめていくこと」との役割がより実行できるよう定例会とは別に委員の皆さんが自らテーマも決定し自由に議論できるような定例会とは別に懇談会的なものを開催できるようにしてはどうでしょうか。ご所見をお伺いいたします。
次に、共育マスタープランの改定についてであります。
共育マスタープランは平成22年4月に期間5年の計画として策定されました。すでに3年半が経過いたしました。教育委員会としては自ら策定した共育(教育)の目標は、先ほど引用しました素晴らしい目標ですが、どう進捗したのか、大変注視していることだろうと思います。区民も同じように教育目標など関心をもたれていることと思います。第三者としての有識者による評価も、委員会として自己評価も行っていることとなっていますが、この目標に対しての評価はどのようなものだったのでしょうか、お伺いいたします。
共育マスタープランについては二つの提案があります。
一つ目の提案は、5年の期間はそれでよいと思いますが、見直しを3年目に行い修正を加えられるようにしてはどうでしょうか。理由は、①子どもたちを取り巻く環境の変化にすばやく対応できるようにするため、②そして、移動教育委員会などを通して地域の教育課題をまとめ、方針を定め計画に反映するとしていること、また「点検・評価」による貴重な意見や提案もあることから計画の中間に見直し修正ができる方がより実効性ある計画となるためであります。
二つ目の提案は、プランの概要版を携帯できるサイズ(A5版サイズ)で作成してはどうかということです。マスタープランはA4版で51ページであります。持参するにはちょっとかさばります。子どもに関わる多くの人に読んでもらい参考にしてもらいまた議論していただくためのものですので、気軽に持参でき参照できるようにすべきと思います。例えばですが、教育の目標を多くの方に理解してもらうことはとても重要ですが、そのための講演会やシンポジウムを企画し、その際の資料として持参してもらうこともできるようになります。オランダのリヒテルズさんや教育者の方に講師をお願いできたらきっと素晴らしいものになると思います。
プランの3年での見直しと修正また概要版の作成について提案させていただきました。ご所見をお伺いいたします。
次に、子ども読書活動推進計画につてであります。
子ども期における読書の大切さは誰もが認めることであります。
子どもの読書推進には、計画的かつ総合的に進めるための計画が必要であります。
区として、計画を策定したのは平成19年で、期間3年の計画でした。計画には、「子どもの表現力、論理的思考力、想像力等を育てる上で、読書が不可欠であり、乳幼児・児童期における読書習慣の形成は、青年期以降の社会生活の基盤として重要な役割を果たす」とし
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3年間に整備すべき内容を小学校図書室や児童館、保育園など対象別にまた年度ごと定めています。例えば司書の派遣や蔵書の構築そして読書や調べものの相談などであります。特に学校図書室への司書の派遣は子どもたちや保護者に大変喜ばれています。
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出版関係機関との連携の項では、千代田図書館、古書店、書店、区内大学図書館などの別に同じように達成目標が掲げられています。例えば(仮称)読書コンシェルジュの育成が目標として掲げられています。書店で行われている読書アドバイザー制度、千代田図書館で採用する図書館コンシェルジュなど各分野で個別に取り組まれている読書・資料探索への支援・助言活動について専門家を育成するための制度の共通化を図るものとあります。社会をあげて子どもから 大人までの読書推進につながるとても良い取り組みだと思います。
とても良い計画であったと思います。平成21年度で計画は終了となっており、計画がなくなってよりすでに3年以上が経過しています。
そこで、第二期の「子ども読書活動推進計画」の策定は現在どうなっているのか。また、(仮称)読書コンシェルジュの育成はどうなったのか、お伺いいたします。
子どもの読書推進に関して提案があります。それは、3歳もしくは小学校入学時にセカンドブック事業を実施することの提案であります。3か月検診の際のブックスタートはハローブックという名前で平成15年に開始となりました。赤ちゃんと保護者にメッセージを伝え司書の方が読み聞かせを行ない、本をプレゼントする事業です。赤ちゃんが絵本のページを目で追う姿に保護者の方も感動するなど、多くの保護者の方に喜ばれています。そのブックスタートのフォローアップ事業として、3歳児もしくは小学校入学時に本のプレゼントを行うセカンドブック事業があります。家庭での読み聞かせを通じて、幼児と保護者が楽しいひと時を分かち合い、親子の絆をさらに深め子どもの「健やかな育ち」を支援することが目標です。ブックスタートとセカンドブックをセットにして子どもの読書を推進してはどうでしょうか。ご所見をお伺いたいします。
次に、保育計画の策定についてであります。
千代田区も平成22年度より待機児童が発生しています。そして24年度に3年ぶりに待機児童ゼロを達成しましたが、直近では再び11名の待機となっています。児童福祉法56条の8には、待機児童が50人以上いる区市町村は、増大する保育事業に対応するために策定することとなっています。区として、50名に限らずこの保育計画を策定すべきと今回提案する予定でした。共育マスタープランにすべての子どもに「健やかに育つ権利」を保障しているからであります。区長は、今回の招集挨拶で平成27年度を初年度とするこの保育供給計画の策定を明らかにしましたので提案ではなく、計画の内容について一点質問をいたします。
予定される保育供給計画策定の根拠は、昨年8月に国において成立した子ども・子育て支援法であり、法定計画となります。待機児童の数に関係なくすべての区市町村で策定が義務付けられます。名称は「子ども・子育て支援事業計画」。そして記載される内容は、
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区域の設定(地域別に定めることになるのでその地域の設定)
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保育園の定員の推移(供給)
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保育需要の推移(需要)
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保育園の種類(保育体制確保の内容)
など主にハード面に関する内容となっています。
肝心なソフト面、保育の質や教育の内容の記述は求められていません。国における子ども子育ての議論は園のハード面にばかりに終始し、肝心な教育・保育の質の議論がなされていないとの指摘もあります。区としては、この教育・保育の質に関して「就学前プログラム」を作りましたが、これは、幼稚園であろうと保育園あろうと、公立であろうと私立であろうと、また認可であろうと無認可であろうとどこにいる子どもも等しく「健やかな育ち」を保障するためのものです。本来であれば、保育供給計画ですのでハード面(どのように施設整備を行っていくのか)、ソフト面(どのような教育・保育を行っていくのか)合わせて記述した方がわかりやすいし保護者も安心できます。
そこで、区として策定する保育供給計画(子ども・子育て支援事業計画)に保育の質や教育の内容を記述されるのか、お伺いいたします。もし、記述されないとすれば、就学前プログラムの概要版をセットとして付けていただきたいのであります。合わせてご答弁ください。
今後とも、公明党議員団は、「子どもの幸せのための教育」また「教育のための社会」を目指し全力で取り組んでいくことをお誓いし、質問を終わります。
ありがとうございました。
〈区長答弁〉
大串議員の教育についてのご質問にお答えします。教育の目的は何かということだろうと思いますけど、教育長が基本的に答えるだろうと思いますけど、あえて私なりに教育の目的というのを述べさせていただきたいと思います。
確かな学力、豊かな人間性、たくましく生きるための基本的な体力など、「生きる力」の大切さと尊さを育むというのが教育の最大の目的だろうと私は認識しております。もう一度申しますと、「生きる力」の大切さと尊さを育むということが教育の最大の目的だろうと思います。社会において、人はみずから主体的に進む道を選び取っていかなければなりません。そのために必要な力を育む、育てるのが教育だろうと思います。現実の社会は共生・共存の社会であり、家庭を中心に、子どもとともに親も学校も社会も成長し、生きる力を育む、共に育む「共育」が基本的な考え方で私は思っております。ご質問にもありました教育委員会が策定した共育マスタープランも、ただ「教え育てる」のではなく、「共に育む」という観点でまとめられたものであると私は理解をしておりますし、当時、この共育マスタープランをつくるに当たりまして、私と当時の教育委員会とで議論をしまして、教育委員会はどちらかというと「教え育てる」マスタープランという考え方でありましたが、私のほうから「共に育む」というマスタープランはどうですかという提案をし、教育委員会の中で議論をして、内容は全て教育委員会がつくったわけですけど、共育マスタープランというのができ上がったわけでございます。これからも、そういう思いで地域社会全体が子どもたちと共に育ち、共に育むという視点で、子どもさんに対するかかわり方、施策を行っていく必要があるというふうに認識をしております。
なお、詳細及び他の事項については、関係理事者をもって答弁をいたさせます。
〈区民生活部長答弁〉
大串議員の子ども読書活動推進計画に関するご質問にお答えいたします。
まず、第2次計画の策定についてであります。現在、第1次計画の活動を評価し、成果と課題をまとめるとともに、子どもの読書活動を一層推進するための第2次計画の策定作業を進めております。平成23年11月にオープンした日比谷図書文化館、平成24年3月にリニューアルオープンした四番町図書館での読書活動も視野に入れながら、本年度中の策定を目指しております。なお、第1次計画期間終了後も、子どもの読書活動につきましては、計画に基づき設置いたしました千代田図書館読書振興センターを中心として、学校・園等への司書派遣を拡充するなど、発展的な取り組みを行っているところでございます。
次に、(仮称)読書コンシェルジュの育成についてであります。計画では、書店等で取り組まれている読書アドバイザー制度や千代田図書館コンシェルジュなど、読書・資料検索への支援・助言活動を行う専門家を育成する制度の構築を出版界と連携しながら目指すこととしておりましたが、実現には至っておりません。しかし、子どもの読書活動を推進するための幅広い人材育成は重要であり、そのため読書振興センターを中心に、古書店や出版関連機関が集中する神保町のまちの案内を行える人材、また、古書や新刊本に関する知識を有するエキスパートとして、「図書館コンシェルジュ」の人材育成に努めております。また、図書館司書が子育て中の保護者を対象とした「読み聞かせ講座」などの事業を展開し、子どもの本への興味を芽生えさせるための活動を進めております。
次に、セカンドブック事業についてであります。区では、ブックスタートのフォローアップといたしまして、読書振興センターの学校支援担当司書が月2回、全ての区立保育園・児童館・幼稚園・こども園を訪問しております。そこでは、読書相談や読み聞かせなどにより、読書の楽しさ・すばらしさを実感してもらえる時間をつくり、本を通じた親子のきずなを深める活動を実施しております。さらに、千代田図書館と四番町図書館では、定期的に乳幼児向けの「おはなし会」なども実施しております。これらを発展的に運用しながら、ご提案のセカンドブック事業の趣旨を実現してまいりたいと存じます。
〈教育長答弁〉
大串議員の教育についてのご質問にお答えいたします。
まず、教育の目的についてですが、「子どもたち一人一人が健やかに育つ権利を実現し、幸福で満ち足りた人生を送れるよう、それぞれの個性を尊重しながらその能力の伸長を図るとともに、よりよい明日の社会を形づくることができる力を備えた自立した人間を育てる」ということにあると考えております。そうした教育の目的を実現するために、学校教育においては、知・徳・体のバランスのとれた成長を期すこと、とりわけ、大きな社会変動の中でもこれに適応したり、置かれている状況を自分で打ち破ったりしながら社会の中で自分の能力を発揮できる自立意識や、子ども同士がさまざまな場で切磋琢磨し合い、協力し合うことで生まれる共生意識を、小学校・中学校それぞれの発達段階に応じて育み、生涯にわたるキャリア形成に必要な能力や態度を培っていくことが必要と考えております。また、共生の理念及び共育は文化の伝承と創造であるとの理解のもと、家庭・学校・地域が力を合わせて子どもたちを育て、また、みずからも育っていく共に育む「共育」が、千代田区における次世代育成及び教育の基本理念であると認識しております。
次に、教育委員会の権限と責任についてでございます。教育委員会は、教育行政全般について権限を有し、地域の教育のあるべき姿や教育の基本方針について議論し、決定するという役割を担っております。基本的な方針の策定については、教育長に委任することはできず、教育委員会みずからが行わなければならないこととされております。また、教育長は、教育委員会の指揮監督のもとに、教育委員会の権限に属する具体の事務を管理・執行する役割がございます。さらに、教育委員会は、事務の管理・執行について、外部の意見を聞いて点検・評価を行い、その結果を公表しなければならないとされているところでございます。
大串議員の、教育政策の大綱や方針の策定に当たり、懇談会的なものを設けたらどうかとのご提案でございますが、平成19年のいわゆる地教行法の改正により、教育委員への保護者の選任が義務化され、さらに、本区においては、教育施設等に教育委員会が赴く移動教育委員会を実施し、保護者のみならず、教育現場や子どもたちの声が教育委員会にも届くような取り組みを行ってまいりました。今後も、教育方針等の策定や評価に当たっては、教育委員会定例会以外にも、形式にとらわれることなく、懇談会形式も含め、さまざまな形で区民・保護者・教育関係者の意見を聞いていく場を設定する工夫をしていきたいと考えております。
〈子ども教育部長答弁〉
大串議員のご質問のうち、共育マスタープランについてのご質問にお答えいたします。
現在の共育マスタープランは、平成22年度から26年度の5年間の計画として策定されました。今後、平成27年度からの新たな計画の策定に向けて取り組んでまいります。共育マスタープランでは、5つの基本理念のもと、7つの基本的方向を定め、それぞれの方向に連なる具体の各施策を位置づけています。これらの施策にかかわる主要事業について、毎年、外部の有識者による評価を順次行い、教育委員会において確認しております。さまざまな意見をいただいておりますが、各事業とも、おおむね適切に実施されていると評価されているものと受けとめております。今後、新たな計画の策定に当たりましては、教育委員会等で改めて議論を行っていきたいと思います。
今後の計画については、3年目に見直しを行ったらどうかとの1つ目のご提案についてですが、教育の安定性、区全体の基本計画や、今後策定が予定されている子ども・子育て支援事業計画との整合性を考えますと、引き続き5年計画としつつ、子どもたちや教育を取り巻く環境の変化に応じ、議員ご指摘のように、計画期間内であっても適時適切に必要な改定を行っていくという方向が妥当であると考えております。
また、2つ目のご提案である計画の成果物のサイズや概要版の作成につきましては、このご指摘を踏まえ、多くの人に内容を理解していただけるよう工夫をしていきたいと考えます。
〈次世代育成担当部長答弁〉
大串議員の子ども・子育てのご質問のうち、子ども・子育て支援事業計画についてのご質問にお答えいたします。
子ども・子育て支援事業計画は、質の高い教育・保育や、子育て支援の計画的かつ安定的な提供を通じ、子どもの健やかな発達を保障するためのものです。計画は、より質の高い教育・保育の提供を前提に、保育の量的拡大・確保を図り、待機児童を解消し、さらに地域の子ども・子育て支援を充実させていくことを内容とするものです。したがいまして、当然に、保育の質ということについての議論も踏まえた上で、今後、計画の策定を行ってまいります。
〈再質問〉
14番大串です。自席より再質問させていただきます。
まず、教育の目標についてですけれども、子どもの幸せのための教育をいかにしたら実現していくのか、できるのかということについて、具体的に自立性・個性を育む教育、それから、共同性・社会性を育む教育、それから自尊感情を高めること。これは私が言っているんではなくて、共育マスタープランの中で言われていることであります。非常に大事なことだと思います。だけど、今ご答弁の中では、この自立性とか社会性という言葉は出てこなかったわけでありますけれども、この点についてはどうかということ。それから、この掲げた目標に対する評価はどうだったんですかということも聞きましたので、その点もあわせて、第三者の方はどう評価されたのか、また、教育委員会としても3年間を経過してどう評価されているのか、お伺いします。
それから、読書コンシェルジュについてですけれども、残念ながら実現はできなかったということで、現在、観光案内をする等々のお話がありましたけれども、私はこの社会を挙げて子どもの読書を推進するということから、読書コンシェルジュ、非常に大事です。資料探索の方法を育むためにも大事なんで、ぜひもう一回この読書コンシェルジュの育成、お願いしたいと思います。よろしくお願いします。
〈区民生活部長答弁〉
大串議員の読書コンシェルジュに関する再質問にお答えいたします。
この読書コンシェルジュにつきましては、出版界の皆様方とも調整を行いましたが、読書コンシェルジュというものの位置づけ、また、定義づけを明確にすることができなかったという経緯がございます。第2次計画につきましては、ご指摘の趣旨も踏まえまして、改めてこのことにつきまして計画を検討してまいりたいと思います。
〈教育長答弁〉
大串議員の再質問、教育の目的について、お答えいたします。
私の当初の答弁の中で、教育の目的の1つに、よりよい明日の社会を形づくることができる力を備えた自立した人間を育てることにあるということを申し上げました。また、それを補足して、困難な状況の中で自分の能力を発揮できる自立意識を持つ子ども、要するに、それがまさに個性なり自立心でございます。また、子ども同士がさまざまな場で切磋琢磨し合い、協力し合うことで生まれる共生意識、これがまさに社会性でございます。当然、個性・自立性、さらに社会性を教育の中できちんと千代田区としても育んでいきたいという趣旨でございます。共育マスタープランにのっとったそのとおりの教育を実施していく所存でございます。
〈子ども教育部長答弁〉
大串議員の教育の基本理念に関する評価についてのご質問にお答えいたします。
先ほど申し上げましたように、実はこの評価の方法でございますけども、現実には、その理念のもとの各施策、それにぶら下がる事業についての評価が主な方法、やり方でしたので、この全体の大きな考え方そのものの評価というのは、その場では特に議論はしてございません。今後は、この策定に当たっては、そういったものを含めて検討してまいりたいというふうに思います。