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平成17年第1回定例会

今、子ども施策に求められる理念「『子どもの権利』を最優先に!」

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〈質問通告〉

今、子ども施策に求められる理念「『子どもの権利』を最優先に!」

  • 区長に子ども施策推進にあたっての理念を問う

  • 小学校でのCAPプログラムの実施を!

  • 子どもの意見表明と参加の仕組みとして(仮)子ども会議の開催を!



〈質問と答弁の全文〉

 平成17年第1回定例会にあたり公明党議員団の一員として一般質問させていただきます。私は、昨日の山田永秀議員の代表質問にありました子育て支援策に関連して3点の質問を行います。
 昨今、子どもの生活・環境をとりまく「安心・安全」の危機が叫ばれています。子どもへの虐待は増加の一途をたどり、子ども同士の深刻な事件も続発し、学校への暴漢の侵入など今までの常識では考えられない状況があります。自治体として子どもへの暴力や虐待防止への取り組みは重要な課題となっています。
 最初にその取り組みの一つでありますCAPプログラムから質問を行います。
 このCAPプログラムは、今年度は区内の全保育園で実施されました。NPO法人青い空にお願いしています。CAPとはChild(子ども)のC、 Assault(暴力)のA、 Prevention(防止)のPの略で「子どもへの暴力防止プログラム」と約され、子どもたちがあらゆる暴力から自分を守るための方法を学ぶ参加体験型の人権プログラムです。そしてその理念とするところは、子どもの本来持っている力を引き出してあげる。そしてその力を引き出すために、誰にも安心して、自信を持って、自由に生きるそれぞれの権利があることをロールプレイ(寸劇)により参加体験型で教えることとされています。原則クラス単位で子どものためのワークショップ(研究集会)と大人のためのワークショップ2回行われます。
 このCAPをアメリカより日本に最初に紹介した森田ゆりさんは、人間が本来持っている力を自ら発揮することをエンパワメントと表現しています。「エンパワメントとは人と人との関係のあり方だ。人と人との生き生きとした出会いの持ち方なのである。大人と子ども、女と男、私と障害者、あなたとお年寄り、私とあなた、私とあなたが互いの内在する力にどう働きあうかということなのだ。力のある者がない者にそのパワーをおすそ分けをするのでもない。持てる者が持たざる者にあげる慈善行為でもない。お互いがそれぞれの内に持つ力をいかに発揮しあえるかという関係性なのである。エンパワメントの思想は『人間はみな生まれながらにしてみずみずしい個性、感性、生命力、能力、美しさを持っている』と信じる」と述べています。私はこの言葉に「今、子どもに接するに必要なのはこれなんだ」とある感動が込み上げてきました。
 先ほどのCAPの理念はまさにこのエンパワメントに相当し、そのために子どもの安心・自信・自由に生きるための権利、自分を大切にする心を教えています。私はすばらしいと思いました。従来型の防止方法は、子どもは暴力に対して何もできないから、大人の力で子どもを守ろうという考え方に依っています。「一人で行動してはダメ」「~したら怖い目にあうよ」と「~してはいけません」式の、子どもの行動範囲を制限したり、規制しようとすることでした。これは「あなたは弱いんだから危険を避けるように行動しなさい」という方法です。これでは子どもは危険な状況に陥っても何の知識の手段も情報も教えられないので、子どもはいったいどうしたらいいのかわかりません。行動のみならず心のあり方まで規制され子どもは漠然とした恐怖感や無気力を抱くかもしれません。回避ばかり教えるので万が一そのような暴力にあってもあった自分が悪いと自らを責めてしまわないかと心配です。
 これらのことを考えると、従来の規制型防止策だけでは決して十分とは言えません。ちょうど2月7日の朝日新聞に練馬区の小学校でこのCAPを行っている様子が写真入で大きく紹介されていました。活動されている方の話を紹介し以下のように結んでいます。
 「『ある川で子どもが溺れる事故が絶えなかった。大人は柵、立て札、監視小屋を作ったがそれでも溺れる子どもは減らない。なぜなら子どもは泳ぎ方を教わっていなかった』CAPは子どもたちに泳ぎ方を教える。とてもすばらしいと思った」と。
 このCAPは、区内では平成13年度に富士見小学校PTAが実費で始めたのが最初であることを最近知りました。富士見小学校での実施が大変子どもたちや保護者の方々に好評だったため、区の事業として翌年の14年度から2年間、一つの学年ですが全小学校でクラス単位によるCAPが実施されました。そして今年度は全保育園で実施されたところです。保育園でも大変好評であったそうです。しかし、小学校でのCAPは今年度東京都の事業である警察官が来てのセーフティ教室に変わりました。このセーフティ教室の目的は、一番目に児童生徒に、警視庁職員の専門的な立場からの助言を与え、犯罪についての社会的意味を理解させるとともに、児童生徒の規範意識と自立心を図るとなっています。このセーフティ教室とCAPとの理念は明らかに異なります。
 そこで提案ですが、セーフティ教室とともに再度小学校でのCAPプログラムを再開できないかということです。それは保護者を始め、地域の方も、学校の先生方もCAPの理念を理解して子どもに接することが重要なこと、そして何よりも子どもたちが安心・自信・自由という子どもの権利があることを知り、自分を大切にする心を学ぶことができるからです。
 そこで、小学校でのCAPプログラム実施に対する見解をお伺いします。

 さて、この「子どもの権利」ということでは議会としても今まで多くの議論を行ってきました。特に平成13年に設置されました「子育て環境整備特別委員会」は、子育てに関して縦割りを廃し、福祉、保健、教育及びまちづくりそして男女平等推進等のあらゆる分野で多面的な子育て環境の整備について2年間にわたり審議を行ってきました。その結果をまとめた「懸案事項」の中に、「平成元年に、子どもの権利条約が国連総会で採択・制定され、わが国は平成6年に同様(子どもの権利条約)の批准をしている。この条約では子どもはおとなの庇護・保護の対象としてではなく、同じ人間としての存在価値を認め、その人権を保障している。全国の自治体には、子どもの権利や子育てのために地域や自治体の責務を明記し、子どもの幸せを図るための条例を制定している自治体もある。当委員会において本区の子育て施設の実態調査や他自治体の状況調査も行ってきたが、今後さらに子育ての環境を整備するためには、子育て施策の必要性を改めて認識、充実を図るために地域の実情を把握し、多くの区民の参画を得てその調査・研究を進め活発な議論を重ねていく必要がある」と、記述されました。このことは、国連子どもの権利条約の精神を生かし「子どもを単なる保護の対象として位置づけるのではなく、一人の人間として尊重し、子どもが参加し、意見を表明し、かかわっていく仕組みづくりを行政が横断的な組織としてバックアップしていく必要性があることまでを見通したものと私は理解しています。これまでの家族や地域社会の関係だけでは子どもにかかわる問題状況は打開できなくなっており、新たな子ども観に根ざした子ども施策が 求められています。
 国の方もこの「子どもの権利という視点」では大きな変化がありました。
 それは「国連子どもの権利条約」批准に際し、国は当初「新たな法律は作らない、新たな予算も必要ない」というあたかもこの条約は遠い発展途上国のことであるかのような姿勢でした。それがこの度の次世代法に基づく子ども行動計画策定のための指針が平成15年に関係する各省連名で示されましたが、その中の行動計画策定に関する基本的事項の1番目に「子どもの視点」が入れられたことです。その説明には「わが国は児童の権利に関する条約の締約国としても子どもにかかわる種々の権利が擁護されるように施策を推進することが要請されている。このような中で、子育て支援サービス等により影響を受けるのは多くは子ども自身であることから、次世代育成支援対策の推進においては、子どもの幸せを第1に考え子どもの利益が最大限に尊重されるよう配慮することが必要であり特に子育ては男女が協力して行うべきものとの視点に立った取り組みが重要である」と。つまり子どもの視点として子どもの権利条約に謳われた子どもの種々の権利を保障すべく施策を推進されることが要請されると。まさに画期的な国の方針転換ではないでしょうか。
 さらに昨年には平成12年に制定された児童虐待防止法の改正が行われました。当初この法律には理念が明記されませんでしたが、この度の改正は第1条で「児童の人権」と「自立支援」という理念が明記されたこと。さらに第4条に「国及び地方公共団体の責務」に具体的な内容が記述されたことです。
 区としては、次世代育成行動計画、通称子ども行動計画ということになります。この計画の基本的な視点として多くの子どもの権利からの視点が入りました。多様なライフスタイルを認め合うとして「お互いを認め合う」という視点が、また子どもの幸せを第一に子育ちを支援するとして「子どもが秘めている『自ら育つ力』」と「『子どもが安心して健やかに育つ権利』を大人が保障すること」の視点が、さらに文言はすこし違いますが子どもの最善の利益を図るという視点も入った行動計画となりました。
 新聞やニュースではそれこそ毎日と言っていいくらい子どもに関する凄惨な事件が報道されています。これらの現状を子どもたちのために打開していかなくはなりません。そのためには「子どもの権利」という視点から、また「新たなる子ども観」に立脚しての施策の推進が今こそ望まれているのではないでしょうか。
 そこで、区としてこの度「子育て施策の財源の確保に関する条例」も提案していますが、子ども施策全般を推進するに際し区長に基本的な考え方、理念をお伺いします。

 最後に、子ども会議についてであります。
 ややもすれば、日本の子どもは、戦後、経済最優先の社会的な枠組みの中に教育も組み入れられ、物言わず、マニュアルどおりに行動し、正解は一つと教えられ本来持っている発想まで統一され、アイデンティティ(主体性)も個性も奪われてきたのではないか。おとなの立場からすれば、自分を放棄し、意見表明をしない、上から言われたことを素直にきちんとこなす人間になることがエリートであり出世する人間像と意図せずとも子どもたちに押し付けてこなかったか。まさに欧米とは正反対の教育と言ってもいいもしれません。このことを元一橋大学教授で現在山梨学院大学教授の福田雅章氏は「子ども期の喪失」と表現し、「子ども期」がきちんと保障されることの重要性を訴えています。そしてそのためにはすべての子どもに自由な意見表明と参加の権利を保障するための仕組みを今こそ子どもに身近な自治体として作っていかなくてはならない、と。私もまったく同感であります。区として実施しているものに今年度からの「青少年区政モニター制度」があります。公募により27名の在学・在住の子どもたちが自ら参加しています。現在、三つに分かれてグループワークを行いその成果を近々報告書としてまとめられるそうです。高校生に限ってみれば、平和使節団なども意見表明や参加の場となっています。おとなの中に入ってもしっかり自分の意見を述べ、団長の役も自ら進んで行っています。帰ってきてからも現地でのその貴重な体験は意見表明する際の糧になっていることは間違いないでしょう。
 平成12年第3回定例会では自民党一般質問の中で、小・中学生が知りたい、聞きたい発言したいという子どもたちにその機会を与え、区長自ら答える子ども会議の実施が提案されました。私はこのことはとても大事なことだと思います。単なるイベントや形式で終わるのではなく、すべての子どもが希望すれば誰でも参加と意見表明できる仕組みとして再度子ども会議の開催を提案します。また意見表明・参加を保障する上で重要となる種々の情報に対して子ども自身が容易にアクセスできる方法も整備する必要がありますが合わせてお伺いします。

 結びに、先月22日に皇太子様が愛子様に対する養育方針としてアメリカの家庭教育学者のドロシー・ロー・ノルトの「子ども」という詩をご紹介されました。私も大変その詩に感銘いたしました。子どもために私たちおとなが如何に子どもと関わっていけば良いのかが明確ではないかと思います。今日は議長の許しを得てその詩が掲載されていますスウェーデンの中学校の社会科の教科書「あなた自身の社会」を持ってまいりましたので紹介させていただきます。

「子ども」
ドロシー・ロー・ノルト

批判ばかりされた 子どもは
非難することを おぼえる
殴られて大きくなった 子どもは
力にたよることを おぼえる
笑いものにされた 子どもは
もの言わずにいることを おぼえる
皮肉にさらされた 子どもは
鈍い良心の もちぬしとなる
しかし、激励をうけた 子どもは
自信を おぼえる
寛容にであった 子どもは
忍耐を おぼえる
賞賛をうけた 子どもは
評価することを おぼえる
フェアプレーを経験した 子どもは
公正を おぼえる
友情を知る 子どもは
親切を おぼえる
安心を経験した 子どもは
信頼を おぼえる
可愛がられ 抱きしめられた 子どもは
世界中の愛情を 感じとることを おぼえる。

 以上です。

 区長ならびに関係理事者の前向きな答弁を期待し、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。


〈区長答弁〉

 大串議員の子育て支援策推進に当たっての基本的な考え方についてお答えを申し上げます。
 ただいま子どもに関する詩を朗読されましたが、私もこの詩を存じ上げておりますが、私たちを含めて大人なり教師というのが、どうも子どもさんに対して常に教える、そういう観点でどうも親が対応しているんではないか。すなわち、親というのは初めから親ではない。子育てを通じて親自身が育っていく。ある面では、親も子育てを通じて自ら育つという、こういう思いをどうも忘れているんではないか。そして、子育てを通じて子どもと親が感動を覚える、そうしたことが大変失われている。ある学者に言わせますと、どうも、私も含めて子どもに対しまして、きちんと育てなきゃいけないという、どうも親が義務感、そういうことが強過ぎるということが言われております。この詩を読みますと、そうした意味では、子育てがともどもで感動を覚え、そして支えるという、そういうふうな詩であるというふうに思っております。
 ところで、ご質問についてお答えをいたしますと、子育て施策の財源の確保に関する条例は、施策の裏付けとなる財源を明示することで、子育て支援施策を強力に推進する区の姿勢を明確にするものであります。現在、区内の各事業所で策定されております行動計画をも踏まえ、本区の行動計画をさらに充実、発展させてまいりたいというふうに考えております。
 子育て施策を実施するに当たっての基本的な考え方は、我々大人は、社会全体として本当に子どものためになることは何かを考えることだろうと思います。すなわち、子どもは子どもなりに生きる力を持っております。子どもが秘めている自ら育つ力を大切にし、子ども自身が自らの存在がかけがえのないものであることを自ら学び、命の大切さ、他者の存在を尊重し、他者とともに生きる意味を理解することが重要だろうというふうに認識をしております。
 今後、ただいま申し上げました子どもにかかわる基本的な考え方も含め、本区の行動計画をさらに発展、充実するための論議の場として、仮称でございますが、「千代田区次世代育成対策協議会」の中で、本区の行動計画の進捗状況、具体的な施策のあり方などを論議し、子育て施策のさらなる展開を図ってまいりたいというふうに思っております。
 その他につきましては、関係部長から答弁をいたさせます。

〈政策経営部長答弁〉

 大串議員のご質問のうち、子どもの意見表明と参加を保障する仕組みづくりについてお答えいたします。
 子ども自身が社会参加の機会を持ち、そのことを通じて自分の意見を表明できる能力を身につけることは、将来にわたって大切なことであります。そうしたことから、ご質問の中で紹介のありました「青少年モニター制度」を今年度から開始しておりますほか、平成15年度には、中等教育学校に対する小・中学生の要望や質問を表明してもらう「子ども評議会」を開催するなどの取り組みを行ってきているところであります。今後も、機会あるごとにこうした子どもが自ら意見を表明する場を設定していく考えであります。そうした際には、子どもに対する情報の提供につきましても、ご指摘のとおり、効果的な方法を検討し、子どもが活発に意見を表明できるようにしてまいります。

〈教育委員会事務局次長答弁〉

 大串議員の小学校におけるキャップの実施についてのご質問にお答えいたします。
 子ども暴力防止教室、キャップの実施につきましては、平成13年度に富士見小学校で実施以来、14年、15年度、2年間にわたりすべての小学校において実施してまいりました。その結果、子どもたちや保護者の方々が様々な場に応じて、体験的に暴力被害から身を守る方法や自信を身につけることができ、一定の成果を上げたところでございます。教育委員会といたしましては、これらの成果を踏まえるとともに、平成16年度から、昨今の子どもたちや学校の安全を脅かす事件の発生を十分に勘案し、学校のみならず家庭や地域社会との連携を強化しながら、児童・生徒が犯罪から身を守る方法を身につけるセーフティー教室実施に切りかえたところでございます。
 したがいまして、今後、その成果を学校、保護者等と検証し、キャップを含めたより効果的なプログラムを検討してまいりたいというふうに考えております。

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