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平成11年第4回定例会

​介護、医療、年金、福祉の将来ビジョンを示せ

〈質問通告〉
 

  1. 介護・医療・年金・福祉の総合的なあり方、また将来のビジョンを示せ

  2. 護事業者選択のための親切でわかりやすい情報提供を行え


〈質問と答弁の全文〉

 平成11年第4回定例会において、公明党議員団の一員として一般質問させていただきます。
 今、介護保険制度をきっかけとして、国民的議論となってきました社会保障制度の総合的なあり方について質問させていただきます。区民の皆様も非常に関心を持っており、不安も抱いておられる。また、先日の保健福祉委員会で岩手県沢内村に視察に行きましたが、特別養護老人ホーム「ぶなの苑」の施設長が言っておられた言葉が忘れられません。それは「役場が、医療、介護、年金が今後どうなっていくのかはっきりと提示すべきだ」と。その言葉を聞いたとき、びっくりしました。現場で苦労されている方の言葉で、真剣な訴えでした。この問題に対して千代田区としても同じ問題であり、真剣に取り組むべきであると思います。国が決めることだとか、都の管轄だからと待っていてはいけない。地方分権を来年に控え、国が都がと言っていたのでは真の分権などあり得ない。与えられるものではなく、勝ち取るものだと、その決意で質問させていただきます。
 さて、社会保障制度問題の原因は、予想以上の速さで少子・高齢化が進んでいることにあります。65歳以上の方の高齢者の人口は98年2,050万人、全人口の16.2%を占めており、2025年3,312万人、27.4%へ、さらに2050年には3,245万人、比率は遂に32.3%にまでなると予想されています。現在の国民皆年金制度、国民皆保険制度はともに1961年にスタートしましたが、当時の高齢者人口は5.7%にしかすぎませんでした。これだけの急激な変化があり、将来もその傾向が続くということであります。
 皆年金、皆保険がその年スタートしたことにより、それまでの生活保護中心の最低生活保障から国民全体の社会保障制度へと大きな転換をしました。そして、その中の中心をなしたのは言うまでもなく医療保険制度であり、今日までの社会保障制度の発展の原動力となってきました。しかし、この急激な人口変化は61年以来の社会保障制度の大幅な構造改革を迫るものとなっています。
 今年1月、厚生省の行った調査によりますと、社会保障制度の将来について「大いに不安を感じている」「少し不安を感じている」と回答した人は、合わせて現役世代の95%にも達したそうです。不安を感じている理由、複数回答ですが、「社会保険料を支払っていても、将来確実に給付が受けられるかわからないから」が最も多い80%に及び、続いて「負担の増大」「給付水準の引き下げ」「制度維持が困難」「世代間の不公平」がいずれも上位を占めています。今、区民の多くの方々も全く同じような不安を抱いているのではないでしょうか。
 では、いったい国全体で負担と給付はどうなっているのか。まず給付面から見ていきます。平成8年度ベースですが、全体で67兆5,423億円と大変な金額になっております。これは東京都の予算の10年分に当たります。90年代に入り毎年3兆円ずつ増えています。1970年と比較すると何と19.2倍になっています。その間、国内総生産が6.7倍ですので、いかに社会保障費が増えてきたかがわかります。1人当たりの給付に直しますと年間53万6,600円、1世帯平均152万8,300円の給付となります。その67兆円の内訳は、年金が35兆円と半分強を占め、次いで医療が25兆円、うち最も増え続けている老人医療費が9兆円弱、福祉その他が7兆円となっています。
 では、その給付はどこからお金が出ているのか、負担の面から見ていきます。同じ8年度ベースでは、被保険者による保険料が29%、事業主拠出が31.5%、公費負担、税金ですが、24.5%、その他15%となっています。つまり、給付の85%を保険料と税金で負担していることになります。その中で、各家庭ではどのくらいずつ負担しているのかを見てみます。これは平均的な勤労世帯の数字になりますが、月の実収入のうち所得税が3.5%、住民税ほかが3.9%、社会保険料が8.3%、合わせて15.7%を負担していることになります。
 次に、国民負担率、税負担と社会保険料負担の合計額の国民所得に対する割合ですが、この割合は98年で37.4%になっています。先ほどの家計負担の倍くらいの数字になっていますが、これは事業主負担も入っているためです。さらに、この数字に将来の国民の負担となるであろう国のフローの財政赤字分、今年でいえば46兆円くらいになるそうですが、比率にして9.3%を加えて国民の負担を総合的に見ていこうとするもので、潜在的国民負担率と言われます。最も大事な指標と私は考えますが、その割合は9.3%を足しますので、46.7%と既に限界に来ていると言えます。
 以上、負担と給付の規模と割合について見ましたが、次に、医療と年金の各保険の厳しい現状はどうなっているのか、数字が多くて恐縮ですが、触れさせていただきます。
 まず、各市町村の行っている国民健康保険の財政状況は、つい先日発表されたばかりですが、全国の56%に当たる1,817団体が赤字で、その額は98年単年度で1,020億円で、前年の3.5倍にもなったそうであります。企業の行っている組合管掌健康保険は、98年度ベースで1,800の組合のうち1,200の組合が同じように赤字となっています。そして、中小企業を中心とする政府管掌健康保険も93年から5年連続で赤字となっており、97年度のそれは950億円になっています。これらはいずれも老人医療費の伸びに伴う老人保健拠出金が年々増えているためです。
 次に、所得保障である年金はどういう状況にあるのか。年金は国が保険者となっており、5年ごとに見直しが国で行われています。今の国会で年金改革法案が審議されていますが、今のままの給付水準を維持し、2025年になりますと現在の倍の負担が必要になると言われております。国民年金未加入者は95年10月ですが158万人、加入していても保険料を納めていない未納者が172万人に上っています。こうした数が増え続けていけば、当然基礎年金の保険料負担が一段と上昇していくことになります。参考のために、民間の行っている私的年金、企業年金、退職年金の方ですが、こちらはどうかといいますと、積極的に年金会計を導入し、従業員の将来の昇給なども見込んで、将来発生するであろう年金給付、退職給付と合わせて現在の備えが足りない分は開示していくことになっております。
 以上、医療も年金も早急に根本的な構造改革が必要な状況です。しかし、もはや単独で行うのは不可能であり、来年スタートの介護保険とあわせ、社会保障制度全体の中で総合的な改革が今こそ必要であると思われます。

 次に、介護保険制度ですが、増え続ける高齢者医療の中の介護部分を医療保険から分離し、高齢者福祉の介護と合わせ、介護保険制度をスタートさせるものです。本来、高齢者医療から分離された分に対応する医療保険料は下がってもよいと思うのですが、残念ながら、高齢者の人口増に伴う医療費の増加分で相殺されてしまうということです。介護保険制度は今までの福祉の措置制度とは異なり、利用者が事業者との契約により、サービスの提供を当然の権利として受けることができます。民間の事業者の参入を促し、競争によるサービスの向上を図り、費用の低下も図っていけます。大事なことは、高齢者の方々が事業者の選択をサービスの質等により選べるような環境を整えてあげること、親切でわかりやすい情報を提供してくいことが、保険者である自治体の責任であると思います。この点につき、千代田区としてどう準備されているのかを教えて下さい。
 介護保険も加わった社会保障制度は、高齢化による様々なリスクを回避させるため、また分散化させるためのものです。「介護のリスク」「働けなくなるリスク」「長生きしていくためのリスク」、それらのリスクを家族だけで負うのではなく、社会全体で負い支えるという社会的セーフティネットとなっています。この制度の充実を図っていくのは、もはや膨大な借金を抱える国では限界があります。自治権とともに社会保障全体も、必ず住民に最も近い基礎的自治体である区市町村に移管されてくると私は確信します。年金、医療、介護、福祉、それぞれが密接に結びついています。総合的な社会保障制度の面から検討が必要です。無駄をなくし、最適な負担と最適な給付を目指し、その姿を区民にわかりやすく示していくべきだと思いますが、いかがでしょうか。この点につき区長はどのように考え、もしくはビジョンをお持ちなのか教えて下さい。

  以上、区長並びに関係理事者の皆様のご答弁をよろしくお願いいたします。(拍手)    


〈区長答弁〉

 大串議員の社会保障制度に関するご質問について、お答えいたします。
 我が国の社会保障制度につきましては、健康保障としての健康保険制度、また、高齢期の所得保障としての年金制度が大きな二つの柱になっております。戦後の我が国が目指した福祉国家づくりに重要な役割をこれらの制度が果たしてまいりました。そしてその後、他国にも例を見ない急速な高齢化の進行と、これに伴う高齢者介護に対応するために介護保険制度が構想され、いよいよ来年4月から本格的に導入が図られます。
 これらの社会保障制度は、国民がより豊かに安心して暮らせるような生活水準を維持しようとするものであり、いずれも全国的制度として整備をされてまいりました。このような歴史的経緯も含めまして、我が国の社会保障制度は国民全体で支えることを基本としており、各種制度を総合的に組み合わせて考える必要があることから、基本的には国の役割であると認識をいたしております。
 しかしながら、来年度から千代田区を始め23特別区は、自立した基礎的な自治体として新たなスタートを切ることとなります。その際に、社会保障制度の今後の展開を十分把握し、これらを含めて区民の生活実態に適合した総合的な福祉施策を推進していくべきであるというご指摘は、極めて重要であると認識をいたしております。このため、改定地域福祉計画を踏まえ、今後の福祉施策のあり方につきまして検討をいたしてまいりますが、その際に、区民の皆様方に適正な負担とそれにふさわしい給付のあり方につきましても、よりわかりやすい方法でお示ししてまいりたいと考えております。
 なお、他の事項につきましては、担当理事者をして答弁いたします。

〈福祉施策推進担当部長〉

 大串議員のご質問のうち、介護保険制度における民間事業者の選択についてお答えいたします。
 介護保険で要支援・要介護の認定を受けた方々の民間事業者の選択につきましては、ご指摘のとおり、できるだけ質の高いサービスを提供できる事業者を選択できるよう配慮すべきものと考えております。具体的には、本区内で活動可能な指定事業者のリストを認定結果に同封してお送りするとともに、介護保険準備課、高齢者福祉課、在宅サービス課及び一番町在宅介護支援センターにおいて、その選択の相談に応じてまいります。なお、今後とも指定事業者の数を増やし、利用者の選択の幅が広がるよう、事業者指定を行う東京都と連携しながら努力してまいる考え方でございますので、ご了承願います。

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