真心の伝わる政治を!
大串 ひろやす
平成30年第2回定例会
1.人生いきいき百年時代を目指して!
2.小中学生の対話型美術鑑賞の実施を!
〈質問通告〉
人生いきいき100年時代を目指して!
-
高齢期の生活機能の加齢変化パターンが大きく三つに分かれることが明らかとなる。このことにより今後高齢期の虚弱化予防の重視すべきターゲットと時期が明確となった。つまり「適切な栄養の摂取」、「体力の維持・促進」、「社会参加の促進」の三側面を増進していくことである。そこで、高齢期の虚弱化予防(フレイル予防)についての基本的な考え方を問う。
-
人生いきいき100年時代へ、フレイル予防を運動として取り組むことを提案する。所見は。
小中学生の美術鑑賞支援について
-
文化芸術基本法及び学習指導要領の改訂が昨年ほぼ同時期に行われた。その特徴は、基本法では学校等との「相互の連携」であり、指導要領では「社会に開かれた教育課程」である。そこで、今後教育委員会としてはどのように「学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携」し行っていくのか。また区としてはどのように学校との相互連携を図っていくのか。
-
新学習指導要領の三つの柱の一つは、思考力・判断カ・表現力等の育成である。これらの能力を育むため、すべての教科で主体的・対話的で深い学びが必要とされた。そこで、美術館との連携を図り「対話型美術鑑賞」の実施を提案する。所見は。
〈質問と答弁の全文〉
平成30年第2回定例会にあたり公明党議員団を代表して質問を行います。
私ども公明党は、この4月より今日まで国会議員から地方議員まで全国約3000名の議員が一軒一軒訪問してアンケート調査を行う「100万人訪問調査」を行いました。アンケートは、介護、子育て、中小企業、防災・減災の4分野です。
私の場合は、介護に関するものが一番多く、特に健康づくりについてのご意見を多くいただきました。例えば、
-
水泳などの運動をもうずっと続けています。介護になってから始めようとしてもできません。
-
楽しく取り組め、毎日記入できる「健康応援手帳」のようなものがあれば欲しい。
-
皆で食事しながらおしゃべりすることが何よりの楽しみ。私の健康法です。是非そういう機会を増やしてもらいたい。
-
人のためにつくすことが健康につながっていると思います。
などであります。皆さん、健康についての意識は高く模索しながらではありますが「健康で長生き」を目指して頑張っています。貴重な多くのご意見やご要望をいだくことができました。ご協力いただいた皆様に心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。
さて、今回の質問の趣旨です。一つ目の質問は、このアンケート調査を受けてのものとなりますが、人生100年時代を迎え、加齢に伴う虚弱化(フレイル)を遅らせ、「健康寿命」の延伸を図ることが喫緊の課題であることを述べ、その方法を問うものです。二つ目の質問は、「対話による美術鑑賞」がいかに子どもたちのために有効かを述べ、その実施を提案するものです。
最初に、加齢に伴う虚弱化の予防、いわゆるフレイル予防についてであります。
まず、今後の健康づくり・介護予防を進めていく上で根拠となる大事なレポートをご紹介したいと思います。それは、東京大学高齢社会総合研究機構特任教授の秋山弘子氏が2010年に発表した「長寿時代の科学と社会の構想」であります。このレポートは、全国の60歳以上の男女約6000人を対象に、1987年から二十数年間にわたり加齢に伴う生活機能の変化を3年に一回の訪問面接調査にて実施したデータをもとにしています。そしてその変化にパターンがあることを述べ、今後の課題を明らかにしたものです。ちなみに3年に1回の調査は今も続いており現在9回目だそうです。

これは、自立して生活できる能力の加齢に伴う変化の典型的なパターンを男女別に示したグラフです。グラフの縦軸は自立の程度を表し、一番上の3点は一人暮らしでも自立して生活できる状態です。2点、1点と下がるに従って、自立度が下がり介護を必要とする状態となります。横軸は年齢となります。
秋山氏はこのグラフについて以下のように述べています。「男性では3つのパターンが見られた。2割の男性は70歳になる前に健康を損ねて死亡するか、重度の介助が必要になった。超高齢社会の若死にである。80歳、90歳まで自立を維持する人が1割、大多数の7割は75歳ころから徐々に自立度が落ちていった。女性では実に9割の人たちが70歳代半ばから緩やかに衰えていった。男性は脳卒中など疾病によって急速に動けなくなったり、死亡する人が多いが、女性はもっぱら骨や筋力の衰えによる運動機能の低下により、自立度が徐々に落ちていく。男女合わせると約8割の人たちが『人生第4期』(後期高齢者とも呼ばれる)に入る70代半ばから徐々に衰えはじめ、何らかの介助が必要になることが明らかとなった。同時に、後期高齢者には介護の対象というイメージがあるが、この図が示すように大多数の人たちは多少の助けがあれば、日常生活を続けることができるという実態も把握できた。(中略)当面、重要な研究課題は二つある。第一の課題は、下降の始まる年齢を2年でも3年でも右方向に延ばすこと、すなわち健康寿命の延長である。『人生第4期』を先延ばしすることとも言える。(中略)もう一つ重要な研究課題は、高齢者人口の高齢化により確実に増加が予測される介助の必要な高齢者の生活を支援する社会インフラ整備である。多くの高齢者がピンピンコロリ(PPK)を願望するが、実際にはなかなかそうはいかない。徐々に身体や認知能力が低下し、医療や介助を必要とする時がくる。誰もが住み慣れたところで安心して自分らしく年をとることができる生活環境を整備するためには、住宅や移動手段などのハードのインフラと、医療と介護、年金などの社会保障制度や希薄化した人の繋がりづくりなどソフトなインフラの両方に取り組む必要がある」と。さらにこうも述べています。「人生50年時代と人生90年時代の生き方はおのずと異なる。人生が倍近く長くなっただけでなく人生を自ら設計する時代となった。これまでの画一的な人生モデルは社会規範としての力を失いつつある」、「『人生第4期』という新たなライフステージも充実して幸せに生きるための指針を示しては」と指針の策定を提案しています。
大変貴重な資料であります。高齢期の加齢による生活機能の変化が三つのパターンに分かれることを示し、今後の健康づくりと介護予防で重視すべきターゲットとその時期を明確にしたのです。また指針の策定についても必要かつ有効な提案であり私も大いに賛成であります。
少し長くなりましたが、秋山弘子氏の「長寿時代の科学と社会の構想」をご紹介させていただきました。

厚労省「平均寿命と健康寿命」より
スクリーン1

東京大学高齢社会総合研究機構 神谷哲郎氏の資料から
スクリーン2
人生100年時代といわれる通り日本人の平均寿命は確かに年々少しずつ長くなっています。健康寿命も同じように少しずつは延びていますが、その差が徐々に開いているということです。つまり、要介護期間が徐々に長くなってきているのです。上の青い線が平均寿命で、下の赤い線が健康寿命です。この差が縮まらずむしろ年々開いていっているということです。(スクリーン1)
また先日はこういうニュースがありました。75歳以上の後期高齢者の人口は1770万人で65歳から74歳の高齢者の人口1764万人を上回り、高齢者の人口全体の半数を超えたと。日本でこれから最も増えるのはこの75歳以上の人口です。2030年には全人口の約2割が75歳以上になります。(スクリーン2)そして、75歳以上の世代の8割近い人が自立した生活が徐々に困難になって、介護を必要とするようになることが予想され 図るのです。したがって徐々に生活機能が低下する虚弱化(フレイル)を少しでも遅らせ、たとえ2年でも3年でも健康寿命の延伸を図っていくことは喫緊の課題となっています。秋山弘子氏のレポートはそのことを可能にする大きなヒントを私たちに与えてくれたのです。
そこで、区長に、加齢に伴う虚弱化をどう遅らせ「健康寿命の延伸」を図るのか、基本的な考え方をお伺いします。
次に、虚弱化の予防(フレイル予防)の具体的な取り組みについてであります。
フレイル(Frail)と言いう言葉の意味について改めて確認しておきたいと思います。
フレイルとは、歳をとっていく過程で、足腰が思ったように動かない、転びやすくなった、友だちと会わなくなった、柔らかいものばかり食べているなど日常的な些細な兆候から始まる『虚弱の状態』をいいます。

東京大学高齢社会総合研究機構 神谷哲郎氏の資料から
スクリーン3

東京大学高齢社会総合研究機構 神谷哲郎氏の資料から
スクリーン4
そしてその対策として「予防基準を設けよ」と、東京大学高齢社会総合研究機構の神谷哲朗氏は述べます。「40~75歳(主に40~60歳)の現役を対象とした生活習慣病の診断基準はあるのに、今後75歳以上の人が急激に増えてくるのにその世代の予防基準がありません。市民に行動変容を促すにはまず基準を設けて自分事化していくことが必要です」と。もっともな指摘であります。(スクリーン3)
予防について、具体的には、「人が自立して生きていくための基本的な機能である『食べる』『歩く』『人と会話する』」ことにターゲットを置いたもので「適切な栄養の摂取」、「体力の維持・増進」、「社会参加の促進」を進めることです。健康長寿のための三つの柱とされています。これらは、高齢介護課や保健所の行政のみではできません。地域ぐるみの運動として皆が参加して初めて可能となるものです。(スクリーン4)

考えられる取り組みとしては、
-
まずはフレイル予防についての普及・啓発です。つい先日、区でもフレイル予防についてのセミナーを開催し好評であったとお伺いしました。
-
産官学民連携でフレイル予防を推進するため専門家の入ったプロジェクトチームを立ち上げる。(柏市)(草津町)
-
また、高齢者検診の特定検診項目に生活機能評価項目(低栄養、休まず歩ける距離、歩行速度、片足立ち、人とのつながりなど)を追加する。(草津町)
-
健康づくり応援手帳を活用し健康推進委員と共に生活機能評価(フレイルチェック)を行う。
-
高齢者の就労と学びの場の提供
-
あと一点、秋山氏がレポートの中で提案していた指針の策定です。高齢者が健康でいきいきと暮らせるためのハード・ソフト合わせた指針の策定が必要であります。(仮称)「千代田区人生いきいき100年構想」の策定です。
フレイル予防について、フレイルとは何か、またその予防のための具体的な取り組みについて述べさせていただきました。
そこで、人生いきいき100年時代へ、フレイル予防に地域ぐるみで運動として取り組むことを提案します。ご所見をお伺いします。また具体的にどう取り組んでいくか、合わせてご答弁ください。そして、高齢者が健康でいきいきと暮らせるための指針、(仮称)「千代田区人生いきいき100年構想」の策定を提案します。ご所見をお伺いします。
次に、小中学校生の美術鑑賞支援についてであります。
改定された新学習指導要領の告示は昨年の3月でしたが、文化芸術基本法の改正は昨年の6月であり、同時期にまたその内容もまるで対をなしているかのようでした。
文化芸術基本法の改正ではなんといっても法の理念に「相互の連携」が明記されたことです。

スクリーン5

スクリーン6
第二条の第8項では「文化芸術に関する施策の推進に当たっては、乳幼児、児童、生徒等に対する文化芸術に関する教育の重要性に鑑み、学校等、文化芸術活動を行う団体、家庭及び地域における活動の相互の連携が図られるよう配慮されなければならない」と。また、同じく第10項も、読みませんが教育などとの有機的な連携が明記されました。それぞれ全文新たに書き込まれたのです。(スクリーン5)
学習指導要領の改訂では、「教育課程の理念」として「社会に開かれた教育課程」とされました。説明があります。「教育課程の実施に当たって、地域の人的・物的資源を活用したり、放課後や土曜日等を活用した社会教育との連携を図ったりし、学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携しながら実現させること」(「新しい学習指導要領の考え方」文科省より)と。(スクリーン6)「その目指すところ」でありますが、 それは、「育成すべき資質・能力の三つの柱」として、①学びに向かう力・人間性の涵養、②知識・技能の習得、③思考力・判断力・表現力等の育成の3点であります。
文化芸術基本法の方では、今までも「基本的な方針」において学校などとの連携は示されていましたが、今回改めて法の理念に明確となったこと。また、指導要領の方も今日までも社会と連携しての授業は行われてきましたが、こちらも教育課程の理念に改めて「社会に開かれた教育課程」、とそれぞれ明確となったその意義は誠に大きいものがあります。
そこで、教育委員会として学校教育のその目指すところをどう社会と共有・連携し進めていくのかお伺いします。また、区としては教育または学校とその目指すところを共有しどのように相互の連携を図り進めていくのかお伺いします。
次に、対話型美術鑑賞についてであります。
まず、対話型美術鑑賞とはどういうものか説明しておきたいと思います。
1980年代に、ニューヨーク近代美術館(MoMA)で開発された美術鑑賞法で作品解説を一方的に聞くのではなく、作品を見て素直に感じたことや思ったこと、気付いたことをみんなで言葉にして作品を鑑賞するものです。
子どものときにこのような本物の芸術作品を対象に対話による鑑賞を経験できることは大変すばらしいことであると思います。子どもたちは作品をよく見て、さまざまなことを考え、それを話し、友だちの意見も聞きます。この「見る」「考える」「話す」「聞く」の循環の中で、子どもは多くのことを経験し学ぶことができます。美術の鑑賞に正解は一つではありません。子どもたちの自由に感じたこと考えたことすべてが正解であります。ですので、子どもの発言を否定することはありません。すべて受け止めてあげます。子どもにはすごい自信になると思います。大人には見えなくとも子どもだから見えるものもあります。
このような対話による美術鑑賞は、学習指導要領の先ほどの「思考力・判断力・表現力」の育成となり、またすべての科目で必要とされた「主体的・対話的で深い学び」も今回改訂の特徴ですが、このことにもつながるものです。
具体的な例として「かえるがいる」をご紹介します。
(「かえるがいる」の現物を提示)これは倉敷市の大原美術館の「教育普及活動この10年の歩み」です。タイトルは「かえるがいる」となっています。美術館所蔵のモネの睡蓮です。保育園の子どもたちがこの「睡蓮」の前で対話による美術鑑賞を行ったときの様子が冒頭に書かれていますのでご紹介します。

「数人の保育園の子どもたちが館内の床に腰を下ろしている。
モネの睡蓮の前である。
『なにが描いてあるかな』子どもたちと学芸員の会話が弾みはじめた時
4歳の男の子が立ち上がり、『かえるがいる』と目を輝かせて絵を指さした。
『え、どこにいるの』と学芸員。
『いま水にもぐっている』
・・・・・・・・・
学芸員はこのリアクション、この感性に思わず息を飲んだ。
以来、この『水にもぐったかえる』は館内の語り草となり
大原美術館の無形の宝となった。
それは大原美術館教育普及活動に限りない可能性を示してくれる原点であり、
同時にこの活動に絶えず新鮮なエネルギーを注入し続けてくれる源泉でもある」と。
子どもにとってすばらしい経験となり、美術館にとっても子どもにとっても「無形の宝」となったと思います。
私たち公明党議員団は、都内でこのような対話による美術鑑賞を行っている美術館へ見学に行ってまいりました。新宿区の損保ジャパン日本興亜美術館(東郷青児記念美術館)と地元の国立近代美術館です。
損保ジャパン美術館では休館日の月曜日に行っており、私たちが訪問したその日の朝9時からは鶴巻小学校の4年生全員です。校長先生も一緒に来られていました。6人から7人のグループに分かれてボランティアガイドの方が中心に行います。ガイドの方は生徒全員が発言できまた他の生徒の発言を聞くことができるよう対話全体をリードします。手を挙げて積極的に発言する生徒、苦手なのかなかなか発言しない生徒もいます。ガイド役の方が上手に会話をリードし、苦手そうな生徒に「なにが描かれているかな」「どうしてそう思うのかな」とやさしく話しかけ発言を促します。そしてその生徒の発言に大きくうなずき認めてあげます。生徒の笑顔に私たちも嬉しくなりました。きっと大きな自信につながることと思います。
新宿区ではすべての小中学校でこの対話による美術鑑賞を実施しています。区は学校から美術館までの送迎バスを用意します。区と教育委員会そして美術館が協力することによって全校実施を可能にしています。学校の先生からは、「ボランティアの皆さんがこれだけ丁寧に子どもたちの発言を引き出してくれ対話ができている、感動的です!」(小口弘史著「月曜美術館」より)と。
東京国立近代美術館では葛飾区の小学校の生徒が行っているところを見学できました。スクールプログラムとしてこちらは休館日ではなく一般のお客さんがいらっしゃる中で行っています。担当の方に聞きますと、「こういう対話による美術鑑賞を行っているところを一般の人にも見てもらい理解してもらうことも大切です。ルーブル美術館でも子どもたちが車座になって鑑賞しているところを見ることがありますよね」と。また、スクールプログラムの他、未就学児を対象に「親子でトーク」も実施し、仕事を離れて子育てをするお母さんの疎外感・孤独感を和らげる機会として行っていることも知りました。このようなすばらしい取り組みを行っている国立近代美術館が近くにあります。対話型美術鑑賞の実施に向けて連携も十分可能ではないでしょうか。
国立近代美術館教育普及室の方には資料の提供(アートカード)など大変お世話になりました。感謝申し上げます。美術館のホームページにある写真の使用も快く了解していただきました。

スクリーン7

スクリーン8
この写真は九段小学校の生徒たちが鑑賞しているところです。椅子にすわって絵の女性と同じポーズをとっています。(スクリーン7)そしてこちらが「おやこでトーク」の写真です。子どもたちが全身で表現しています。子どもたちもお母さんが表現しているところを見ていて一緒にみることが楽しそうと書かれています。(スクリーン8)
対話型美術鑑賞について、大原美術館、損保ジャパン日本興亜美術館、そして国立近代美術館での取り組みを紹介し、その意義と特徴を述べさせていただきました。
そこで、小中学生の美術鑑賞支援として区と教育委員会そして美術館が相互の連携を図っての対話型美術鑑賞の実施を提案します。区長、教育長に改めてご所見をお伺いします。
以上、人生いきいき100年時代を目指してフレイル予防について、また子どもの可能性を開く対話型美術鑑賞の実施について質問しました。
区長、教育長、関係理事者の前向きな答弁を期待し公明党議員団の代表質問を終わります。
ありがとうございました。
〈区長答弁〉
大串議員の「人生100年時代」のフレイル対策、健康寿命延伸に関するご質問にお答えいたします。
我々の社会は、多分、10年後、高齢者が多数派になると思います。そして、できるだけ元気な高齢者が地域を支え、担い手として活動してもらいたい。そのためには、高齢者が何らかの形で社会とのつながりを持っていることが肝要だろうと思います。
ご質問のように、一方では、高齢者、加齢に伴いまして心身の活力が低下をし、生活機能に障害が生じる、いわゆる「虚弱」が進行してまいります。いわゆる、このことが「フレイル」というふうに言われておりまして、それを予防することが、超高齢化社会の中で必要だろうと思います。ご指摘のように、フレイル予防のためには、体力維持・向上、2点目は栄養改善、社会参加という3つの要素を組み合わせて、有機的に取り組むことが必要だというふうに、議員、ご指摘をされたのだと私は思っております。まさに、超高齢社会で、このフレイル予防対策は大変重要なことだろうと思います。私たちは、今までも、高齢者の介護予防かとか、中高年からのメタボ対策を含めた健康づくりは、10年以上前から取り組んでおります。あるいは、高齢者が地域で健康に生き生きと暮らし続けられるような活動や、参加の機会の場を提供することや、心身機能の低下リスクが高い高齢者を対象にしたハイリスクアプローチをバランスよく取り組んできておりますが、改めて、お話しのように、従来、取り組んでおります介護予防、介護保険特別会計で実施をしている介護予防事業、あるいは一般施策として行っておりますさまざまなことを、改めてフレイル予防という観点から再編整理をし、人生100年時代に向けての考え方を、改めて整理をさせていただきたいと思いますので、一定の時間をいただきたいと思います。
なお、詳細、その他の事項については、関係理事者をもって答弁をいたさせます。
〈教育担当部長答弁〉
大串議員の美術館との連携を図った小・中学生への美術鑑賞支援についてのご質問にお答えします。
まず、社会に開かれた教育課程の1つの側面である、「学校教育を学校内に閉じずに、その目指すところを社会と共有・連携する」についてですが、これまでも、区立学校・園では、学校運営連絡会や学校運営協議会等を開催し、地域社会と共有・連携しつつ、各校・園の目指す教育目標を達成するよう取り組んでまいりました。さらに、本年度からは、和泉小学校、神田一橋中学校におきまして、「地域学校協働活動推進委員」を、地域の方から登用し、地域の人材活用、講師依頼、区内施設の効果的な活用など、授業や学校行事等を支援する活動を行っていただくこととしました。今後は、順次、他の区立小・中学校への登用を検討してまいります。教育委員会では、引き続き、区の文化担当やコミュニティ担当とも情報共有しながら、地域に開かれた学校運営に努めてまいります。
次に「対話型美術鑑賞」についてですが、区内の学校では、九段小学校が東京国立近代美術館と、和泉小学校がすみだ北斎美術館と、それぞれ連携して対話型美術鑑賞会を行っています。また、毎年、教育委員会主催の区内小学校全6年生を対象とした音楽鑑賞教室や、区内中学校全1年生を対象とした雅楽鑑賞も実施しています。教育委員会では、区の文化担当とも協力しながら、各校・園がそれぞれの実態に合わせ、ご指摘の「対話型美術鑑賞」も含めた文化芸術に対する取り組みを、さらに前向きに進めることができるよう、必要な支援を行ってまいります。
〈保健福祉部長答弁〉
大串議員のご質問のうち、まず、フレイル予防の具体的な取り組みについてお答えをいたします。
介護予防、フレイル対策の取り組みについて、大変貴重なご提案をいただきました。
区の介護予防事業は、一般介護予防として、どなたでも参加できる運動教室、認知症予防教室、口腔機能向上プログラム、栄養改善などの事業と、日常生活の援助が必要な方が利用する訪問または通所型のサービス事業に大別できます。区長答弁で申し上げたとおり、区では、介護予防事業に積極的に取り組んでまいりました。その結果、要介護認定者の認定率が、高齢者人口の伸びと比較して、高くなっていないなどの成果が見られております。
今後、さらに高齢化が進む中で、高齢者が自立して、生き生きと健康に過ごす期間ができるだけ長くなるよう、まず、ご指摘のとおり、「フレイル予防」という概念について普及啓発を進め、体力の維持・向上、栄養摂取、社会参加を組み合わせた介護予防事業を充実させてまいります。従来の介護予防事業をフレイル予防の観点から再編整理する具体例として、議員のご質問にもありました、「フレイル予防講座」の開催や、配食サービスを見直し、栄養士が訪問して栄養指導を行う「栄養改善」事業へ移行したことが挙げられます。同時に、区民の方が自主的に介護予防を継続する仕組みづくりを進める必要があります。
今後、地域包括ケアシステム推進の拠点であり、高齢者福祉の象徴でもある高齢者総合サポートセンターを活用し、フレイル予防の充実に努めたいと考えております。さらに、中高年から健康づくりを進める、そういう観点から、関係する部署が連携をし、健康寿命の延伸に向けた取り組みを進めることが必要と考えております。
次に、「(仮称)千代田区人生100年構想」についてでございます。
超高齢社会への対応は、議員ご指摘のように、総合的かつ多角的に考える必要があり、次期高齢者福祉計画・第8期介護保険事業計画を策定する際に、現状分析を踏まえて課題を整理し、議論を深めてまいります。
〈再質問〉
5番大串ひろやす、自席で、1点、再質問させていただきます。
教育委員会のほうの決意はよくわかりました。ぜひお願いしたいと思います。(ベルの音あり)それで、連携していくためには、あと、区のほうの文化施策を担当するほう、いわゆる文化芸術基本法のほうにうたわれた理念ですね、これをどのように、区のほうとしては、学校との連携をやっていくのか、そちらの決意のほどをお聞きしたいので、よろしくお願いしたいと思います。
〈文化スポーツ担当部長答弁〉
大串議員の再質問にお答えいたします。
文化芸術担当としましては、既存の事業としまして、アーティスト・イン・レジデンスという事業がございまして、一流のアーティストを、一定の期間、区内に滞在をさせて、その中でワークショップや共同制作や、そうした事業に取り組んでいるところでございます。その一環として、昨年度より、児童館とか、アーツ3331で、お子さんを対象とした作家とのトークイベント等も行ってございます。そうした区の独自のイベントと合わせまして、区内のミュージアム連絡会というものがございまして、現在、26の美術館等々との連携をとっているところでございます。
そして、先ほどご質問にもございましたように、中には、対話型の鑑賞を実施しているところもございますので、そうしたところの情報がまだまだ、我々、十分酌み取れてございませんので、酌み取った上で、そのミュージアム連絡会の中で、例えば今後の区との連携についてのお話、そういったものも含めて協議をさせていただき、どういったことが今後、子どもとの間で連携をとれるのかといったことについて、十分に研究をして、方策をしてまいりたいと考えてございます。