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真心の伝わる政治を!
大串 ひろやす
平成20年第2回定例会
都市の衰退シナリオ 1.コミュニティの崩壊 2.不毛な文化芸術政策
〈質問通告〉
今、必要なコミュニティ政策について
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区の目指す地域コミュニティのあり方とは。
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地域コミュニティの現状と課題は何か。
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区民による(仮)千代田区地域コミュニティ指針の策定を提案する、所見は。
文化芸術政策はいかにあるべきか
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文化芸術基本条例策定から4年が経過した。条例に謳われた理念はどこまで実現できたのか。
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文化芸術振興プランは来年度でその期間を終了する。今日までの評価とプラン改定の方法を問う。
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首長部局に文化スポーツ課が移って6年が経過した。改めて文化担当課の役割を問う。
〈質問と答弁の全文〉
私は、発言通告にもとづき1.地域コミュニティの形成についてと2.文化芸術の振興について質問させていただきます。
最初に「地域コミュニティの形成をいかに図るか」についてであります。
最近の連続して起こる「犯罪」や「災害」のニュースを見て、コミュニティの必要性を感じているのは私だけではないと思います。また地域の課題は地域で解決するという住民自治の観点からも地域コミュニティの必要性が訴えられています。今こそ、自治体として地域コミュニティの形成に向けての明確な方針と共に具体策を示していくべきと考えます。
まずコミュニティの概念を明確にして定義する必要があります。曖昧な概念のままコミュニティを形成することは不可能であり、仮に施策を実行してもそれは非効率なものとなる可能性大であるからであります。コミュニティという言葉は日本語に訳そうにも適当な言葉がありません。国語辞典を引いても地域社会又は共同体と出てきますが、あまりにも漠然としていてピンときません。一般的には「地域で生活を共にする、人と人とのつながり」がコミュニティであるといわれます。私は、このときの「生活を共にする」とはその地域において災害時における助け合いを始め福祉や子育て環境やまちづくりまで生活全般について共に担うという意味であり、「人と人とのつながり」とはお互いを認め合い、尊重し合うという関係をいうと、理解しています。
コミュニティのない都市はゆるやかに衰退に向かうであろうと予言した学者がいます。アメリカの社会学者ディヴィット・リースマンであります。1950年に「孤独な群衆」という本を出しましたが、その中で「孤独な群衆の集合体の都市ができると犯罪が起こり、ゴミが増え、まちの美化が悪化し、非常に高コストの都市となる」と述べています。今から60年も前に、まさに今の日本の社会状況といってもよいと思いますが「孤独な群衆」つまりコミュニティの崩壊した社会を予言し、それは都市の衰退につながると警鐘を鳴らしていたことに驚きます。
さて、区としてもこのコミュニティの形成・活性化は重要課題と位置づけられてきました。(きちんとした基礎調査や研究は今日までなされてきませんでしたが・・。)随分前まで遡りますが、平成8年に当時のコミュニティ振興公社が「歴史から学ぶ千代田区のこれからのコミュニティのあり方」と題し、報告書を出しています。議会では当時その報告書を受けて、地域社会を町会型コミュニティとサークル型コミュニティと分けて議論しています。町会型コミュニティについては出張所が所管し、サークル型コミュニティは公社が担当するといとう役割分担をすること、そして町会型コミュニティについては出張所が所管し、
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コミュニティの地域とは出張所の地域をさす
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出張所がそのセンター的な(事務的な)役割を果たす
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出張所は地域の情報の受発信機能を果たす
とされました。組織的には平成15年に副区長直轄の出張所となり人材の拡充も行われてきたという経緯があります。今年の1月に、生涯学習推進委員会議から「問題解決能力の高いコミュニティをいかに形成していくか」についての提言書が区長に提出されました。このことは区長も今年の第1回定例会の招集挨拶の中で述べられました。テーマの設定から皆で考え、約2年間の議論を経てまとめられるものです。今回はその第6期になりますが、まことに 時宜を得たテーマを選び提言がなされたと評価するものであります。冒頭なぜこのようなテーマにしたのかという理由が以下のように述べられています。「人々が、学習の成果を活かそうとするとき、もっとも身近にあって、しかも適確に活動を行うことのできる場は地域であることから、区民の中からは学習を通じて地域の活動、まちづくりの活動にかかわっていこうとする気運が高まってきている。一方、千代田区は首都圏の中心地域にあっていわゆる都市化、少子高齢化の進展も著しいうえ、伝統と最先端とが交錯する中で、様々な新たな地域課題が生起している。しかし、それに的確に対応すべき地域コミュニティの力の弱まりも懸念されつつあり、その再生、活性化が大きな課題となっている。またコミュニティを担うべき区民(千代田区に住み、働き、学ぶ人々)が、比較的少数な在住者と膨大な数の在勤者・学生などという特異な構成になっているところに、コミュニティ活性化の困難さと困難さを超えたときの潜在的な可能性の大きさを予測させるものがある。こうしたことから、我々は『生涯学習のまちづくり』をテーマに、生涯学習を通じて問題解決能力の高いコミュニティをいかに創造することができるのかということを検討することにした」と。他区にはない千代田区ならでは特性は、それがそのままコミュニティ活性化の困難さでもありその困難さを超えたときの潜在的な可能性の大きさを予測させると述べていますが、的確な指摘であり全く同感であります。さらに、町会については、地方自治を支える地域基盤としての役割を今日まで果たしてきたということを評価した上で、新たに町会における「生涯学習によるまちづくり」の推進を提案しています。町会の他、地域コミュニティを構成するボランティア団体や企業、大学など多様な主体の活動の必要性も述べ、参加のための仕組みとしての「サポーター」制度の提案もしています。また文化芸術活動や文化遺産を活かしたまちづくりを通して多くの人々が交流し、温かい人間関係を作っていくということが地域コミュニティの形成につながり、この地域コミュニティこそが地方自治・住民自治の基盤であることを提言しています。現在のこのような社会状況の中、非常に貴重な提言書を区長は受けられたと思います。
多くの自治体で「新たな公共」が議論され定義し直されたのと同様、今「新たなコミュニティ」のあり方も模索され始めています。区として、コミュニティとは何かという基本的なところから明確にし、目指すべき地域コミュニティのあり方まで示すべきと考えます。
そこで改めて区長に地域コミュニティについての基本的な考え方をお伺いいたします。
次に、区としての地域コミュニティの現状と課題についてであります。
現状ですが、一言で表現すれば、区とコミュニティを構成する各主体が線で結ばれている状態であると思います。区と町会(準コミュニティ団体である婦人会や長寿会なども含む)、区とNPOやボランティア団体、区と大学、区と企業、区と国の機関などという関係です。各主体がお互い横の連携ができるいわゆる線から面への関係になるのは唯一イベント(行事)の際であります。しかしイベントは一過性であり、その後お互いが連携し地域の課題解決のために地域コミュニティを形成するにはいたっていないのが大方の現状ではないでしょうか。このような状況ですが、最近大変嬉しいニュースがありました。麹町地域ですが、小学校が呼びかけて学校運営連絡会とは別に一学期に一回程度子どもに関係する各団体(学校を始め、駅長、保育園、児童館、町会、消防署、警察など)が集まり子どもに関するいろいろなことを話し合う「地域懇談会」を開くということであります。地域の発意でこのような会合がもたれることは嬉しいニュースであります。
地域コミュニティ形成のための課題としては、まずは提言書の中では「乗り越えなければならない困難さ」として指摘がありましたが、今までの区を基点にそれぞれの団体とつながっているという線の関係から各団体間での連携・協働が可能な面への展開が必要なことであります。あと課題としては、場所、情報、人材、資金と整理して把握していく必要があります。
各団体が連携・結びつくためには「場」(拠点)が必要であり、また結びつきを相談・提案できるコーディネーターが必要であること。これは「活動したい人や団体」と「活動を求める側」を円滑に結び付ける役割が必要であることであります。
情報ということでは、地域情報と政策情報の両方の共有が必要なことです。政策情報ということでは、今日まで行政がほぼ独占してきました。「すべて任せてください」という時代の慣習が強く残っているためです。お年寄りの見守りも兼ねた配食ボランティアや子育てサポーターのように今では地域にしか担えない「公共」も多くなっています。地域情報ということでは、行政の縦割りの関係で、情報がその団体と所管する部門にしか伝わらず、地域にどういう課題があるのかという重要な情報が地域で共有できないという課題があります。
また人材の確保と育成をどう図っていくのかという課題。そして公平・透明な資金援助の仕組みが必要であることなどが考えられます。
もう一点、これも提言の中にもありました「地域コミュニティの活性化のためには、行政任せや行政主導の取り組みを超えて」と指摘された点であります。つまり住民の過度な行政依存についての注意であると思います。提言にはありませんが、逆の場合もいえそうです。それは行政の安易な町会依存であります。この点については、国際公共政策博士で帝塚山大学教授の中川氏は以下のように述べています。「名目的にはコミュニティ団体であるはずの自治会も、各種の行政協力機関となったときには受動的で活力の脆弱なアソシエーションと化してしまう」(豊中市政研究所 1999.3より)と。つまり、行政の都合による安易な係わり方は逆に町会の本来もっている高いコミュニティとしての活力を阻害し、結果として地域コミュニティの形成を難しくしていることの指摘であります。(豊中市や松阪市などのコミュニティに関する調査報告書にも同様の記述がある)地域コミュニティ形成に向けて現状と課題について述べさせていただきました。
そこで現段階、区として地域コミュニティの現状と課題をどう把握しているのかお伺いいたします。
次に、今後の具体策であります。
現在の社会状況は、リースマンが予言した「孤独な群衆」と、提言書にあった地域に還元したい、社会に貢献したい区民も多いというまったく異なる状況が混在していることになります。このような中、区として地域コミュニティついて、まずは基礎的な調査研究を行い現状と課題をきちんと把握することが重要ではないでしょうか。その上で、冒頭にも述べましたが、漠然とした概念となりやすい地域コミュニティの意味するところを明確に定義し、基本的なルールとして(仮称)「千代田区コミュニティ振興指針」を定めてはどうでしょうか。そうでないとイメージが無限定に拡散し目標も曖昧となってしまうからです。なにもかもがコミュニティ活性化となり、何を基本とし、何をもって事業を評価するのかが曖昧になってしまいます。策定にあたっては当然コミュニティを構成する住み、働き、学ぶ多くの区民・団体が参加して定めていくことはいうまでもありません。
もう一つ提案があります。それは先ほどの小学校の嬉しいニュースからヒントを得たものです。それは、指針に謳われた理念と定められた基本的なルールにもとづいて皆が集い意見を出し合う場を設けてはどうかということです。メンバーは常時固定することもないし、また地域ごと異なってよいのですが、例えば核となる町会(町会の中には婦人部も青年部も長寿会も入っている)を初め、NPOやボランティア団体、大学、PTA、消防団、また保健師や司書の方なども入ってもよいと思います。事務局的な役割は出張所が果たします。モデル地域を決めて、(仮称)「○○地域協議会」として開催してもよいと思います。
そこで、(仮称)千代田区コミュニティ振興指針の策定とモデル地域を定めての(仮称)地域協議会(地域コミュニティ)の開催を提案いたします。ご所見をお伺いいたします。
次に、文化芸術振興についてであります。
リースマンの予言ではありませんが、ある意味同じように都市の衰退を先ほど紹介した中川幾郎氏は予測しています。「分権時代の自治体文化政策」(2001年)という本の中で以下のように述べています。「地域の政治的、経済的な中核としての比較優位性に依拠(いきょ)(よりどころ)して安閑としていると、いずれ緩やかな都市の衰退がやってくる。(中略)現代都市は短期的、応急処置的に経営されてよいものではない。ニューヨークやピッツバークの衰退と再生にみられるように、時代に対応したなんらかの政策的な対処がなされなければ、その内部からすみやかに荒廃し、あるいは衰退していくものなのである」と警鐘を鳴らしています。「なんらかの政策的な対処」とは文化芸術政策を意味していることはいうまでもありません。
さて、最初に、文化芸術基本条例に謳われた理念についてであります。
条例は平成16年3月に策定されたので早いもので既に4年が経過いたしました。当時区長は区議会招集挨拶でこの条例について、「『文化芸術基本条例』は区政全般に関わる基本的・総合的な政策の方向性を明らかにする、文化芸術施策推進の『憲法』ともいえるものです。今回あえて『基本条例』としてのは、単に文化芸術分野の特定の活動を推進する『振興条例』ではなく、区及び区民、更に民間団体等の責務を明らかにすることともに、まちづくりをはじめとするハードからソフトまで総合的に取り組む区の姿勢と決意を内外に表明し、将来に渡って施策の推進を確実なものにするためであります」と、述べられました。
条例の第2条基本理念には①「すべての人々の文化芸術を創造し、享受する権利を尊重する」と、また②「文化芸術の振興にあたっては、区民(区に住み、働き、学び、集うすべての人々をいう)一人ひとりの自主的かつ創造的な活動の輪がつながり、文化芸術のエネルギーを次々と生み出す文化的・芸術的な香りの溢れるまちの実現を図るものとする」とあります。つまり、子どもから大人まですべての区民に「文化権」を保障し、区民一人ひとりの自主的な活動と創造を理念として明確に謳ったものです。この理念ですが、文化芸術振興プランにはもう少し具体的に書かれますので紹介します。「区民一人ひとりが日常生活の中で文化芸術を創造し、享受することにより、日々の営みの中に新しい価値が創造され、豊かさがもたらされます。さらに、区民が相互に理解し、尊重しあい、一人ひとりの活動が『地域の活動』につながる」と。「地域の活動」とは先にも述べましたが、皆で公共を担う地域コミュニティを意味することと理解しています。そして条例の第3条はその理念の実現に向けて区の責務を具体的に定めています。「区は、文化芸術振興施策の実施に当たっては、文化芸術の担い手が区民であることを踏まえ、区民の文化芸術活動が自主的かつ創造的に行われるよう配慮するとともに、区民との連携及び協力に努めなければならない」と。文化行政というとその分野がすべてに及ぶことから先ほどのコミュニティ政策同様目指すべき目標がどうしても曖昧になり、事業も総花的となります。条例を制定した意義は、まさに文化芸術振興の理念を謳い、目指すべき目標を明確にしたことであります。そして区はその実現を図っていくことを内外に決意表明したのであります。
区の文化行政はこの条例により大きく転換したのです。つまりそれまでの行政主導の文化行政から区民主体の文化行政への大きな転換であります。
そこで、条例に謳われた理念はこの4年間でどこまで達成できたのか、お伺いいたします。
次に、文化芸術振興プランの評価についてであります。
文化芸術振興プランは平成17年1月に策定されその期間は5年となっています。つまり来年度が最終年度となります。条例の第3条と第6条に定められた計画であります。プランには「計画の位置づけ」として、「区が区民とともに文化芸術振興施策を立案し、実施する際の基本計画としての性格と具体的に取り組む施策の内容や進め方を示すアクションプランとしての性格をもつ」とあります。ここは一度読んだだけでは理解しにくい文章です。プランには49の事業が列挙されています。これらの事業はいったい誰が実行するのか、区民の計画なのか、行政が行う計画なのか曖昧でわかりません。条例の第6条には「計画策定の際、あらかじめ区民の意見を反映させるため適切な措置を講じなければならない」としています。そこで、評価を問う前に、確認する意味でプランの位置づけについてお伺いしておきます。
私は平成17年の第2回定例会にてこのプランを推進するにあたっての基本的な考え方を区長に質問しました。プラン策定から丸3年が経過し、当然プランの評価を問うものですが、何をもって評価するのかという視点が重要です。それはその時区長が文化芸術施策推進の基本的な考え方として答弁された「区民の文化権の尊重と区民の主体的な創造活動」ができたか、そして区民の文化芸術活動がまた「地域の活動」(地域コミュニティの形成)につながっていったのかという点であります。まさに条例に謳われた理念そのものであります。
そこで、文化芸術振興プランについて、現段階において区はどう評価されているのかお伺いいたします。特に成果のあった事行、また見直しや廃止になった事業などがあればそれもお願いします。
また、プランの改定の方法も大事な点であります。特に千代田区は本来持っている文化財・資源が他の自治体が羨むほどに圧倒的に多く、また文化芸術に関係する国の機関や企業なども集積しています。また国における文化財保護政策も大きく変わってきています。単なる文化財の保護・保管からそれを積極的にまちづくりに活かしていこうとするものです。例えば先日発表された「江戸城外堀跡保存管理計画」などです。千代田区の持っている文化財・資源の積極的活用から文化芸術の振興まで政策全般をマネジメントすることも必要であります。区民を始め、多くの機関・団体などの参加なくして、子どもから大人までのすべての区民の「文化権」を保障し、自主的かつ創造的な文化芸術活動を振興することはできません。千代田区の特性を活かした他区のものとは全く異なる「文化芸術振興プラン」ができると思います。そこで、文化芸術振興プラン改定の方法についても合わせてお伺いします。
最後に文化担当課の役割についてであります。
平成14年に、首長部局へ文化担当課が移ってちょうど6年が経過しました。その年の第4回定例会で私は文化担当課の役割を質問しました。先にも述べましたが、文化という概念があまりにも広いがゆえに担当課の役割も、ややもすると曖昧になってしまう可能性があったからです。その役割を
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市民文化の活性化
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都市文化の開発(文化によるまちづくりです)
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行政の文化化(これは首長も含めた行政の全職員が理念と目標を共有していく地道なプロセスそのものが「行政の文化化」の推進であります)
の3点であるとその役割について質問させていただきました。以後、条例とプランが出来たわけですから、役割にその全庁的な進行管理も当然入ってきます。庁内に「プラン推進会議」なるものを設置し、主体的に事業を行う区民と各部との連携を図り推進する役割もあるはずです。
千代田区は、文化芸術に関する施策推進については豊かな発想と、いい意味での緊張感そして当初の「憲法」とまで言ったくらいの強い決意を持ってこれからも望まねばなりません。担当課の役割は極めて重要であります。あくまで住民自治の視点を持って、①市民文化の活性化そして②都市文化の開発、③行政の文化化、④プランの進行管理を行うという4点こそが文化担当課の役割ではないかと考えます。
そこで、改めて文化担当課の役割をお伺いいたします。
コミュニティの崩壊としっかりした文化芸術政策のない都市はゆるやかに衰退に向かうであろうという、いってみれば「都市の衰退シナリオ」であります。そうならないための政策が今必要なのであります。
区長並びに関係理事者の前向きな答弁を期待し私の質問を終わります。
〈区長答弁〉
大串議員の地域コミュニティの形成についてお答えをいたします。
地域コミュニティは、それぞれの自治体の発展形態あるいはまちの発展形態によりまして、一様に言うことは難しいだろうと思います。その中で、ご質問でいろいろ示唆をしている内容というのは、地域コミュニティをかなり述べているのではないかと思います。私の認識している一般的な地域コミュニティについて申し上げますと、それは地域性と共同体意識、2つの要素を中心に構成されているだろうと思います。地域性とは空間性ともいいまして、身近な地域で生活をともにする人々で構成されると。生活をともにするというのは、何も住民だけではない。身近な地域のまとまり、これがまず地域性という概念で整理できるだろうと。2点目は、共同体意識だろうと思います。お互いを認め合い、尊重し、人々のつながりやきずなのもとに、身近なところで構成員相互に支え合う関係があり、かつ身近な地域のさまざまな課題の解決や道筋を通じて活動することを期待する機能を有しているという、この2つのとらえ方をして、地域コミュニティというふうに考えるべきではないかと思います。
こうしたことから見ますと、私は、千代田区という地域で見ますと、地域コミュニティとは町会が中核であるというふうに認識をしております。今、大串議員が、この生涯学習を通じた区民参加のまちづくり提言で重要なところを外してあります。ちゃんと明確に書いてあります、ここにも。町会こそ地域コミュニティの中核としてさまざまな活動をしてきたということを明確に言っております。しかし、それは単にイベントだけではないと。地域のさまざまな課題をやはりいろんな場面で取り組んできているということを明確に言っております。まさにこの生涯学習というこういう推進会議の中でもそういう言い方をしておりますし、過去にさかのぼれば、平成15年に「NPO・ボランティアとの協働の推進に関する提言」をいただいておりまして、その中にもきちっとそうした点が書いてあります。町会とか自治会、地縁団体というのが、さまざまな場面で生活の場を共有するという関係で、福祉や教育やまちづくり、環境など、幅広い課題を地域課題としてとらえて活動をしているというふうに明快に言っております。ただ、その中で、なかなか非常に専門的な分野の問題になりますと、例えばNPOだとかあるいはボランティアだとか、そういう方々と連携をしないとできないものもあると、こういうふうに明快に言っております。私はこのことをきちっと認識をするべきではないかと思います。
今、大串議員の中で、イベントだけを町会はやっていると、私は全然そういう認識を持っておりません。さまざまな、お年寄りに関すること、子供さんに関すること、そうしたことを日常の活動の中でやっております。もちろん、町会そのものが今日的にはなかなか会員が集まらないだとか、いろんな課題があることはわかっております。そうしたことをやはりどういう形でNPOだとかあるいはボランティアだとかが連携して、やっぱり地域課題というものに取り組むかということが私は今必要だと思いますし、ある面では、NPOとかボランティアというのは私は専門店だと思います。町会はデパートのようなもので、総合店です。両方がきちっとそれぞれの特徴を持って、やはり連携をしていくということが、私はむしろこれからの区政の中で大切なんだろうと思います。
ご承知のとおり、最近は、千代田区ではかなり少ないですけれども、地方のまちでは限界集落というような、本当にお年寄りが1人、23区の中でもそういう状況がございます。やはり大都市の限界集落というようなことが言われつつあります。やはり、独り身のお年寄りだとか、お年寄りをどういう形で行政以外に地域がさまざまな形で見守りですとかサポートをするとか、あるいは時にはいろんな行事に参加をしていただくという、そういうようなことをやるためには、まさに私は町会というのは、千代田区の実態から見まして、少子高齢社会での最重要な私は地域福祉をつくる重要な舞台であるというように思いますし、そこが地域のコミュニティの中核であるというように私は思っております。
大串議員も、そういう意味では町会の構成員として、そうした認識はお持ちだろうと思いますので、ぜひ、これからもそうした意味で、こうした認識のもとに、これから町会活動、あるいは地域コミュニティの活性化のためにお力添えをいただきたいと思います。
昨今の防災の状況を見ても、例えば災害になったときに、すぐに対応できるのは身近な地域なんですね。NPOとかボランティアというのは、一定の時間差を置いて出てくる話なんですよ。どうしても、幾ら立派な防災の仕組みができていても、第一義的には身近なところが、お互いに共助という社会をつくっていただくためには、行政だけではなくて身近なところ、それがまさに身近な私はコミュニティだと思いますし、町会が中核だということは、私は揺るぎない考え方を持っております。
町会についての課題は、大串議員から言われたように、なかなか、マンション化の問題だとかということでさまざまな課題があることはわかっておりますので、どうしたらそういう部分で町会とマンションとのきずなをつくるとかということは、当然いろんな課題として受けとめさせていただき、我々なりに、あるいは議会の皆さんも、そうした意味でいろんなご提案をいただきたいというように思います。
その他につきましては、関係部長からご答弁をいたさせます。
〈区民生活部長答弁〉
大串議員のご質問にお答えします。
まず、地域コミュニティの現状と課題についてお答えします。
町会や商店街におけるコミュニティの現状と課題につきましては、区において、これまでにもたびたび、さまざまな団体と意見交換を行ってまいりました。その中では、地域団体の役員の高齢化や、また会員の減少などで十分な活動ができない、また、新しい方たちも転入されたりなんかして、人々の価値観が多様化する中で、地域の連帯のきずなが希薄になっているというふうなことなどをたびたび、数多く聞いてまいりました。特に、これまでの地域運営の中で、ごみの集積所の管理状況、子供の安全安心、高齢者への見守りや地域防災などに対する認識の低下など、地域の共通認識が従前とは異なっていることもまた確かでございます。現在、8割を超える区民がマンションに居住されていられますけども、今後、さらに居住する方の割合は増加すると思われます。また近年、飲食店等のチェーン店化が進行しておりまして、こうした方々の中には、地域参加に対して必要性を余り感じない、そういう方も見受けられるようになっております。
このため区は、こうした方々の地域参加を促すため、地域コミュニティ活性化事業や商店街振興事業などを行うとともに、マンション新築時における開発事業者への指導、また地域参加促進に向けたパンフレットの配布など、町会や商店街を支援する事業を行ってまいりました。また、連合町会におきましても、マンション住民との話し合いを進めるなど、地域の融和に向けた取り組みを行っております。一方、区内11大学における千代田学や、NPO・ボランティア団体などからの政策提案制度を創設し、昼間区民の地域参加を促進してまいりました。しかしながら、近年、地域においては、大規模マンションの建設による急激な人口の増加や事業所の短期間での転入・転出など、地域のコミュニティを不安定にする新たな要因も発生しております。今後は、町会や商店街等にとって何が真の支援策となり得るのか、その対策について、さまざまな行政指導も含めて見直していく必要があるのではないかと認識しております。
次に、コミュニティ振興指針の策定についてお答えいたします。
議員ご提案のコミュニティ振興指針は、多くのNPOやボランティア団体等の活動の活性化を促すことには大いに役立つものと考えます。区として自主的団体のありようを提示することについては、各団体にはそれぞれの目的、また特性がございます。そのような中で、さまざまな意見が考えられることから、議論を重ねていく必要があると認識しております。
次に、地域協議会の開催につきましてお答えします。
町会やNPO・ボランティア団体など、さまざまな団体が情報を共有し、意見交換をすることは大切なことと考えております。本区におきましても、子供、次世代育成、防災、環境など、目的に応じて、町会などを中心として関連団体にお集まりいただきまして、課題解決に向けた話し合いの場を、これまでも何度も行ってまいりました。また、区民各層による政策会議やまちかど懇談会などを出張時単位で行うほか、各種団体との協議、提案制度など、さまざまな方法を通じて広く区民・事業者等のご意見をお聞きしているところでございます。 議員ご提案のご趣旨を踏まえ、今後もより多くの方と情報提供や意見交換が行えるよう工夫を凝らしてまいりたいと思っております。
次に、文化芸術政策についてお答えします。
1点目の文化芸術基本条例にうたわれた理念の実現ですが、文化芸術基本条例においては、第一にすべての人々の文化芸術を創造し享受する権利を尊重する、第二に自立、自己責任、他者への気遣いやマナーを大切する、第三に品格ある質の高い文化的・芸術的生活を日常的に送るまちの実現をすること、第四に区民と一人一人の自主的かつ創造的な輪がつながり、文化芸術のエネルギーを生み出す、文化的・芸術的な香り溢れるまちの実現を図ることを基本理念としてとらえ、保存し伝える、創る、育てるの3つの重点目標を策定したところでございます。具体的には、①区民の未来の文化芸術の担い手である子供たちに上質な芸術に触れる機会を設けること、②に、区民に江戸しぐさの行動哲学を広めること、③(仮称)アートスクエアの設置に向けた取り組みを行うなどとしたものでございます。さらには、区民の発意による区民主体の文化芸術活動を支援することとし、文化芸術協会へ「ちよだ文化芸術秋のフェスティバル」を中心とした大幅な事業を移管し、その具現化に努めてきたところでございます。
今後も、条例の趣旨に基づき、区民、企業、学校、NPO等と連携・協力しながら、区の文化芸術振興に向け、努力をしてまいります。
次に、文化芸術プランについてでございます。
文化芸術は、区民が主役となって推進されるものであることから、区民の視点で目指すべき方向性を位置づけるとともに、広く区民に呼びかけて、区民とともに取り組む行政計画として文化芸術プランを策定したところでございます。また、今日までの評価とプラン改定の方法についてでございますが、文化芸術プラン全49主要事業の進捗状況調査を平成19年10月に行った結果、46事業につきまして計画どおり実施されております。特に成果があった事業につきましては、江戸しぐさやさくらプロジェクトなどがございます。これらの結果から、文化芸術プランは目標を達成していると考えております。
プラン改定の方法につきましては、現在の計画の枠組みを基本とし、計画達成するための個々の事業を庁内検討組織において具体的に行うと同時に、パブリックコメント等を通して区民の皆様からの意見を反映させながら、区民主体の計画として、区民参加のもと、21年度中に改定する予定でございます。
次に、区長部局に文化スポーツ課が移って、改めて文化担当課の役割について確認というふうなことでございますが、ご案内のとおり、平成14年4月の組織改正により、文化芸術・スポーツの生涯学習については、健康・福祉・次世代育成などの施策は区長部局で総合的かつ一体的に進める必要があること、そのために教育委員会から区長部局に移管したものでございます。ご質問の文化スポーツ課の役割についてですが、文化とは、区民の皆様がつくるまちそのものであり、生活そのものであると考えます。また、千代田区民が誇り得る文化をはぐくみ発展させていくためには、生涯にわたって学び続けられる機会と場の提供が必要となります。その中で、区における文化行政の総合窓口として、文化スポーツ課はその役割を果たし、担っていくものと考えております。
〈再質問〉
自席で質問させていただきます。
最初に、町会のことについては私も評価して、今日までの町会の果たしてきた役割、地方自治の基盤を形成してきているということで大変評価して、その上で私は地域コミュニティについてさらなる質問をしたのであって、ちょっと誤解があるようですけど、そういうことでございます。その上で、私は地域コミュニティのあり方ですけれども、要するに町会単体の範囲では狭過ぎて、子供の問題にせよ、お年寄りの問題にせよ、地域の課題を解決するには非常に狭くなってきていると。むしろ、出張所の範囲を1つのコミュニティのエリアとして考えたほうが地域の課題は解決しやすい。そうすることによって、NPOだとかボランティア団体だとか、さまざまな団体がそのコミュニティに入ってきやすくなる、そう思います。そういう意味では、コミュニティというのはどういうことをいうのかということをきちんと明確にした上で、それから、ルールを定める必要もあるでしょう、そうしていろんな方に集ってきていただく、形成していくということが必要ではないかと思います。
提言書にうたわれた、千代田区特有の困難さを乗り越えたときの潜在的な可能性、これをぜひとも区としては築いていかなければいけない。区民の皆様と一緒になって、このコミュニティは形成していかなければならない課題であります。ぜひその点、しっかりやっていただきたいと思います。
そうなりますと、コミュニティの基本的な現状と課題の把握ですけれども、今、部長述べられましたけれども、私は、基礎的な調査研究、これは1回やるべきだと思います。それぞれ部長は、町会、商店会、それぞれ聞いています、マンションとか聞いていますと言いますけれども、線の状態です。先ほど質問で言ったように、それが1本の線、区と各団体との間で情報がやりとりされているわけです。これからさまざまなコミュニティを構成するであろうすべての人が、どういう課題があるのかということを資料をもって討議できるような、基礎的な調査が必要なのではないでしょうか。それをベースとして皆さんが議論のテーブルについて、コミュニティのあり方について議論ができるんじゃないかというふうに思いますので、基礎的な調査・研究というのをぜひ一度、今日までやられていないから、あれだと思います。提言の中では、結論としては、さらなる区民と行政との検討が必要ですよと最後に結ばれているわけですから、ぜひ、それは基礎的な調査・研究、必要ではないでしょうか。
それから、文化芸術のほうですけれども、こちらのほうは、部長の答弁を聞いていますと、4年前に「憲法」とまで言って、千代田区における文化芸術施策を推進するんだと区長が答えた当時の決意とあれがない。伝わってきません。一体、その決意はどこへ行ってしまったのか。千代田区の持っている特性、文化芸術の資産・資源、たくさんある中の千代田区の文化芸術施策です。それをもって行うには、当初の決意が必要なんです。今答えられていましたけれども、あいまいとしています。答弁全体がですね。
僕は答えが記入できなかったのであれですけど、プランの評価にしても、何を基準にして評価して46事業、きちんとできていますよというのか。このうち、文化芸術協会に移管を進めました、大半の事業の移管を進めましたと言うけれども、文化芸術協会の人たちが約49のうち20事業、約半分近くやっているでしょう。その人たちが主体的に行ったんですから、その人たちにまず評価をしてもらわなくちゃいけません。それをやったのかどうか。その上で評価というのが、19年の10月にやったと言いますけど、その当事者たちの評価というのが入っているのかどうか、これをちょっと確認しておきます。
それから、文化課の役割については極めてあいまいな表現で終わりました。これでいいのかと思います。14年に首長部局に移った文化課であります。ですから、きちんと私が質問の中で述べた4つの役割があるのではないかと言いましたけれども、答弁の中では、その点が述べられていません。極めてあいまいな、生活全体が文化とか、そういう表現で、総合窓口としての役割を果たしますという答弁ですけど、これではあいまいだから、私はきちんとしなさいと。1個1個挙げて、役割は何だということを明確にしなさいと私は質問したのでありますから、総合的な窓口ですというのは、ちょっと答弁としては、6年も経過してこのあいまいな答弁では、今まで一体何をやってきたのかということで、決意も疑われますし、窓口としての職員の対応も疑われるところですよ。やはり、千代田区の持っている特性を考えたときに、文化芸術振興という、この大きなテーマについて全庁的に取り組んでいるんだという、その熱意が全然伝わってきませんよね。ですから、都市の衰退シナリオですよ。このまま放置したら、都市は衰退してしまいますよ。千代田区の持っている資源とかは生かされないで、衰退してしまいますよ。そこを僕は一番心配しているから、今回、コミュニティの形成と文化芸術施策について問うたんです。その点については、明確な答弁を再度お願いしたいと思います。
以上です。
〈区長答弁〉
大串議員の再質問に答えます。
地域コミュニティに関する点についてお答えをいたします。
ケネディーが就任したときに何を言ったかといいますと、これから国家に何を期待するかというのではなくて、それぞれの国民が地域で何を行うかという社会にならなきゃいけないというふうに申し上げております。まさに、私は地域コミュニティとはそういう位置づけだろうと思います。その中で、町会というのは自主的につくっておりますから、今の規模がいいかどうかということは、それぞれの町会がご判断することだろうと思います。そして、確かにあの規模でいいかどうかというご議論はあろうかと。ただ、もう1方、私は、この地域コミュニティの概念で申し上げたのは、身近な地域でのまとまりということも、地域性とか空間性というところにあります。そういう意味では、私は、出張所単位というのは、地域コミュニティという位置づけとしては、やや、私の考えているイメージと大串さんとでは基本的に違います。それだけは申し上げておきたいと思います。
それから、文化については、私の持論を申しますと、やはり、例えば歴史上有名なナポレオン、ありますけど、ベートーベンは毎日毎日どこかで聞かれております。そういう位置づけが文化にあります。そして、都市のいろんな形成のときに、公共投資で地域に光を当てるのではなくて、文化だとか学習という下部構造から地域を、光を当てるという意味では文化というのは大変重要だということで条例をつくり、そして進めてきたところでございます。具体的なことは所管部長が答えると思いますが、そういう思いで条例なりをつくってきたわけでございます。以上です。
〈区民生活部長答弁〉
大串議員の再質問にお答えいたします。
まず、コミュニティと現状にかかわります、基礎的な調査を実施せよというふうなご質問でございますが、区におきましては、これまでマンション実態調査、また連合町会におけるマンション住民へのアンケート調査等、やってまいりました。議員のご質問につきましても、趣旨は十分わかります。区といたしましても、実態調査の必要なことは当然のことであり、今後、必要に応じて適切な調査を行ってまいりたいと考えます。
それから、文化についてでございますが、検証したかというふうなことでございますが、当然、年度間の事業でございます。文化事業につきましては、毎年きちんと検証をし、これは前に作成をいたしました文化芸術プランに基づく計画がきちんとなされているわけで、その中を実際にできているかどうか検証することによって、その事業を確認する。それから、平成21年度には、文化芸術プランの改定も控えております。その中で、改めて検証することとなると思います。そして、その過程の中で、文化芸術協会の皆様にもご意見をいただきながら進めていくことは当然のことでございます。
それから、3番目に、区の文化行政に取り組む姿勢についてでございますけれども、我々のこの文化芸術条例のまず最重点的な姿勢というのは、区民主体の文化行政を進める、そのためにも文化芸術基本条例をつくり、その具現化されたものが文化芸術協会であると考えております。そういうふうな中でも、我々としては、区民の主体性というふうなものを最重点に考えていくことに決意は変わりませんし、全庁を挙げてこの文化行政に取り組み、その総合窓口として文化スポーツ課があるものと認識しております。
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