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平成19年第1回定例会

​共生社会の実現を目指して!

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地域生活環境指標マップ(武蔵野市)を示して

〈質問通告〉

共生社会の実現を目指して

  • 新生・千代田区政のスタートにあたり質問を行う

  • 新生・千代田区政の目指すものは何か

  • 共生社会実現のための方途は何か

  • 地域生活環境指標マップの作成を提案する、所見は



〈質問と答弁の全文〉

 平成19年第一回定例会にあたり公明党議員団の一員として一般質問を行います。 
 今年は千代田区が発足して60年を迎える節目の年であります。区としては、区長が招集挨拶で述べられましたように「新生・千代田区政」として新たにスタートするわけであります。そこで、私はこれからの区政の目指すべきもの、特に区長が強調してやまない「共生」の理念また「共生社会」の実現について質問をさせていただきます。 

 さて、「共生」ということでは千代田区とも縁がある中国の大政治家周恩来について最初に触れておきたいと思います。
 区の愛全公園には日中友好協会が周恩来生誕100年と日中平和友好条約締結20周年を記念して設置した「周恩来ここに学ぶ」の碑があります。申すまでのなく周恩来は1949年から76年まで実に26年間にわたり中華人民共和国の総理を勤められた大政治家であります。世界あらゆる国の政治家と多くの会談を行っています。1954年のネルー・インド首相との間の平和5原則、アジア・アフリカ諸国の歴史的な連帯を果たしたバンドン会議などは「周恩来平和外交」として特に有名であります。これら会談・対話の基本にあったのが、実は共生の理念と相通じるもので、国際政治の中で差異を尊重しながら大同につくという「平和的共存」という考え方でありました。例えば、日中国交回復に大変貢献された政治家である松村謙三氏が1959年(当然まだこの時はまだ正常化前でありますが)中国を訪問された際の送別宴における挨拶でこのように述べています。「私と松村謙三先生は何回か話し合いを行った。われわれは双方とも日中両国人民が平和共存の五原則とバンドン会議の十原則を土台に双方の平和友好のために共に努力すべきだと信じている。この土台の上にたって社会制度の異なる日中両国はお互いに尊重し合い善隣関係をうちたてられるはずである。私は、これは私と松村先生の話し合いの内容であるばかりでなく同時に日中両国人民の共通の願いであり、これはまたここにおられる多くの日本の友人の願いでもあると思う」と。(周恩来選集より)「周恩来は共生のエートス(心的傾向)が脈打っている」とも「共生の心が結晶している」といわれる所以もここにあります。
 周恩来は19歳の時に母国中国を救うために学ぼうと雄大な目標を抱いて日本に留学しました。1917年9月から1919年4月まで神田神保町に住み、猿楽町にあった東亜予備校に通いました。若き日の周恩来がこの千代田区に住み、学んだということは私たちの誇りでもあります。今年は日中国交正常化35周年にあたりますが、今週月曜日には千代田区日中友好協会と北京市西条区対外文化交流協会主催による北京「豊盛(ほうせい)少年宮」来日初公演が一ツ橋共立講堂で行われました。北京市からは豊盛少年宮の少年少女たち43人が、千代田区からは御茶ノ水小学校の和太鼓クラブと共立女子学園高校吹奏楽部のメンバーが出演し交流しました。両国の子どもたちがこのように交流できることは非常に有意義なことだと思います。来年は周恩来生誕110周年を迎えることとなります。
 さて、「共生」の必要性について、「歴史の峠」(P・F・ドラッカーのいう)という表現で社会経済システムの転換を主張されているのが東京大学経済学部教授の神野直彦氏です。神野氏は「人間の欲求には二種類あり、一つは『ものを所有したい』という所有欲求で、もう一つは『自然と人間との関係、また人間と人間との関係の中で満たされていくとされる』存在欲求である。近代の工業化社会の歴史はこの所有欲求を充足することを優先し、存在欲求はその犠牲となってきた。これから私たちが目指すべきものは自然と人間、人間と人間との共生、つまり異質なものをそれぞれ異質なものとして残していくような社会を目指すべきで、そういうときに私たちは真の「豊かさ」や「幸福」を感じることができる。いわば存在欲求の充足への歴史へと変わった」と、主張します。私もまさにその通りだと思います。
 所有欲求から存在欲求充足への歴史の転換を、区長は言葉こそ異なりますが「成長・発展を重視した社会」から「家庭や地域を大切にした社会」へと職員向け年頭挨拶の中で述べられました。新聞から引用しますと「現在、明治維新、戦後改革に次ぐ『第三の改革』の時期を迎えており地方から新しい社会を創っていく分権改革を進めなければならない。そのためには既得権に縛られがちな国や東京都と対決しなければならない場面も生じるであろう。これまで『成長・発展を重視した社会』であったが『第三の改革』では『家庭や地域を大切にした社会』を復権させることが求められている。このことは国や都道府県では行うことができず、基礎的自治体こそが主役となる」と。神野氏の「歴史の峠」も区長の「第三の改革」も共生の理念を基本とした共生社会の実現を目指したものと私は理解しています。
 全国的に子どもを取り巻く様々な問題を始め、格差の拡大と階層化の問題、水と緑の景観がコンクリートで覆われていく環境問題、人間関係の希薄化の問題などすべてが行き詰まっており、これら多くの課題にいまだ明確な方向性も示せない現状に国民は閉塞感から抜け出せない状況にあります。このような中、自治体として区政運営の基本に共生の理念を据え、共生社会の実現を目指すということをかかげられたことに、私は誠に時機を得たものと高く評価しています。国民が求めているのは次の50年、100年先までを見通した明確な理念とビジョンであります。
 そこで、60年の節目を迎えた今、「新生・千代田区政」として目指すものは何か、改めてお伺いいたします。

 次に「共生社会」実現のための具体的な方途についてであります。
 理念と目指すべきビジョンがあってもそれをどう実現していくのかという方途、プロセスがなければなりません。これまでのように黙っていても行政が何でもやってくれた時代ではなくなりました。また行政だけに公共を委ねる時代でもありません。今は個人や家庭の枠を超えて地域を始め様々な団体や機関などと協働しながら解決を図っていくことが必要であります。その際、地域の現場から公共の課題を発見し、共有し、解決していくという方途・プロセスが大事となります。この点に関して私は今までに、自治基本条例の策定、協働の指針の見直し、新しい公共の定義などを提案させていただきました。この度、これらとは次元は異なりますが「対話」と「交流」をその中心軸に置くとことを提案したいと思います。これは最初に紹介した周恩来が政治の手法として一貫して用いたものであります。相手の存在を認め、その存在の価値や条件を尊重し、互いに参照し学び合い、恩典を与え合うという対話のメカニズム(ハーバード大学教授のドゥ・ウエイン氏が述べている)はまさに共生の考え方そのものでもあります。
 これまでの中央集権の上意下達による行政運営では当然「対話」も「交流」も必要ありません。必要とされたのは共生の理念とはまったく反対の画一化と序列化であり、与えられたマニュアル通り行動するということでした。権威の言いなりになり、悪に対しても見て見ぬふりをして沈黙してしまう。そしてその秩序を乱すような存在に対しては排他的に働き小さく閉じこもってしまうしかない。排除された側は存在そのものをも否定されてしまう。これがまさに神野氏が指摘した存在欲求が犠牲にされたということなのでしょう。このような社会システムの中では、一握りのエリートを除けば子ども一人ひとりの存在を認めてあげることもできなかったかもしれません。戦後60年、いや明治以降100年続いてきたかもしれないこの流れを断ち切り子どもたちに二度とこのような思いをさせてはなりません。そのためにも、相手の存在を100%認めて、尊重し合うという共生の理念と多様性、寛容性に満ちた「対話」と「交流」という手法が今こそ必要であり、求められているのではないでしょうか。
 「対話」と「交流」ということでは区はこれまで区民の発意と創意を大切にするという点から区長を中心に行われる「まちなか懇談会」、職員が自ら地域に出向いて学びあう「出前講座」、そして昨年度から行われるようになった出張所主催によるテーマを絞っての「予算説明会」などがあります。これはこれで評価しています。企業や大学また活発なNPOやボランティア団体そして町会や商店会を代表とする地域など、大変多くの主体が集積しているという千代田区の特性を考えるとき、「対話」と「交流」を中心軸に据えることにより、区民の発意と創意はさらにダイナミックに生かされることと思います。このことにより理念とビジョンそしてプロセスが整うこととなります。
 繰り返しになりますが、共生社会実現のための方法として区政運営の中心軸に「対話」と「交流」を据えることを提案いたします。ご所見をお伺いいたします。

 次に「地域生活環境指標マップ」の作成についてであります。
 地域の課題出しからその解決方法までを区民(先ほどの多くの主体を含む)、長、議員そして職員が共に対話(議論)していくためには誰もがわかるような整理された政策情報が必要なことはいうまでもありません。私はこれまで、整理されたわかりやすい情報の提供ということでは税金の使い道を示した「わかりやすい予算概要」や「成果報告書」の作成、財政面から区の課題とその解決策の提案を示した財政白書の改訂、そして指定管理者制度導入にあたり施設白書の作成などを提案してきました。「予算の概要」や「主要施策の成果」などは年々改良がなされ、区民の方々にわかりやすいと評価されています。
 さて、現在区には数字とグラフで示された行政基礎資料集がありますが、区民にはあまり利用されていません。逆にあったら利用したいのにないのが課題ごとマップにされている情報地図集です。例えば環境問題を話し合う際に必要となる水と緑の景観マップ、ここには地域ごとに水辺整備計画や緑化計画などがマップにおとされていればわかりやすく便利です。防災については消防車が入っていけない道路やAEDが設置されている場所などが一目でわかれば議論しやすいでしょう。政策情報としてこのようなマップを作成しているところに武蔵野市があります。1973年以来5年の計画改定の前年に分野ごとに課題となる項目をマップにして公開しています。私もさっそく訪問しそのCDを購入し担当者の方から作成して良かった点や市民の利用状況などを聞くことができました。(現物を提示して)
 役所の縦割りの弊害でしょうか、各課所管する課題情報を別々にしまいこんでいるのみでは住民は地域の課題としては何があるのか、また課題解決のための知恵や力も出しようがありません。突然役所からこの地域にはこういう課題があるからこうすることになったといわれても地域の住民はただびっくりするばかりでそれからではもはや「対話」になりません。住民と関係者を説得させるための説明会でしかありません。どんなに良い政策もプロセスがないものは先ほどの住民の存在欲求は無視されていることになり「満足」や「幸福」はあまり感じないのではないでしょうか。
 実りある「対話」と「交流」を行うために、政策情報としての「地域生活環境指標マップ」の作成を提案します。ご所見をお伺いいたします。

 以上、新生・千代田区政のスタートにあたり提案も含めて3点質問を行いました。最後に周総理の青年に向けての次の言葉を引用して私の質問を終わりたいと思います。
 「つねに広範な大衆に接してこそ、勇気がわいてくる。部屋に一人で閉じこもり、見ざる聞かざるを決め込んでいてはいけない。千軍万馬(せんぐんばんば)のなかにあって、すすんで人々と交わり、人々を説得し、教育し、また人々に学び、もっとも広範な人々を結集して共に戦う。これこそ勇気といえる。
こういう人間こそ素晴らしい勇気と言えるのである。特に青年は、このような気風を身につけることが必要なのである」(「周恩来と池田大作」朝日ソノラマより)
 以上であります。ありがとうございました。


〈区長答弁〉

 大串議員のご質問にお答えいたします。
 ご質問をお聞きしていて、まさに、我々は歴史に学ぶという言葉がありますけど、それをつらつらと考えておりました。そうした中で、最近、作家の塩野さんが「ローマ人物語」、これは大作なので、私もまだ読んでいないんですけれども、その端々の中にローマ人の心は寛容であるということを言っております。ローマが長く続いたということを対話の中で申し上げております。まさにこの考え方は共生というものに通ずるものだろうと思います。そんなことをご質問をお聞きしながら感じたところであります。
 ところで、今年の1月の職員の招集あいさつでも、まさに今、我々の時代は第三の改革の時代だということを申し上げ、成長ということから、むしろ身近なところを大切に、家族を大切にという、そういうことをきちっとやっていくことが、我々自治体も含めて大きな改革の目標だろうと。このバックボーンと申しますか、理念はまさに共生という理念であるというふうに思っているところであります。
 本来、身近な基礎的な自治体が、私たち日本人が古来持っている家庭や地域を大切にするという文化をもう一遍復権することが、これからの地域づくりにおいて一番肝要だろうと思います。そのためには、身近な地域社会で生活している人々が、地域を大切に、そして、共同体意識を持って、お互いの生き方あるいは存在を認め合うという地域社会づくり、まさに共生社会づくりが、地域を大切にということに通ずるものだろうと思います。
 ところで、江戸時代のありようについて様々な論議があり、私の方が開府400年ということで事業として様々なことを展開したわけですが、江戸のまちのありようは、まさに江戸しぐさというものに代表されるように、共生というのがまちの人々の1つの生活スタイルであります。あるいは江戸は、ご承知のとおり、制度的には封建制というふうに言われていますが、参勤交代を通じて地域との交流を図りました。ある面では街道が文化を運び、産業を運ぶというとらえ方をするべきではないかと思います。地方との様々な交流の歴史を集積したものがこの千代田区だというふうに思います。だからこそ、学術や文化や芸術というものが、千代田区というところにかなり集積しているということでもあろうと思います。
 我々がそういうことを考えると、大串議員がおっしゃっている、これからの共生社会を実現する上での考え方としては、まさに交流と対話をキーワードにすることが肝要だろうと思います。往々にして、対話ということを積極的にやりますと、おしかりを受ける場面があるので、ここがなかなか難しいわけですが、私自身は、基本的にはこの考え方を譲るつもりはありません。いろんな場面で区民の皆様方と意見を交換し、こちらの考え方も申し上げる場面は様々に取り組んできております。例えば昨日も民生委員の方々と約1時間半、意見交換に取り組むだとか、そういうことはいろんな場面でやってきております。多分これからもそうしたことを積極的にやらなきゃいけないし、あるいは身近な地域にお住まいの方々、住民の方々で相互に意見交換できるのが、地域を大切にするという柱になると思います。
 実はそうした意味では、区政は様々な取り組みをやっております。例えば生活環境条例が象徴的なんですけど、あれは案をつくって、地域別に何回となく論議してでき上がったもので、まさに参加型の条例だというふうに私は思っておりますし、そういう取り組みをしております。あるいは、今日、NPOとの協働参画についても、かなり突き進んでおりまして、NPOの提案について、実は門前払いをするということが趣旨ではなくて、NPOの提案について、それぞれの部門が議論をし、何とか一致点を見出すというプロセスを非常に大切にしている取り組みをさせていただいたり、参加型あるいは提案型の仕組みはかなり導入しているつもりでございます。
 どうしてこういうことに取り組んでいるかと申しますと、住民の様々なニーズ、その原点は住民にあるという基本を私は持っておりますし、そして、ある面では住民の皆様方の苦情、クレームというのは、職員にとって最高のトレーナーであると、そういう認識を持っておりますので、今後も対話というキーワードは揺るぎなく進めてまいりたいと思いますし、地域間のいろんな交流、あるいは全国と千代田区との交流、例えば天下祭りというのは、私はそういう認識のもとにやっておりまして、いろんな方々の中には、むだだとかご議論もありますけど、千代田区でつくられた歴史と意味づけは、全国的な交流がバックグラウンドにあるというふうに思っております。このことが基本的に、あるいは結果的により良い身近な地域を大切にし、あるいは協働といった意識に裏打ちされたコミュニティを構築していくことになるというふうに考えているところであります。
 その他につきましては、担当部長からお答えを申し上げます。


〈政策担当部長答弁〉

 大串議員の「地域生活環境指標マップ」についてお答えをいたします。
 地域の抱える課題を行政と地域、そして議会などが共有していく、これは非常に重要なことだというふうに考えております。そのために、わかりやすく整理された共通の情報が必要なことは、議員ご指摘のとおりでございます。
 区といたしましては、これまでも区民の皆さんにわかりやすく、区政の情報を共有できるようにということを心がけまして、ご質問の中にもございましたが、予算概要、それから、主要施策の成果、こういったものについて、一生懸命改善に努めてきたところでございます。
 今後も引き続きまして、議員ご提案の「地域生活環境指標マップ」を含めまして、わかりやすく、区民とともに課題を共有できる、そうした情報提供のあり方について、工夫検討してまいりたいと考えております。

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