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令和元年第4回定例会

いじめも虐待もない千代田を目指して!

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野田市の「児童虐待死報告書」を示して

質問通告

いじめも虐待もない千代田を目指して!

  • いじめも虐待もない千代田を目指して、子ども支援、子育て支援、保育・教育、母子保健などを含めた全体構想を示 すべき! 

  • 子どもの権利の普及・啓発と教育を今後どう行っていくのか!

  • 第三者による子どもの権利擁護機関の設置を条例の制定も含めて提案する。所見は!

​〈質問と答弁の全文

 令和元年第4回定例会にあたり、公明党議員団の一員として一般質問させていただきます。
 子どもの虐待やいじめが後を絶ちません。子どもの権利への重大な侵害であります。そこで、質問の趣旨ですが、子どもの権利を守るための区の取り組みを問い、虐待もいじめもない千代田へその道筋を明らかにすることにあります。
 今週月曜日、野田市の小学校4年生女児の虐待死に対する検証報告書が知事あて提出されました。「おわりに」にはこう書かれていました。「『先生、どうにかできませんか』と、・・児童本人がこうした訴えをすることは稀であり、勇気を持って訴えた本児は、何としても守られるべきだったし、救える命であった」と。そして、提言の1の1には「子どもの権利擁護、子どもの最善の利益を最優先にした取り組みを貫くこと」と書かれたのです。大事な報告書となりました。
 最初に、虐待の件数と学校におけるいじめの件数を確認したいと思います。(スクリーン①を表示)

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​スクリーン1

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​スクリーン2

 これは虐待件数の推移です。児童相談所が相談を受け、指導や措置等を行った件数をカウントしたものです。平成30年度は約16万件にまでになっており近年の急増ぶりがわかります。(スクリーン①を閉じて②を表示)
 こちらは全国の学校におけるいじめの件数です。平成30年度は小中高合わせて約54万4,000件であり、前年度比約13万件の増で過去最高となっています。内訳ですが、小学校が約42万6,000件、中学校が約98,000件、高校は約18,000件であり、圧倒的に小学校におけるいじめが多いことがわかります。(スクリーン②を閉じて③を表示)

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​スクリーン3

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​スクリーン4

 また、年間30日以上欠席となっている「不登校」の小中学生は約16万5,000人であり、前年比約2万人増でこちらも過去最多となっています。近年は小学生、中学生の数が増えていることがわかります。(スクリーン③を閉じる)
 千代田区も例外ではありません。いじめが原因で登校できない小学生や、やむなく転校を余儀なくされた小学生もいます。全国的なこのような状況に、国は「子どもの権利」またその考え方を特に平成28年以降、法や指針に位置づけたことは皆様もご存知の通りであります。

 「子どもの権利」について若干触れておきたいと思います。
 東京大学名誉教授で子どもの権利条約市民・NGOの会代表の堀尾輝久氏が述べています。「子どもの権利条約第3条に掲げられ、子どもの権利の軸になっている『子どもの最善の利益』(Best interests)とはなんでしょうか。interestを『利益』という前に『興味関心』という意味で理解する事が必要です。親や保護者が一方的に、これが最善の利益なのだと押し付けるのでは、本当の意味での子どもの最善の利益の保障にならないどころか、子どもの存在を無視したことになります。(中略)子どもの最善の利益とは子ども一人ひとりの要求に耳を傾け、目を合わせ、受け止めるという感性を含んで、初めて理解されるのであり、子どもへの働きかけの前提が築かれるのです。子どもの充足感が得られるような状態とそのための関係づくりが大事です。(中略)子どもの権利というのは一人ひとりが持つ権利ですが、同時に要求した主体とそれを受け止めて対応する側との関係を含むものであり受容的・応答的関係性の中で子どもの権利を捉え直していく姿勢が大事です。以上のことを理解しながら、何がこの子の本来の要求なのかを考えて、子どもの権利に応えることが、最善の利益を実現することです」と。つまり、「子どもの最善の利益」とは、子ども一人ひとりの要求に耳を傾け、目を合わせきちんと受け止め応えてあげる受容的で応答的な関わり方(関係性)をもって子どもの要求に応えてあげることであると。極めて大事なことであります。そして、「その関係性の中で子どもは成長発達できる」ということはいうまでもありません。(スクリーン④を表示)

 この第3条子どもの最善の利益と第12条の意見表明権を中心軸とし、第2条の差別の禁止、第6条の生命・生存・発達に関する権利を加えた4つの権利が子どもの権利条約の一般原則といわれています。(スクリーン④を閉じる)
 この子どもの権利が、様々な法律に位置付けられたことについてです。
 その最たるものは、平成28年度に改正された児童福祉法であります。総則規定に子どもの権利が基本理念として据えられたのです。(スクリーン⑤を表示)

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​スクリーン5

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​スクリーン6

 第一条では「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり」と規定され、第2条では「全て国民は・・・児童の年齢及び発達の程度に応じて、その意見が尊重され、その最善の利益が優先して考慮され、心身ともに健やかに育成されるよう努めなければならない」と。そして第3条には、「前2条に規定するところは児童の福祉を保障するための原理であり、この原理は、すべて児童に関する法令の施行にあたって常に尊重されなければならない」とされたのです。総則規定にここまで書かれたことは画期的なことであります。日本の全ての子どもに関する法律の根幹に子どもの権利が据えられたことになります。(スクリーン⑤を閉じて⑥を表示)
 教育の方では、同じ平成28年12月に、超党派(自民党、公明党、当時の民進党、当時のおおさか維新の会など)の議員による議員立法「教育機会均等法」が成立しました。第一条の目的には「教育基本法及び児童の権利に関する条約等の趣旨にのっとり、不登校児童生徒に対する教育機会の確保等を・・・総合的に推進することを目的にする」と書かれたのです。(スクリーン⑥を閉じる)
 母子保健法の改正も平成28年度でした。「子どもの権利」との文言はありませんが、児童福祉法の改正と合わせ、区市町村に妊娠から出産、子育てまで切れ目ない支援を行う子育て世代包括支援センターの設置が努力義務としてきちんと位置付けられました。(スクリーン⑦を表示)

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​スクリーン7

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​スクリーン8

 そして、今年の6月には体罰の禁止を明記した児童福祉法の改正です。同時に附則第7条第4項に、「政府は施行後2年を目途として子どもの意見表明の権利、また子どもの権利を擁護するための仕組みをつくること」とされました。(スクリーン⑧を閉じる)
 以上のように、子どもの権利またその仕組みの構築まで矢継ぎ早に多分野にわたり法や指針に位置付けられたのです。これは虐待やいじめの問題を家庭の問題や学校の指導上の問題として捉えるのではなく、何よりも子どもの権利の問題として捉えなおしていかなくては解決しないとの決意の表れではないでしょうか。
 子どもの権利を基本に据える法整備が行われた今、区として関係する部署や機関を始め区民と共にその思いを一つにして、虐待もいじめもない千代田を目指し具体的な取り組みを開始すべきではないでしょうか。
 そこで、子ども支援、子育て支援、保育・教育、母子保健、都の児童相談所、警察、要保護児童対策協議会などを含めた虐待やいじめの防止対策の全体構想(グランドデザイン)を示すことを提案いたします。区民と共に取り組むために必要だからであります。区としての基本的な考え方と現段階で描かれている全体構想をお示しください。


 次に、子どもの権利の普及・啓発と教育についてであります。(スクリーン⑨を表示)

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​スクリーン9

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​スクリーン10

 子どもの権利の普及・啓発と教育ということでは、子どもの権利条約が国連で採択されてより30周年の本年区内の小学生、中学生全員に「子ども版共育ビジョン」が配布されたこと、大いに評価いたします。内容は子どもの権利について小学性にもわかりやすくイラストなどを多用し作成されました。(スクリーン⑨を閉じて⑩を表示)
 イラストやデザインは共立女子大学の学生さんに協力していただきましたが、内容部分は一年生から六年生までの小学生自ら手掛けました。写真は子どもの権利について話し合いながら学ぶワークショップを行っているところです。この時はこのようなテーブルが3つあり9名の子どもが参加されたそうです。ファシリテーター役を務められた方からお話もお伺いできました。(スクリーン⑩を閉じる)「子どもたちの言葉に、はっとさせられることもありました。子どもたちは冊子の作成を通して子どもの権利を自分たちの権利として学ぶことができたのではないでしょうか」と。
 今後、同じように中学生が作成する中学生版の共育ビジョンを作成してはどうでしょうか。小学生版、中学生版がそろうことになります。そして、例えばこの冊子を教材として親子で子どもの権利について一緒に学ぶ機会をつくっても良いと思います。子どもは勿論ですが、保護者をはじめ大人も子どもの権利を正しく理解することが必要だからです。
 権利があっても知らなくては使うことができません。「相談する」という最初の一歩も踏み出せないのです。
 そこで、今後、子どもの権利について普及・啓発と教育をどう行っていくのかお伺いします。また、中学生版の「共育ビジョン」の作成を提案いたします。ご所見をお伺いします。


 次に、子どもの権利を守るための具体的な仕組みについてであります。
 公的な第三者による子どもの権利擁護機関の設置であります。
 この件については、平成29年第3回定例会にて世田谷区の「せたがやホッとサポート」の例を紹介し子どもの権利を守るための第三者機関の設置を提案いたしました。その時の答弁では「区や他の機関に申し入れや意見表明ができる公的な第三者機関の設置に関しても視野に入れ、一件一件の相談に、心と心をつなぐ関係性が築けるような『子どもが健やかに育つ権利』の実現に向けて取り組んでまいります」と、前向きな答弁をいただいています。
 子どもの権利擁護機関とはどういうものなのか、改めて確認しておきたいと思います。この擁護機関の設置については国連子どもの権利委員会から再三にわたって日本に勧告されていたことです。子どもの権利擁護機関は、先に述べました「条約の一般原則」を守る機関でありますが、機能としては、第一に個別救済、第二に提案や勧告による子どもの権利を守るための制度改善、第三に行政から独立した立場から子どもの権利が守られているかの監視、そして第四に子どもの権利の普及・啓発と教育であります。
 具体的には、単なる相談窓口ではなく、子どもの救済や支援のために必要ならば学校や行政その他の機関に対して「調査」することもでき、それら機関に対して行為の是正や制度の改善等を求めて「勧告」や「意見表明」もできます。さらに区民への公表、必要ならばマスコミ等を通して広く社会へ訴えることもできるとします。
 このような権利養護機関を設置しているのは、23区では世田谷区の他は目黒区と豊島区であります。今回質問するにあたって議員団として豊島区を訪問し説明を聞くことができました。豊島区では子どもの権利を総合的に保障し、推進するための「子どもの権利に関する条例」を持っていること、そして子どもの権利を守るための「子どもの権利擁護委員」を設置していることなどととても参考となりました。
 公的な第三者機関を設置することが、どれほど子どもたちを守ることになるか、またSOSを安心して発することができることか。千代田区としても早急に設置に向けて準備すべきであります。
 そこで、公的な第三者の子どもの権利擁護機関の設置を設置条例の制定と合わせて提案いたします。ご所見をお伺いします。
 質問は以上であります。
 区長、教育長並びに関係理事者の前向きな答弁を期待いたしまして一般質問を終わります。
 ありがとうございました。



教育長答弁

 大串議員の子どもの権利擁護機関の設置と条例制定に関するご質問にお答えいたします。
 議員ご指摘のように、全国でいじめ、不登校、児童虐待の件数は急増しており、残念ながら痛ましい事件も頻発をしております。本区においても決して例外ではないというふに認識しております。子どもの権利条約では、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」と大きく4つの子どもの権利を保障するものとしております。子どもは、大人への成長する過程で保護や配慮が必要ですが、子どもを単に庇護する対象、つまり、権利の客体としてではなく、大人と同じように一人の人間として権利の主体として捉えなおしたものと理解しております。
 このことを前提に、地域全体で子どもたちを育んでいく必要があるということにつきましては、私も大串議員と同じ認識であります。
 子どもを取り巻く家庭、地域環境の変化やいじめ、虐待など差し迫った課題への対応といった昨今の状況を鑑みますと、子どもの個別救済はもとより、子どもにまつわるさまざまな制度の改善提案等を行う第三社者機関の設置。そしてこのことを視野に入れた条例につきまして検討を検討を始める時期に来ていると認識をしております。本区の実情を踏まえ、鋭意検討を進めてまいります。



子ども部長答弁

 大串議員のいじめや虐待防止対策の全体構想、子どもの権利についての普及・啓発と教育、中学生版「共育ビジョン」に関するご質問にお答えいたします。
 議員ご指摘のとおり、区として子どもの支援から母子保健までも射程に入れた全体構想を示していくことは重要であり、求められるものと認識しております。
 このため、これまでは、児童・家庭支援センター、保健所、学校、幼稚園・保育園、警察等の関係機関を構成員とする要保護児童対策地域協議会を中心にして、虐待マニュアルの共有と子どもの権利の普及啓発に努めているところです。今後は、児童相談所のみならず、妊娠期から子育て期まで切れ目ない支援を行う「子育て世代包括支援センター」機能を有する(仮称)子ども総合サポートセンター構想を中心に、子どもたちの命と権利を区全体で守られるよう、引き続き鋭意検討してまいります。
 区では、本年3月、子ども版「共育ビジョン」を作成し、小学校4年生以上の区立小中学校の児童・生徒に配布いたしました。配布に際しては、学校現場において道徳の授業等での活用をお願いし、今後、新4年制に対し、継続的に配布し、さまざまな形で活用をを進め、子どもたちに自分たちの権利について、理解を深めてもらおうと考えております。ご指摘の通り、子どもの権利については、社会全体での認識が深めることが非常に重要であります。学校現場以外での取り組みにつきましても、ご提案いただきました親子で学ぶ機会など、教育委員会だけでなく、人権という観点から区長部局とも連携して、検討を進めてまります。
 また、中学生版「共育ビジョン」の作成につきましては、中学生から「子ども版共育ビジョン」のデザインや教材としての活用についても意見を聞き、中学生が、自分たちの共育ビジョンと感じられる冊子とはどのようなものかを研究し、検討を進めてまいります。

​大串 ひろやす通信

公明党議員団ニュース

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